花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)

注入されたカンフル剤。「喉から手が出るほど欲しい」1勝をつかむために

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1の全12チーム中、今季で唯一勝利を手にしていない花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が2月5日、東大阪市花園ラグビー場で静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)を迎え撃つ。前節で待望の今季初勝利を手にした静岡BRは連勝で波に乗りたい一戦だが、花園Lにとっても「1勝が喉から手が出るほど欲しい」(野中翔平)立ち位置でこの一戦に挑む。

6連敗中に加えて、失点数もリーグワーストとなる計356。苦境を打破すべく、クラブも大一番に向けてテコ入れを施した。

2月3日、寒空の下で行われた練習に姿を見せたのは、期間限定で招へいされたメルボルン・レベルズGMのニック・スタイルズ氏とコーチのポム・シモナ氏の二人。とりわけにニック・スタイルズ氏は、2018年から3シーズン、FWコーチとして花園Lの指導歴をもつ。

今季は、ラインアウトモールから序盤に失点を重ね、苦戦を強いられてきた。静岡ブルーレヴズに対しても、苦い思い出がある。

昨年12月4日のプレシーズンマッチで対戦した際、日野剛志にラインアウトモールから序盤だけで三つのトライを献上。21対71で大敗を喫しているだけに、同じミスは禁物だ。

もちろん、水間良武ヘッドコーチも「相手の強みがスクラムとラインアウトモールなのは従来からのスタイル。そこを引き出させないようにしたい」と話している。今週の練習ではニック・スタイルズ氏とポム・シモナ氏のアドバイスも生かしながら、課題の克服に取り組んだ。

前節、戦線復帰したキャプテンの野中も「僕たちは決して大きいチームではないので、一つの接点に二人をかけたり、すぐにまた起き上がって、ピッチに立っている人数を増やしたい」と気合十分。

低迷する順位とは対照的に、ホストゲームの観客数はリーグ随一となっている花園近鉄ライナーズ。選手たちも「パッセンジャー」(ファンの愛称)に初勝利を送りたい気持ちでいっぱいだ。

「ファンを愛していますし、サポートには感謝しています。彼らに応援してもらえるようなパフォーマンスを試合で出さないといけないですね」と前節、トライを決めたウィル・ゲニアが言えば、野中も「勝ち負けにかかわらず、(スタジアムから)離れていかない方たちに勝利を届けたいという気持ちがチームで高まっています」と力を込める。

「カンフル剤」の効果なるか──。その答えが静岡BR相手に問われることになる。

(下薗昌記)

メルボルン・レベルズから招かれたニック・スタイルズさん(写真右)とポム・シモナさん
ホストゲームの観客数はリーグ随一。「パッセンジャー」(ファンの愛称)に初勝利を



静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)

ラグビーにおける“9番”の重要性。世界的なチームで戦ってきたブリン・ホールによるゲーム操縦

前節で待望の今季初勝利を挙げた静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)。今節のカンファレンス交流戦では、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)のホストスタジアムである東大阪市花園ラグビー場に乗り込み、連勝を目指す。

チームとしては、勝てなかった時期でも内容には好感触があり、その中で前節の勝利を受けて「自信を取り戻せたことは一つ大きい」と堀川隆延ヘッドコーチは言う。

好感触の要素の一つとして、前節の勝利後に堀川HCが口にしたのが、「(スクラムハーフの)ブリン・ホールが持っているゲームコントロール力が、チームにフィットしてきた」ということ。そのスクラムハーフのゲームコントロールとは何か。ヘッドコーチとブリン・ホール本人に聞いた。

まず、堀川ヘッドコーチは次のように解説する。

「9番のゲームコントロールというのは、大きくは二つ。一つはキックによるコントロールです。ラグビーは陣取りゲームで、いかにエリアをとっていくか。その中で、スクラムやラインアウトからその場で蹴れる9番のキック技術というのは、いまのラグビーにおいてすごく重要です」

「長いキックを蹴る場合には、スペースを突いてエリアを取っていくキックになるし、コンテストボール(味方が追いついて競り合える短くて高いキック)を蹴ればボールを再獲得できる可能性もある。そこで再獲得できなくても、相手のフォワードを下げさせるというのは大事な要素になります。それによって相手の疲労度を高めるという駆け引きもあるので。彼(ブリン・ホール)はキックの精度も高いですし、どんなキックを選択するかという状況判断も見どころになると思います」

二つめの要素も、ブリン・ホールの真骨頂が表われるところだ。

「アタックする際に、右に行くのか、左に行くのか、またはキックするのか。(9番は)一番ボールタッチが多いポジションなので、彼がどう正しい方向にボールを導いていくというところです。相手の守備のどこが空いているのか、誰が疲れているのか、そういうさまざまな要素を、俯瞰的な目線からしっかり見えていることも彼の持ち味です」

ブリン・ホール本人は、自身のゲームコントロール力について次のように語る。

「ラグビーの試合ではいろいろな状況が表れます。その中で何をしていくかということをしっかり把握して、チームにそれを伝えて実行していくこと。自分は年齢も重ねてラグビーの経験も長くなる中で、そういった能力を培ってきたと思います」

堀川ヘッドコーチは、そんな彼の働きぶりに全幅の信頼を寄せている。

「世界的な常勝集団のクルセイダーズで100キャップ以上持っている彼の経験値というのは、もっともっとチームにいろんな影響を及ぼしてくれると思います。彼自身もそのつもりで日本に来ているし、日本の文化や習慣も謙虚に吸収しながら、惜しみなくそういう仕事を続けてくれています。本当に人格者ですし、素晴らしい選手ですよ」

スクラムハーフは頭脳も非常に大事になるポジション。ブリン・ホールが局面でどんな判断をして、どんなプレーを選択していくのか。そこに注目しながら静岡BRの試合を観ると、よりラグビーを楽しめるだろう。

(前島芳雄)

クルセイダーズ等でキャリアを築いてきたスクラムハーフのブリン・ホール選手


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