クロスボーダーラグビー2024レポート(東京SG 7-43 ブルーズ)
これぞ世界最高峰の力。そう実感する試合となったのは、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)がスーパーラグビー・パシフィックの雄・ブルーズと対戦した「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」だ。
東京SGはブルーズに7トライを許し、7対43の大敗……。NTTジャパンラグビー リーグワンにおいて、敗れることはあっても、ここまでの大差を東京SGが喫することはまずない。「さすがはスーパーラグビー」、という見方もできるが、東京SG視点で見れば何がうまくいかなかったのか?
「自分たちが準備してきたのは、素早い球出しをすること。相手を動かしながらビッグサイズの選手たちを疲れさせたかった。ただ、相手のプレッシャーを常に感じてしまい、サポートのプレーの質もなかなかうまくいかず、いい球出しができなかった。そこが一番うまくいかなかった部分です」
冷静に敗因を分析したのは後半6分から出場した箸本龍雅。彼にとってこの一戦は、最高峰の相手との腕試し、という側面以外にも「再会」と「再確認」という二つの意味も持っていた。
「再会」──。箸本は2年前のオフ、ニュージーランドへの武者修行を敢行。その場所はブルーズの本拠地、オークランドだった。それだけに、今回の対戦では懐かしい面々と再会を果たすことができたという。
「ブルーズの半分以上が知り合いでした。とくに仲が良かったのはリザーブからの出場だったソアネ・ヴィケナ。ひさしぶりに会えてうれしかったです。自分にとっては思い出に残る試合になりましたし、成長した姿を少しは見せることができたと思います」
そして、世界最高峰と戦ったからこそ、課題も「再確認」できた。
「やっぱりブレイクダウン(タックル後のボールの奪い合い)での圧力は日本チームとの違いを最も感じる部分です。自分たちの課題が浮き彫りになりましたし、それでも、試合終盤には自分たちも勢いのあるアタックもできるように対応できたので、いい勉強になった試合でした」
チームとしてだけでなく個人としても、日本代表を目指す上で課題はある。
「ワークレートはチーム内でももう評価されている部分なので、あとはボールキャリーの激しさと、どれだけ自分から前に出ることができるか。本来の強みをもっと出していけたらと思っています」
紛れもなく完敗。それでも、そこから何を学ぶか。次の試合はすぐにやってくる。リーグワンでの次節は埼玉パナソニックワイルドナイツとの大一番だ。
(オグマナオト)
──サム・ケイン選手やチェスリン・コルビ選手がメンバー外だったことも含め、今日のメンバー選考の狙いはどういったものだったのでしょうか?
「サム・ケインとチェスリン・コルビはラグビーワールドカップ2023フランス大会直後に合流してくれたこともあり、2月のこのタイミングで一度帰国することはもともと決まっていました。
傍から見たらメンバーを落としていると思われるかもしれませんが、ここまで6試合をやってきて、実際にけが人がいますし、この時期にしっかりとコンディショニングを直さなければいけない選手もいます。彼ら以外でのベストメンバーを組みました」
──公式戦の間の難しい状況ではあったと思いますが、今日の試合の評価をお願いします。実際にスーパーラグビー・パシフィックのチームと対峙して感じた違いはなんでしょうか?
「公式戦ではありませんが、われわれとしてはサンゴリアスの公式戦、キャップ対象試合として考えていました。
日本を代表する4つのクラブがスーパーラグビー・パシフィックのチームと戦うことは、チームにとっても日本のラグビーにとっても非常に重要なチャンスだと思っています。われわれはこの試合に対して準備したつもりでしたが、結果として、そういった日本ラグビーのレベルを示せなかったことは非常に残念です。今日の結果・内容をしっかりと受け止め、今後のリーグワンで、われわれが変わるきっかけになったと思えるようにしたいです」
──「日本ラグビーのレベルを示せなかった」という点について、どういう理由でできなかったのか、あるいはブルーズとの差を感じた部分はなんでしょうか?
