リーグワン2023-24 シーズン展望[DIVISION 3]

ディビジョン3のチャンピオンへ、準備整う

クリタウォーターガッシュ昭島

昨季のクリタウォーターガッシュ昭島は、チームOBでもあるワイクリフ・パールー ヘッドコーチの掲げる「ランニングラグビー」が徐々に浸透。レギュラーシーズンを5勝7敗の3位で終えて、入替戦に駒を進めた。入替戦では釜石シーウェイブスRFC(現・日本製鉄釜石シーウェイブス)と対戦したが2試合とも勝ち星を得られず、ディビジョン2昇格を逃した。

今季のチームスローガンは『Champion』。D3で1位になり、D2昇格を決めるのが目標だ。チームのストロングポイントは山村亮FWコーチを中心に強化を進めているスクラム。さらに今季から加わった和田裕介ヘッドS&Cコーチのもとで、これまで以上にフィジカルトレーニングを重ね、食事面でも一から見直した。

チームを引っ張るのは、キャプテンとして3年目を迎えるフランカーの石井洋介。バイスキャプテンにはフッカーの栗原良多とスタンドオフ林田拓朗、ピッチ外でのリーダー役となるクラブキャプテンはベテランのロック・中尾光男。4人のリーダー陣を中心にチーム強化を進めていく。

また、昨季まで主力として活躍した外国人選手の多くが退団し、選手補強の方針も大きく転換した。注目はサンウルブズやレスター・タイガース(イングランド)でも活躍した「トンガン・ゴジラ」ことホセア・サウマキ。さらには、元イングランド代表のピアーズ・フランシス、ジンバブエ出身のマイク・ウィリアムズ、ニュージーランド出身のテアレキ・ベン=ニコラスにも期待が集まる。新加入の外国人選手たちがいかに早くチームにフィットするかがシーズン戦い抜くためのカギとなる。

課題を挙げるとすれば、昨季D3のチームの中で最多だったペナルティ数とスクラムの安定だろう。まずはペナルティを減らすこと、そしてスクラムのスタンダードを一定にキープすること。そのうえで、D2昇格のためになんとしてもビジターゲームでの勝利が欲しい。D3のチャンピオンを勝ち取るための戦いがまもなく幕を開ける。

(匂坂俊之/Rugby Cafe)

注目選手 ▶ 濱副慧悟

昨季はディビジョン3の個人スタッツで、ラインブレイク、ゲインメーターの2部門でトップ。2冠に輝いた快速ウイングは、その親しみやすい笑顔でも新たなファンを獲得した。濱副の武器は、強靭な下半身から生み出されるパワーと瞬間のスピードだ。高校時代からのスクワットで徹底的に鍛え抜き、1対1には絶対的な自信を持つ。「自分自身のトライには関心がない。その過程が大事なんです」。今季の目標は2冠に加えて「ディフェンス突破率」でもトップの3冠。目標達成の先にはD2昇格が待っている。

WTB 濱副慧悟

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“サラガーマン”集団は、よりアグレッシブに

清水建設江東ブルーシャークス

ジャパンラグビー リーグワンの初シーズンは、リーグ戦3位、順位決定戦で2位、入替戦ではマツダスカイアクティブズ広島に勝利してディビジョン2へ昇格を果たした。ただディビジョン2での戦いは厳しく、惜しくも1シーズンで降格、今季は再びディビジョン3の舞台で戦うことになった。

降格の悔しさを胸に、7月から新シーズンに向けて始動。今季より仁木啓裕監督が就任し、“1シーズンをとおして戦う覚悟”を確認した。今季のキャプテンを務める白子雄太郎は今季の目標について「もちろんD2昇格」としながらも、「昇格することがゴールではなく、D2でいかに戦えるチームになるか」と、その先にも焦点を当てている。いち早く練習場に到着し、体のメンテナンスを入念に行う白子キャプテンを筆頭に、各リーダーとも連係をとり、チーム全体のベースアップを図っている。

今季はコンタクトの強化に力を入れてきた。また、誰が出ても高いパフォーマンスを発揮するために総合力で戦うことを目標に掲げ、チーム内での競争も激しくなっている。11月にはスポットコーチとしてニュージーランド代表でコーチを務めたグレッグ・フィークを迎え、スクラム・ラインアウトなどをベースに、目から鱗の指導を10日間受けた。

今季のチームスローガンは、「aggressive(アグレッシブ)」。“サラガーマン”として仕事もラグビーも積極的に「アグレッシブ」に行動をしていくこと。それにファンサービス、地域貢献活動を「アグレッシブ」に行い、勇気や感動を提供するチームを目指すという思いが込められている。練習時間を確保するため、練習以外の日に日常の業務を進めることや、朝早くから出社し残業をなくすことで、勤務後の練習開始に間に合うようにするなど、それぞれが両立のための工夫に努めている。また、「日本一ファンと近いラグビーチーム」を掲げ、ホストゲームでは、ベンチ外の選手が売店や体験アクティビティ・キッチンカーなどを担当。試合終了後には選手全員でファン・サポーターのための“花道”をつくって見送る。選手を身近に感じることができる施策を続ける。

