花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)

勝利へのカギはディフェンス。“関西ダービー”で連敗は許されない。見せろ、クラブとしての意地

花園近鉄ライナーズはシオサイア・フィフィタ選手が待望の復帰。「神戸Sは強い相手ですけど、あれから僕らがどれだけ成長したか楽しみ、早く試合がしたいですね」

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1もいよいよ佳境を迎えている。

14連敗中で最下位の花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)は、2連敗で9位のコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)を東大阪市花園ラグビー場で迎え、”関西ダービー”に挑む。

リーグワンでは最古の歴史を誇る神戸Sと2番目に長い歴史を持つ花園Lの名門対決だが、花園Lにとっては5月に待ち受ける入替戦に向けて弾みをつけるための重要な試合だ。

現在4試合連続で50失点以上を喫している花園Lだが、4月12日に行われた練習にネガティブな雰囲気は一切なかった。

前節、サナイラ・ワクァが今季初出場を飾り、ブランクを感じさせない好プレーを披露。クエイド・クーパーはまだ完全合流を果たしていないが、一部メニューには参加するなど、ピッチ内にいるだけで引き締まった空気感を作り出している。

徐々に戦力が戻ってきた花園Lに今節、4試合ぶりにシオサイア・フィフィタが帰って来る。

3月11日に行われたトヨタヴェルブリッツ戦を最後に、負傷で試合から遠ざかっていたシオサイア・フィフィタ。今節はウイングではなくセンターで出場する。

昨年12月24日のビジターゲームでは神戸Sに36対58で敗れている花園Lだが、当時、シオサイア・フィフィタは戦線離脱中。それだけに「神戸Sは強い相手ですけど、あれから僕らがどれだけ成長したか楽しみ、早く試合がしたいですね」と目を輝かせる。

大量失点での敗戦が続いているが、スクラムに関しては十分に相手と渡り合う場面も多いだけに、やはり課題は序盤の失点癖をなくすことと、タックルミスによる失点を減らすことになるだろう。

前節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦でも好タックルを見せ、敗色濃厚の試合でもキャプテンらしいプレーを見せた野中翔平は今季初勝利に向けた青写真をこう描いている。

「相手を3トライ以内に抑えられたら、僕たちは3トライ以上を取る自信があります。勝利に向けては本当にディフェンスがカギになる」(野中)

今季、ディビジョン1で唯一、勝利のない花園Lが迎える残り2試合はホストゲーム。関西勢対決で意地を見せることができれば、自ずと入替戦に向けても弾みがつく。

(下薗昌記)

コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスB)

一体感の最前線に立つ男が迎える100試合出場の節目。みなぎる自信は仲間との日常から生まれる

久しぶりに1番で先発するコベルコ神戸スティーラーズの山本幸輝選手(写真中央手前)。スクラムでは最前列の左側のポジションが1番(左プロップ)だ

コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の今節は、東大阪市花園ラグビー場を舞台とした花園近鉄ライナーズとの“関西ダービー”。リーグ戦も残すところ2試合となる中、チームとして育んできた一体感を思う存分、ぶつけたい一戦だ。

トップリーグとリーグワン通算100試合出場に王手をかけている山本幸輝が、強い気持ちを口にしている。

「スクラムでしっかり相手をドミネート(圧倒などの意)するところもそうだし、この100試合をとおして、フィールドのところや、タックル、アタックも成長した姿を見てもらえるように頑張りたい」

今季初となる先発メンバー入り。ここまで控えから7試合に出場してきた今節の1番だが、前々節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦のパフォーマンスは爽快だった。リードを許す中でチームは後半26分、スタジアムに一体感をもたらす反撃のトライを挙げた。その起点となったのが、相手を圧倒した山本らを最前線に据えたスクラムだった。

「自分の一番の持ち味はスクラムです。スクラムでチームにエナジーを与えることが自分のできることだと思っています。『自分の仕事が来た』というのがありましたし、『行ける』っていう自信もありました」

山本の自信はどこから来たのか。それは神戸Sで「バックボーン」と呼ばれる出場できていない選手を含めた日常の準備にあった。

「みんなで強度の高いスクラム練習をやっていたことも自信になっていました。試合に出ることができていない選手も『何かやってやろう』と頑張って練習に取り組んでいます。控えメンバーは一番、バックボーンに近い存在で、僕も『何か絶対に残したい』という気持ちがありました。それを見たスターターは絶対に、その場から降りたくないし、頑張ります。チームは良い競争で、良い雰囲気でできています」

多くの難しい時間を過ごしてきた今季の神戸S。それでも、チームは一丸となって練習と試合のサイクルに集中し、誰もが自らと向き合い、チャレンジすることから逃げなかった。育んできたのは紛れもない団結心だ。

「本当に家族のようなチームになれたなって思います」

そう話す32歳のプロップは、100試合出場の節目もいつもと変わらない。選手、コーチ、スタッフ、そして、ファン。すべての想いを背中で受け止め、一体感の最前線に立つ。

(小野慶太)

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