2023.04.07第13節 中国RR vs RH大阪-見どころ

中国電力レッドレグリオンズ(D3)

2カ月越しのリベンジの舞台。
涙を責任感に変え、熱く戦う背中を見せる

中国電力レッドレグリオンズの大木寿之選手。「甥っ子たちがラグビーにハマっていて、本当にかわいいんですよ。それが今季一番の頑張れる源です」

グラウンドをあとにすると、悔し涙が流れた。2月12日のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)とのビジターゲーム。中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)の大木寿之は今季初先発だったが、意気込んでいたスクラムで相手の圧力に屈し、交代後にベンチで泣いた。

「あの試合はひさびさの先発だったし、セットピースを期待されて出してもらったけど、そこでRH大阪にやられてしまった。本当に悔しかった。ラグビー人生で初めてですね、ベンチに戻って涙が出たのは」

そう話していると、先輩の河口駿と塚本奨平が近づいてきた。河口がすかさず「涙が出たというか、声を出して泣いていたよ」と満面の笑みでつっこむ。苦笑いの後輩は、「ベンチで泣いていたら、たまたまイヤな先輩がいました(笑)」と言い返したが、先輩からのイジりにうれしそうだ。

大木のラグビー人生は、頼れる背中を見て歩んできた。男4人兄弟の末っ子で、兄の影響でラグビーを始め、國學院大學栃木高校から帝京大学へと同じ道を進んだ。大学では特に1歳上の河口と塚本にかわいがってもらい、いまでも「悩んだらまず相談する」と、信頼を寄せる存在だ。卒業後に広島でラグビーを続けたのも、この二人がいたからだった。

中国RRでも帝京大学出身の選手が多く、末っ子気質は健在。昨季までは3つ上の先輩である松永浩平がキャプテンとしてチームをけん引していたため「今まではどうしても引っ張ってもらう感じで、付いていくだけだった」。

だが、大木も今年で29歳。後輩も増え、今季からはキャプテンも年下の二人に代わった。これまで先輩の背中を見てきたが、「後輩をサポートしたいし、一緒になってチームを盛り上げていきたい」と自覚も高まってきた。

さらに、小さなファンの大きな応援が背中を押してくれている。関東に住む甥っ子3兄弟がラグビーをしていて、特に小学3年生の末っ子は中国RRの試合を欠かさず見ているという。

「甥っ子たちがラグビーにハマっていて、本当にかわいいんですよ。それが今季一番の頑張れる源ですね。僕がタックルしたら喜んでくれるし、僕のタックルの回数を数えているぐらい。だから試合中にタックルを外せないし、変な試合はできないですね」

今季は今まで以上に責任感が強くなった。前回のRH大阪戦後の涙がその証だ。「自分の力を発揮できなかったし、コーチたちの期待に応えられなかった。甥っ子たちも見ていたので、今季一番悔しい試合でした」。

今節の相手は、そのRH大阪。今季最後のホストゲームで大木はリザーブに入った。前回の悔しさは忘れられない。それでも、試合に出れば、強敵相手にまた果敢に立ち向かう。「しっかり体を張って、泥臭いプレーを見せたい」。グラウンドに入ると、熱く戦う背中を見せる。

(湊昂大)

NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(D3)

歓喜は目前。“Better than before”の精神で、D3優勝とD2昇格を決める

NTTドコモレッドハリケーンズ大阪の1番(写真手前)、西浦洋祐選手。前節ではボーク コリン雷神のトライにつながるバックフリップパスもあった

4月8日(土)に行われるNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第13節で、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)とのビジターゲームに臨むNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)。前々回(2022年12月25日)、ビジターとして対戦した際に1番で先発出場し、プレイヤー・オブ・ザ・マッチを獲得していた深澤翔祐は、今回は2番のリザーブとして試合に臨む。1番には、前節に続き、ベテランの西浦洋祐が先発し、新加入の髙井翔太がベンチに控える。

アーリーエントリーでRH大阪に合流していた新加入選手5名のうち、前節で髙井が初めてファーストキャップを獲得した。帝京大学の1番を務めていた髙井にとって、公式戦は全国大学ラグビー選手権大会の決勝戦以来。「大学生の試合とはまた違う雰囲気で、楽しかった」。得意とするスクラムでも、手ごたえを感じている。

髙井がチームに合流して1カ月が経った。「大学だとコーチ陣に指導してもらっていたが、社会人だと先輩がたくさんいて、自分の不得意なプレーや細かい部分をしっかり教えてくれている。先輩たちが頼もしい」という。

髙井にアドバイスを求められていた32歳の西浦もまた、髙井のことを「向上心があるので、フロントローの選手として互いに高め合える良い影響を与えてくれている」と話していた。

その西浦も、前節では、ボーク コリン雷神のトライにつながるバックフリップパスもあった。「そういうパスも出せるような、パワーだけでなく、細かい部分のスキルも高い選手」(杉下暢)。シーズン序盤には少し負傷もあったが、今季ここまでの10試合で7試合を先発出場し、セットピースを支えてきている。

「セットピースは、攻撃の最初の起点。安定していれば、良いアタックも良いディフェンスもできる。スクラムでは毎試合課題が出てくるけれど、その課題が出てくる頻度を少なくし、より精度の高いスクラムを8人で作り上げたい。でも、まずは自分が目の前の相手に勝つことが大切」(西浦)

今節勝利すれば、RH大阪にとって最終節となる第14節を残し、D3優勝とD2昇格が確定するが、チームには浮ついた様子はない。「まずは目の前の相手に勝つ」。スクラムもゲームも同じだ。継続してテーマに掲げている“Better than before”。昨日よりも良い今日のトレーニングをし、前節よりも良い試合をするための準備に抜かりはない。

(前田カオリ)

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