「リーグワンは年々、強度の高い、競争力の高いリーグになっていると思います。そこで揉まれて日本のラグビーもどんどんレベルアップしている。そういったところをしっかり見せたいと思っていたんですが、そこで相手にドミネートされてしまいました。
もちろん、個人個人の強さ、スキルというのも素晴らしかったですが、まずはやっぱり、そういうフィジカルを、日本のチームらしくどうドミネートするかという部分にフォーカスをしました。ただ、今日はそれがうまく出せなかった点が一番悔しいところです」
──実際に対戦してみて、肌で感じたスーパーラグビー・パシフィックのチームの印象を教えてください。
「試合までの準備では、われわれとしても非常にエキサイティングなチャンスだという話をしていました。東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)としてのラグビー、そして日本を代表するチームとしてのラグビーを世界の舞台として披露できるいいチャンスだと思っていました。結果に関しては非常に残念ですが、今後の糧として学んでいける課題がたくさん見えたと思っています。
ブルーズは非常にいいアタックをしてくるチームで、ルーズボールの反応や、カウンターアタック、そういった面でわれわれがプレッシャーを受けてしまった部分が多かったと思います。今後はディフェンスを精査していきたいですし、これをいいチャレンジとして捉えて、今後もまたクロスボーダーラグビーがあった際には、いい結果につなげられるようにしていきたいと思います」
──試合序盤で相手に支配された時間帯、なかなか修正できなかった要因はなんでしょうか。
「難しいタフな質問です。もちろんブルーズさんもいいチームです。15人とも全員非常に素晴らしいプレーヤーがそろってはいますが、われわれとしてもチーム内で相手の能力、スキルにマッチできるプレーヤーは必ずそろっていると思っています。ただ、最初の20分間それができなかったというのはあると思います。
前半の真ん中に差し掛かった時間帯で、自らボールを持ってアタックするチャンスをつかめたのは今後の糧にもなるポジティブなところだと思っています。ただ、それを80分間続けられなかったことが本日の結果につながりました。全体的に言えば、非常に悪いパフォーマンスだったと思っています」
──今日の試合はどんなゲームプランで臨んだのか。そして、実際のパフォーマンスをどう評価していますか?
「スーパーラグビー・パシフィック開幕に向け、ここまで7週間ほど練習をしてきて、今日はそれを実行するという形でした。ここまではチーム内での練習試合ばかりでしたが、今回初めて違う相手とできるということで、自分たちの仕上がり具合を確認することができました。
私たちのベストなラグビーは前に進んでいる状態です。今日の前半はそれがうまくいき、私たちに流れが向いていました。ただ、前半20分過ぎからは正確性を欠いたり、ペナルティを取られたりして、東京SGもいいチームですので、そのスキを突かれてトライを奪われました。
私たちもこれからたくさん改善していかなければならないと思っています。それでも、今シーズン初めての試合ということで、とても良い経験ができたと思います。これを積み重ねていきたいです」
──試合序盤でかなり差が出たように見えました。実際に体をぶつけてみて、グラウンドではどのように感じたでしょうか?
「私たちのチームは前に進むことを重要視しています。そのためにも、コンタクトに勝っていかないといけない。その部分は前半最初の20分はできていたと思います。
ただ、それ以降の時間帯では東京SGもスクラムを押してくるなど、フィジカル面でも対応されたことで私たちも小さなペナルティをしてしまいました。まだまだフィジカル面で不足している部分があると思います」
──スーパーラグビー・パシフィックから南アフリカ勢が不在になった状況のいま、このようなクロスボーダーラグビー2024の重要性をどう捉えていますか?
「私はスーパーラグビーで4年目になりますが、こうしたツアーは今回が初めてです。南アフリカ勢がスーパーラグビーからいなくなった状況において、ニュージーランド、オーストラリアとは異なるスタイルの日本ラグビーと試合ができることは貴重な体験です。
また、日本の文化にも触れられること、日本のみなさんに温かく迎えてもらったことも大変うれしく、来週の試合も楽しみです。今後、この大会が発展していくことを願っています」