今季は新たに、トム・ロウ、リマ・ソポアンガ、サム・チョンキット、ジョシュア・バシャムの4名の外国籍選手が加わった。「D2で戦えるチームになる」。その一心で返り咲きを目指し、新シーズンへ挑む。

(山村燿)

注目選手 ▶ リマ・ソポアンガ

ニュージーランド代表の10番をつけたこともあるリマ・ソポアンガ。2023年のラグビーワールドカップにはサモア代表として出場。今季キャプテンの白子雄太郎は「彼が司令塔としてどうゲームをコントロールするか注目してほしい」と期待を口にしている。正確なキックとフィジカルの強さが特徴だ。来日後、日本の文化や食事について発信し反響を集めている。

SO リマ・ソポアンガ

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継続する「個」の強化。一つでも多く勝利を

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズ(中国RR)の今季スローガンは「Grow Up~強個~」。昨季と変えず、チームの成長のために、継続して「個」の強化にフォーカスする。

ジャパンラグビー リーグワン3年目に向けて、個の強化は少しずつ身を結んでいる。就任2年目の岩戸博和ヘッドコーチは、「昨季に比べると、自分で考えて行動する選手が増えている」と明かす。指揮官が重視するコミュニケーションが選手間で活発になり、夏にケガ人が続出したときには呉山聖道などの若手が新たにチームを引っ張る姿勢を見せて苦しい時期を乗り越えた。

リーグワンの舞台で戦うことで、個々の自覚が高まっている。岩戸ヘッドコーチは「まだまだ足りない部分は選手個人が分かっていると思うし、リーグワン3年目で選手たちも何をしないといけないか認識できていると思う」とチームの変化を実感している。

昨季限りでベテラン5選手が引退したが、4月にロックの鷲谷太希、スタンドオフの宮嵜隼人、ウイングの北山絢大、センターの東将吾の新人4選手が加入した。バックス陣は即戦力として期待される新人3名が入ったことで競争が激化。フォワード陣は昨季限りで現役を引退した守谷徹郎と坪井秀龍がコーチに転身し、課題のセットプレー強化に熱が入る。

今季も元サンウルブズ主将のエドワード・カークが唯一のプロ&外国籍選手。日本人の社員選手が中心で戦力も限られているが、岩戸ヘッドコーチは「人数が少ないからこそ全員で戦っていく」とチーム一丸で昨季より一つでも多い勝利を目指す。

広島で3年目を迎えたカークは、「自分の経験を少しでも共有することで、選手たちをできるだけプロフェッショナルにしたい」と仲間の成長のために自身が積み上げてきたことを惜しげもなく伝えていく。その根底にあるのはラグビーへの愛だ。「みんながラグビーを楽しんで、ラグビーを愛して、ラグビーを続けていくこと。それが僕の目標」。

新シーズンがいよいよ開幕する。成長への意思を貫く中国RRの戦いを、リーグワンで繰り広げられる熱いラグビーを、楽しもう。

(湊昂大)

注目選手 ▶ 藤井健太郎

セブンズ日本代表の経験を持つ藤井健太郎は、昨季1年目ながら全12試合フル出場を達成。「シーズンをとおしてパフォーマンスを落とさず戦えたのが一番の収穫」と胸を張る。攻守に堅実なプレーを心がけるウイングは昨季の課題にアタック面を挙げ、新シーズンは「トライやラインブレイクの数を増やしたい」と意気込む。「昨季より順位を上げる」というチームの目標には、試合に出続ける藤井のさらなる躍進が欠かせない。

WTB 藤井健太郎

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エキサイティングなチャレンジを。独自の一体感で挑む新シーズン

日野レッドドルフィンズ

苑田右二新ヘッドコーチが就任し、今季の日野レッドドルフィンズ(日野RD)はチームの形・戦術もドラスティックに変化する。

2023年のラグビーワールドカップをトンガ代表として戦ったオーガスティン・プル、オーストラリア代表32キャップを持つローリー・アーノルドといった主力外国籍選手が残留、今季もその力を発揮することが期待される。一方で、フォワードを中心とした力勝負で挑んだ昨季のスタイルからは一転、常にボールも選手も動き、早いテンポでの展開が何度も繰り広げられる変幻自在な「見ているファンをワクワクさせるようなラグビー」(苑田ヘッドコーチ)への転換を果たし、今季のスローガン「EXCITING NEW CHALLENGE」のとおりにエキサイティングな試合を見せ続けてスタンドのファンを魅了する腹積もりだ。

現役時代はスクラムハーフとして高校・大学・社会人とすべてのカテゴリーで全国制覇を経験、神戸製鋼(現・コベルコ神戸スティーラーズ)でもヘッドコーチを務めた新指揮官の辣腕には大いに期待が懸かる。

