NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスB
2023年12月17日(日)12:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ
花園近鉄ライナーズ(D1カンファレンスB)
難敵相手にも気後れなし。
『進撃のワクァ』が、埼玉WK撃破の担い手となる
花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)は、三菱重工相模原ダイナボアーズとの開幕戦で終了間際まで2点のリードを保ちながら、ペナルティゴールにより29対30で痛恨の逆転負けを喫した。
「ゲームプラン的には勝てた。ただ、最後の厳しいところでペナルティをしてしまったのはまだまだなんでしょうね」と向井昭吾ヘッドコーチは手ごたえと悔しさを隠さなかったが、今季初のホストゲームとなる埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)戦を、指揮官は「自分たちの立ち位置が見えてくる試金石」と位置付ける。
ラグビーワールドカップ2023フランス大会に出場した日本代表を数多く擁する埼玉WKはディビジョン1屈指のタレント集団だが、そんな難敵との対戦を心待ちにする日本代表が花園Lにもいる。フィジー出身のサナイラ・ワクァである。
ラグビーワールドカップ直前のイタリア遠征にはバックアップメンバーとして帯同しながらもふくらはぎを痛めて離脱。檜舞台に立つことはできなかった。それでも、「もうラグビーワールドカップは終わってしまったので、いまはリーグワンに集中するだけです」とすでに気持ちを切り替えている。
昇格1年目となる昨季のディビジョン1では負傷で出遅れ、リーグ戦はシーズン終盤の3試合に出場したのみ。埼玉WK戦も出場していない。しかし、難敵相手にまったく気後れはしていない。「どこからでも得点できるチームですね」と日本代表の僚友たちにリスペクトを払いながらも「自分が試合に出るときは、相手に特別な選手がいるという意識はしません。同じ人間だと思っていますから」と言い切った。
身長202cm、体重120kgの体格からは想像もつかない推進力と長い手を生かした多彩なオフロードパスを持つワクァは、向井ヘッドコーチにとっても得難い存在だ。
「僕がラグビーを組み立てる上で大事にしているのは相手がイヤなことをどれだけ多く出せるかどうか。ワクァは相手にしてみたらイヤでしょうね」(向井ヘッドコーチ)
昨季は敵地で6対41の大敗を喫した埼玉WKとの試合に対して、ワクァは「自分にはアタックとディフェンスでそれぞれ役割があるので、それを遂行するだけです」と決意表明した。
厳しい戦いになるのは間違いないが、昨季とは違うチームの進化を見せるべき一戦。『進撃のワクァ』の異名を持つ規格外の男が、花園Lの希望になる。
(下薗昌記)
埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1カンファレンスB)
二度泣いたからこそ込めるキックへの思い。
自身、仲間、先輩を思い、松田力也は右足を振る
埼玉パナソニックワイルドナイツは12月17日のビジターゲームで花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)と対戦する。開幕戦で横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)に怒涛の8トライ、53得点を奪って快勝したチームは勢いに乗って開幕連勝を目指す。
日本代表・松田力也のプレーには自信がみなぎっていた。横浜E戦では前半3分にペナルティゴールを決めて今季のオープニングゴールを飾ると、その後もチームの心臓部として攻守にクオリティーの高いプレーを披露。1本のペナルティゴールと4本のコンバージョンキックを決めて11点を稼ぎ出した。
2023年は、二度泣いた。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 プレーオフトーナメント決勝のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦ではキックが不安定となり15対17で惜敗。リーグ連覇を果たすことができなかった。試合後、ピッチサイドに立った松田は、涙を拭いながら優勝セレモニーを見守った。
「決勝の敗戦は自分の責任。控え選手を含めて多くのチームメートが支えてくれた中で力を出せなかったことが悔しかった」
決勝での敗戦を糧にして臨んだラグビーワールドカップ2023フランス大会では、背番号10を託されて出色のパフォーマンスを魅せた。プール戦4試合で大会ランク4位の46得点をマーク。最終戦・アルゼンチン戦でも合わせて4本のコンバージョンキックとペナルティゴールをすべて成功させるなど予選20本中19本のキックを決めた。しかし、チームは準々決勝進出を果たせなかった。松田は「勝てるゲームで勝ち切れなかったことが悔しい」と涙腺を緩ませた。
リーグワン開幕直前には、偉大な先輩・堀江翔太が今季限りでの現役引退を発表した。堀江は引退後にトレーナーとしての再出発を図るというが、左膝前十字靭帯断裂の大けがから復帰した松田の存在も影響したという。
堀江は「一緒にリハビリをして、多少のアドバイスをしていた中で力也がワールドカップで結果を残してくれたことは本当にうれしかった」と明かす。
松田は「ラグビーワールドカップでも僕のキックを見てくれて、いろいろアドバイスをもらった。開幕戦でも『良い判断だった』と褒めてもらえてうれしかった。滅多に褒めてもらえないので(苦笑)。開幕戦でちょっとでしたが一緒にプレーして、やっぱりさすがだなと思った。今季が終わるころには引退が撤回されるのではないかと、僕だけはまだ信じています。堀江選手と一緒にプレーする試合が一つひとつ減ってしまうのも寂しいですが、盗めるところは盗んでいきたい」と言葉に感謝をにじませた。
松田は、今節の花園L戦も先発出場が発表された。背番号10は、自身、堀江、チームメートへの思いをキックに込める。
(伊藤寿学)