三重ホンダヒート(D2)

現代ラグビーの大きな攻撃の武器。三重Hが誇る「10番」

ここまで3勝1敗、勝ち点14の三重ホンダヒート(以下、三重H)は、ディビジョン2、2位で今季3試合目のホストゲームを行う。相手は3位、勝点差1で背後に迫っている豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)であり、この試合の結果によっては、順位が入れ替わる可能性がある。また、この第5節で、ディビジョン2の全チームと一通りの対戦を終える。ディビジョン全体の勢力図が分かり、シーズンの折り返しを迎える意味でも重要な試合となる。上田泰平ヘッドコーチは「全チームと当たることで、われわれの成長を測ることができる。プレーオフへ向け、前半戦でチームの何が強みかを見つけ、後半戦でそれを整えていく」と話す。

三重Hの「強み」の一つは「10番」である。「ラグビーの10番は、サッカーの10番と同じ」(上田ヘッドコーチ)重要なポジション。このスタンドオフのスターターは、ケイレブ・トラスクが務めている。チームをコントロールし、攻撃を指揮するチームの司令塔という役割に加えて、素晴らしいキッカーでもある。

ケイレブ・トラスクは、ニュージーランド生まれの24歳。マオリオールブラックス、U20ニュージーランド代表に選ばれている。三重Hではアルゼンチン代表のパブロ・マテーラ、オーストラリア代表のトム・バンクスらビッグネームに隠れてしまっているが、ケイレブ・トラスクもオールブラックス(ニュージーランド代表)の次の「10番」にリストアップされている逸材である。

今季、「ゲームタイムを求めて日本へやってきた。必ず結果を残したい」と話すケイレブ・トラスク。彼の特にキッカーとしての実力とセンスには目を見張る。攻撃のトリガーであるハイパントのバリエーション、精度、プレースキックの飛距離、風、状況への対応力は素晴らしい。

第1節は3ゴール、2ペナルティゴール。プレースキックでのミスは1本のみで成功率83%。第2節も6ゴール。ミス1本、成功率85%だった。強風の中でのゲームだったが、どの角度からも風をものともせず、ボールは綺麗な放物線を描いていた。第3節のプレースキックは多少精彩を欠き、1ペナルティゴール、成功率33%に終わったが、攻撃時のハイパントを含め、キッカーとしての存在感は大きい。上田ヘッドコーチも「どこからでもペナルティゴールを狙えるキッカーがいることは、相手に脅威を与えている」と言う。

速い展開で、スペースを見つけて前へ進んでいく三重Hのラグビーに対しケイレブ・トラスクは「自分のプレースタイルに合っている」と話している。「パントキックなど、もっとさまざまなキックで、相手ディフェンスを難しくさせないといけない」と現状の結果にも満足していない。

三重Hの「10番」には、第3節、後半38分に逆転ゴールを決めた呉洸太も控えている。呉も今季、通算成功率82%、「トラスクと同じくキックに自信を持っている」と本人も話す。

現代ラグビーにおいて、キックでのエリア獲得は大きな攻撃の武器であり、そのためには精度の高いハイパントを蹴ることのできるキッカーは必須。さらにプレースキックも「キャリアにおいて成功率85%以上がワールドスタンダード」(上田ヘッドコーチ)とキッカーの重要度は高い。

はたして三重ホンダヒートの「10番」がどのようなキックを蹴るのか、プレースキックを何本成功させるのか。ボールの放物線とともに見ものである。

(小崎仁久)

高いゴール成功率を誇る三重ホンダヒートの10番、ケイレブ・トラスク選手


豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

大暴れなるか。フランス代表65キャップの男がこの大一番で復帰

前節、勝利を飾りここまでの成績を3勝1敗の勝点13とした3位・豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)。今節は同じく3勝1敗で勝点14とする2位・三重ホンダヒート(以下、三重H)と対戦。隣県の三重交通Gスポーツの杜 鈴鹿サッカー・ラグビー場に乗り込む。

勝点差はわずか「1」。リーグ戦を折り返すタイミングでの直接対決は、今後の戦いに大きな影響を及ぼしそうだ。前節の試合直後、ここまで全試合に先発している清水晶大は「三重H戦はかなりキーになる」と、この戦いを重要視した。この試合をモノにすれば、今季の目標であるディビジョン1昇格へ大きく前進する。今季の命運を握る試合と言っても過言ではないだろう。しかし、S愛知は今季ディビジョン2に昇格した“チャレンジャー”の立場。無駄な星勘定はせず、自分たちが準備してきたことを最大限に発揮することにフォーカスし、目の前の試合に対して全力を尽くす姿勢を貫く。

そんなS愛知に朗報が届く。開幕戦での出場以降、離脱が続いていたヨアン・マエストリが戻ってくる。2015年ラグビーワールドカップのフランス代表メンバーであり、65キャップを記録する男が、この大一番で復帰。徳野洋一ヘッドコーチは「個人のキャラクターに依存するチーム作りをしているわけではないが、彼が持っている高さや力強さが出せれば、また違ったS愛知の姿をお見せできると思う」と期待を寄せる。ヨアン・マエストリも「チームに戻ってくることができてうれしい。前節はとても良いゲームだったので、自分が入ることで新たなエナジーを与えたい」と語った。

数年前から日本行きに興味があり、今季ついに来日が叶った。休日は全国各地へ旅行に出掛け、日本文化も堪能中。グラウンド内では、練習中にも積極的にチームメートへアドバイスを送る姿も見られるほど、とにかくチームの勝利を優先する。202cm、119kgと存在感も抜群。復帰直後から大暴れする姿を、是非とも見たい。

(齋藤弦)

負傷から復帰した202cm、119kgのロック、ヨアン ・マエストリ選手

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