新キャプテンに指名されたのは、笠原雄太。2015年にヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)から移籍して以来、中心選手であり精神的支柱でもあった笠原が「献身と規律」を浸透させることで日野RDはより強固なユニットへと進化を遂げている。新シーズンに向けて大卒の新人選手が多く加入したのも今季の特色だ。「注目選手は今季からレッドドルフィンズに加入した選手たち。特に新卒の選手たちの若さあふれるプレーに期待しています!」とキャプテンも若手選手の急成長を肌で感じている様子だ。

「選手・スタッフの人数が少なくなったので、本当の意味でチーム力が試される。少人数になったことをチャンスと捉えて、レッドドルフィンズ独自の一体感を強みに新しいシーズンに挑んでいきます」(笠原)。強く・愛され・街の誇りとなるようなチームへ。新生レッドドルフィンズの挑戦が、いま、始まる。

(関谷智紀)

注目選手 ▶ オーガスティン・プル

チームが目指す「エキサイティングラグビー」には欠くことのできないスクラムハーフ。2023年のラグビーワールドカップではトンガ代表の中心選手としてプール戦4試合中3試合に先発出場。瞬時の判断で的確に味方へとパスを送る視野の広いプレースタイルが魅力だ。「仲間やクラブのため常にベストな自分を出せるように。またオン・オフかかわらず、できる限り良き人であることが目標。レッドドルフィンズで良いシーズンをプレーして、必ずディビジョン2に昇格します」。

SH オーガスティン・プル

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一人ひとりが自覚を強める今季、「昨季からは大きく変わる」

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島(SA広島)に関わる人々にとって、昨季は本当に悔しいシーズンだった。ディビジョン2との入替戦にも参加できないディビジョン3・4位の結果から巻き返していくため、今季に向けた準備には一層力がこもっている。

引き続きキャプテンを務める﨑口銀二朗は、チームビルディングに手ごたえを感じている。

「今季は全体的に選手が主体性をもっていて、取り組む姿勢はすごく良くなった。みんなで良い形でチームを作っていけている。各セクションのリーダーが引っ張っていってくれているので、自分はチームがちょっと緩んでしまったときとか、ここは集中力を高めたいというときに声を掛けていきたい」

選手一人ひとりが自覚を強めている理由は他にもある。会社からのサポートにより練習環境が大きく向上したのだ。これまでウエイトトレーニングは別施設で行っていたが、今年からグラウンドのある場所でその練習を行えるように。﨑口は「練習量も増えてラグビーに向き合う時間も増えてきている」と効果を感じている。

だからこそ、今季は結果を出していかなければならない。福冨文明副部長は「より地域社会に貢献するためにラグビー部が先陣を切っていけということだと理解していますし、そのためにもチームが強くないといけない。強くなければ地域に出ていったところで歓迎もされませんので、しっかりと強くなって車以外の会社の魅力を地域社会に訴えていくことがわれわれの役割だと思っています」と襟を正している。

今季の目標は、ディビジョン3で優勝してディビジョン2に昇格すること。『仕事100% ラグビー120%』がモットーのSA広島は現在、新人の選手がそれぞれの存在感を出して活力をもたらしている。「チームとしてもだいぶ若くなる。昨季からは大きく変わる」(﨑口)。

だからこそ、初戦が大事だ。﨑口は「昨季は開幕戦で負けたことをすごく引きずってしまった。まず開幕戦に良い形で勝って勢いに乗っていきたい」と見据えている。

(寺田弘幸)

注目選手 ▶ 中野光基

バイスキャプテンを務める23歳は、フッカーのポジションでいつも勝気にプレーする。「スピードで上回っていきたいですけど、パワーでも負けたくない」と立ち向かっていく勇敢なプレーヤーで、性格的にも頼もしい。「厳しいことも言うし、イヤなこともしっかりと体を張ってできるタイプ。良いリーダーだなと思う」と﨑口銀二朗キャプテン。若手が多くなった今季のチームを先頭に立って引っ張っていく。

HO 中野光基

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Teams

DIVISION 1

  • クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
  • コベルコ神戸スティーラーズ
  • 埼玉パナソニックワイルドナイツ
  • 静岡ブルーレヴズ
  • 東京サントリーサンゴリアス
  • 東芝ブレイブルーパス東京
  • トヨタヴェルブリッツ
  • 花園近鉄ライナーズ
  • 三重ホンダヒート
  • 三菱重工相模原ダイナボアーズ
  • 横浜キヤノンイーグルス
  • リコーブラックラムズ東京

DIVISION 2

  • 浦安D-Rocks
  • NECグリーンロケッツ東葛
  • 九州電力キューデンヴォルテクス
  • 豊田自動織機シャトルズ愛知
  • 日本製鉄釜石シーウェイブスRFC
  • レッドハリケーンズ大阪

DIVISION 3

  • クリタウォーターガッシュ昭島
  • 清水建設江東ブルーシャークス
  • 中国電力レッドレグリオンズ
  • 日野レッドドルフィンズ
  • マツダスカイアクティブズ広島
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