トヨタヴェルブリッツ(D1カンファレンスA)

豊田スタジアム今季最終戦。豊田にゆかりのあるヴィリアメ・ツイドラキは首位撃破を狙う

トヨタヴェルブリッツのヴィリアメ・ツイドラキ選手。第6節では兄のアシストからリーグワン初トライ。「あれは夢かなってずっと思っています。リーグワンで最初のトライが兄からのパスだったなんて」

NTTジャパンラグビー リーグワン ディビジョン1も、レギュラーシーズンの残りは4試合。トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)が本拠地の豊田スタジアムで行うホストゲームは、今節が今季最後になる。

そこで注目したいのは、地元に最もゆかりのある選手ヴィリアメ・ツイドラキだ。父はトヨタ初の外国籍選手として1999年の社会人日本一に貢献したパティリアイ・ツイドラキさん。現在は兄のバティリアイ・ツイドラキと一緒にプレーしている兄弟選手だが、ヴィリアメ・ツイドラキは豊田で生まれ、5歳までこの町で過ごした。

「5歳だったからほとんど記憶はないですね。でも料理の味が頭に残っていました。日本に帰ってきて『これ、食べたことある』って。その料理は、すき焼きと焼きそばです」(ヴィリアメ・ツイドラキ)

親子でフィジーに帰ったあと、7歳のときにラグビーを始めたヴィリアメ・ツイドラキ。ラグビー選手になりたいと摂南大学への入学を機に日本に帰ってきた。しかし、2年生のときに強豪大学に大差で敗れ、挫折したこともあったという。

「毎週、毎週、頑張ってラグビーをやっているのにボロ負けして、やる気がなくなってしまったときが一番辛かった。そのとき、母に電話して『楽しくなくなったらやめてもいい』って言われて、2カ月くらいラグビーを休んだんですよ。でも、それで冷静になって、絶対に選手になりたいって考え直して続けました」(ヴィリアメ・ツイドラキ)

さらに猛練習を重ねたヴィリアメ・ツイドラキ。持ち前のスピードにタックルの力強さが加わると、父がプレーし、兄が所属しているトヨタVから認められ念願のプロ選手となった。そして、今季はルーキーながらもしっかりと出場機会をつかみ、第6節のコベルコ神戸スティーラーズ戦では、兄のアシストからリーグワン初トライを挙げた。

「あれは夢かなってずっと思っています。リーグワンで最初のトライが兄からのパスだったなんて。本当にうれしかったし、たぶん、ずっと忘れないと思います」(ヴィリアメ・ツイドラキ)

挫折から一転、順調なルーキーイヤーを過ごしたとも言えるヴィリアメ・ツイドラキだが、満足はし切れていない。精一杯応援してくれる地元のファンのために、今季最後の豊田スタジアムで、絶対に良いところを見せたい。

「埼玉(パナソニックワイルドナイツ)は強いけど、自分の強みのタックルを決めて、トライを取りたいですね。結果として、もちろん勝ちたいし、サポーターのみなさんがトヨタVの試合をもっと観たいと思うような試合をしたいと思います」(ヴィリアメ・ツイドラキ)

地元のために全緑(全力)で。全勝の首位チームが相手だが臆することはない。

(斎藤孝一)

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスA)

プレーオフ進出決定に王手をかけた埼玉WKの練習に、高校生ラガーマンの熱視線

ここまで12戦全勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が3月25日(土)14時半キックオフのビジターゲームでトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)と対戦する。リーグは残り4試合、ここまで12戦無敗のチームは全勝達成を目指していく。
前節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦は、もはやチームの欠かせないピースとなった長田智希のトライを皮切りにダミアン・デアレンデ、ディラン・ライリー、今季初先発の島根一磨らのトライによって前半だけで49得点。今季最多の61得点を奪って快勝し、プレーオフ進出に王手をかけた。

第4節では、トヨタVのティアーン・ファルコンの質の高いキックに苦しみながらも34対19で勝利した。ただ、それはあくまでも過去のこと。選手たちは、飽くなき姿勢でトライを狙う。

23日、トヨタV戦へ調整を進める埼玉WKの練習グラウンドに、高校生ラガーマンの姿があった。その高校生たちは、25日から埼玉県熊谷市で開催される全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会に出場する、東海大学付属相模高等学校の選手たちだった。

5大会ぶり4回目の同大会出場となる同校は、昨季のNTTジャパンラグビー リーグワン王者で今季も首位を走る埼玉WKのトレーニングを見学。小雨の天候だったが、選手たちにとっては貴重な機会となったようだ。

埼玉WKの練習は実戦メニューから、ポジション練習へ移行。フォワード陣はスクラムの確認に入ったが、東海大学付属相模高等学校のフォワード陣はそれに合わせて見学場所を移動し、プロ選手たちの一挙手一投足を食い入るように見つめていた。

上栗颯太選手(新3年)は、日本代表の稲垣啓太らフロントローの動きから多くを学んだという。上栗選手は「スクラムでも基本を徹底していて良いお手本になりました。自分も稲垣さんのような選手になりたいです」と刺激を受けていた。

工藤寛治キャプテン(新3年)は「バックス陣のキック処理のシーンでの連係やコミュニケーションが参考になりました。また坂手淳史主将のキャプテンシーやチームトークのときの言葉など自分も見習いたいと思いました」と気持ちを昂らせた。

高校生たちの熱視線を受けて練習の強度を高めた埼玉WKの選手たちは、万全の状態で敵地へ向かう。トヨタVで勝利を奪うことができればプレーオフ進出、その先の頂点が見えてくる。

(伊藤寿学)


練習を見学した東海大学付属相模高等学校の上栗選手(左)、工藤キャプテン

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