コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスB)

「しっかり前に出続ける」。闘志こめたプレーで、マルセル・クッツェーがスタジアムに熱気をもたらす

前節は敵地でクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れ、前々節の黒星に続いて悔しい連敗となったコベルコ神戸スティーラーズ。トヨタヴェルブリッツを神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で迎撃する今節、上位勢に食らいつくためにも勝利は譲れない。

開幕から5戦2勝3敗の7位。苦戦を強いられているコベルコ神戸スティーラーズだが、その5戦すべてに先発フル出場するマルセル・クッツェーは、敗れたものの前節の内容にチームとしての前進を感じ取っている。

「ディフェンスで気が緩んでしまう瞬間が多かったり、敵陣22m内でスコアできるチャンスを生かせなかったり、そして、規律のところ。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦ではその3つの部分で締め直すことができました。もう一個レベルを上げて質の高い試合ができれば勝てると信じています」

確かな手ごたえをつかむマルセル・クッツェーはいま、チーム内で「後退をしてはいけない。しっかり前に出続けよう」との言葉が挙がっていると紹介。「フォワードはコベルコ神戸スティーラーズのやり方でフィジカリティーを制したい。そして、バックスにいい球を渡し、魔法を起こしてもらいたい」とチームが育んでいる強みを今節にぶつけたいと意気込む。

そのマルセル・クッツェーは、南アフリカ代表で31キャップを数える、ジャパンラグビー リーグワンに参戦する世界的プレーヤーの一人だ。開幕以降、同国出身選手は目覚ましい活躍を見せ、今節のトヨタヴェルブリッツにも要警戒の選手がいる。日本を舞台に母国のプレーヤーとしのぎを削る心境とは。

「知れた顔とプレーすることはうれしいこと。それが大陸をまたいで、別の地で、相手チームで、となると気持ちも高まります。もちろん、『お前ら、本当に友達?』っていうくらいやり合うのが特徴かもしれないですけど、それはお互いに仕事をしているだけ。試合が終わって外に出たら『よくあんなことしたな俺ら! ハハハ!』と笑いながら話してますよ」

現在、日本には厳しい寒波が襲来中。「こっちの1℃に対してむこうは40℃(笑)」と、神戸と南アフリカの気温差に触れつつ、「寒いからといってラグビーの楽しい部分が失われるわけではない」と一蹴する豪放磊落な31歳。チームメートと体現する闘志をこめたプレーで、ホストスタジアムを訪れたファンに最高の熱気をもたらすことになりそうだ。

(小野慶太)

南アフリカ代表31キャップ、コベルコ神戸スティーラーズのマルセル・クッツェー選手

トヨタヴェルブリッツ(D1 カンファレンスA)

「絶対にワールドカップのメンバーに入りたい」。髙橋汰地はチームを浮上させ、自身の夢も叶える

開幕戦勝利の後は4連敗と、なかなか苦境から抜け出せないトヨタヴェルブリッツ。前節は大敗を喫してしまったが、悲観ばかりしていても仕方ない。指揮官が交代し、思いどおりにいかないことは、スポーツの世界ではよくあること。そしてその困難を乗り越えれば、連勝街道に乗ることもよくあること。いまは自分たちを信じてやっていくだけだ。

今節注目したいのはウイングの髙橋汰地。前節は孤軍奮闘し、チーム今季初のハットトリックを達成した快速ウイングである。

「個人の状態としては良いほうだと思います。ただ、自分がもっと良い状態でボールをもらうためにどうするのか。もっとコミュニケーションを取ったり、立ち位置を工夫したりしていきたいです」(髙橋)

各国の代表選手もそろうトヨタヴェルブリッツ。特に南アフリカ代表でフルバックのウィリー・ルルーは髙橋の近くでプレーすることが多い。そこから出てくるファンタスティックなパスをいかにトライにつなげられるか、それが髙橋に課せられる使命であり、チームを上昇に転じさせるカギになる。

そして、髙橋は今季を勝負の年だと位置づけている。それはもちろんワールドカップイヤーだから。昨年7月に行われたフランス代表戦で日本代表初キャップを記録した。しかしその後、負傷の影響で、欧州遠征には参加できなかった。

「日本代表という高いレベルの環境でラグビーをすることで自分のプレーの幅も広がりました。絶対にワールドカップの最終メンバーに入りたいですし、いまはそのボーダーラインのギリギリちょい下くらいの印象なので、リーグワンで活躍する他のチームのウイングの選手には負けられない気持ちでプレーしています」(髙橋)

夢だったラグビー選手になり、日本代表にも選ばれたことで、ワールドカップで活躍するという夢の幅も広がった。ただチームが低迷を続けてしまえばその新しい夢も遠ざかる。今節対戦するコベルコ神戸スティーラーズは髙橋の父、晃仁さんがプレーをしていたチームという縁もある。チームが浮上し、自身がより夢に近づくきっかけは、この試合にあるかもしれない。

「このままじゃダメだという意識はみんなもっています。仲間を信じてやっていくだけです」

真正面を見て力強くそう宣言した髙橋。チームを勢い付けるプレーに期待したい。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツの髙橋汰地選手。「絶対にワールドカップの最終メンバーに入りたいですし──」


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