2023.04.21D2 4位~6位順位決定戦 第3節 江東BS vs 釜石SW-見どころ

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

「来年もディビジョン2で」。サラリーマンラガーたちの懸ける思い

4月8日の東京サントリーサンゴリアスとの練習試合で、改めて評価を高めたという清水建設江東ブルーシャークスのジョンベン・コッツェ選手

ここから勝負の3戦となる清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)。昨季、ディビジョン2に上がったばかりなだけに、入替戦も含めたここからの3戦を落とすことはできない。ディビジョン2に上がって以降、なかなか勝てない苦しさもある中で、チームには“来年も必ずディビジョン2でやりたい”という強い思いがある。

直近の試合となった豊田自動織機シャトルズ愛知との一戦は3対34と悔しい敗戦となった。雨というピッチコンディションの中で、準備してきたことが出せず、大隈隆明監督は「アタックが全然できなかった。セットピースの修正が必要」と課題を口にした。

その一戦からここまでは約1カ月の期間が空くことを見据えて、江東BSは4月8日に非公開で東京サントリーサンゴリアスとの練習試合を行った。ここまでのリーグ戦で見つかった反省点を修正するための実戦の場。そして、普段出場機会が少ない選手へチャンスを与え、メンバーを再セレクトするという点でも重要な位置付けとなった。ジョンベン・コッツェは、総当たりのリーグ戦では開幕からの2試合はスタメンとして起用されたが、その後は控えの試合が続いた。しかし、この練習試合でトライを決め、大隈監督は「フィジカルが非常に強く、強いタックル、ピックプレーができる。また、負けず嫌いな気持ちも強く、チームのピンチを救い、試合の流れを変えられる貴重な選手だ」と評価している。

“来年も必ずディビジョン2でやりたい”という思いは、選手たちの行動にも表れている。平日フルタイムで会社員として仕事をしている選手たちは、日によっては“残業”が生まれ、その残業で会社に残ると、もちろん練習の開始時間には間に合わない。これまでは、残業で練習に遅れてくる選手もいたようだが、ここから大事な3戦を控えるいま、就業前の早朝から出社することや、練習日ではない曜日にその残業を補うなど、練習開始時間にピッチにいられるように意識している。その裏側には、身を粉にしてでもラグビーに懸ける選手たちの思いがある。練習が終わって帰ると、日付が変わり、翌日は朝5時に起床して出社している選手もいる。練習時間を確保するには睡眠時間を削るしかないと、サラリーマンラガーの過酷さが見える。

努力の結果を示したい順位決定戦は、リーグ戦で今季初勝利をした相手でもある釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)との一戦となる。良いイメージがある中で大隈監督は、「チャレンジャー精神を忘れず、80分間ひたむきなプレーをしよう」と選手たちに共有している。ハードワークをしてスペースを作り出し、そこにボールを運んでトライするという“スペースクリエイトアタックラグビー”を掲げる江東BS。江東区夢の島競技場で白星をつかむべく、チーム一丸となって釜石SWに挑む。

(山村燿)


釜石シーウェイブスRFC(D2)

指揮官が期待を寄せるセットピースの核。努力の男がリベンジ達成へのカギを握る

「“順位決定戦に臨む”のもそうだが“江東BSへリベンジする”という思いが強い」と語る釜石シーウェイブスRFCの伊藤大輝選手

釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)は4月22日、江東区夢の島競技場で清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)との順位決定戦に臨む。リーグ戦での対戦成績は1勝1敗。釜石SWは今季最多の1247人が詰めかけたホストゲーム最終戦で江東BSに勝利を献上してしまい、悔しさが残る。そんな江東BSとの対戦となるだけに入替戦を前にした順位決定戦でのリベンジを誓っている。

「“順位決定戦に臨む”のもそうだが“江東BSへリベンジする”という思いが強い。いまできる最大限、4位で入替戦に臨むことをみんなでしっかり意思統一しています」。そう話したのは伊藤大輝だ。チーム在籍6年目の28歳で、今季は総当たりのリーグ戦全試合に出場した。フッカーはスクラムでは最前列の真ん中、ラインアウトではボールを投げ入れるスローワーを担うセットピースの核だ。3月下旬、報道陣向けにチームが開いた会見で、首脳陣から今後の試合の注目選手として名前が出た一人がその伊藤だった。

総当たりのリーグ戦9試合を終えて釜石SWが上げた勝ち星はわずか1(不戦勝を除く)。戦績のみを見れば苦しさが際立っているが、チームの総トライ数は昨季の『23』に対し、今季は『35』と大幅に増加した。須田康夫ヘッドコーチは「持ち味であるボールを保持して動かしていくアタックが機能した結果。それを最大限に発揮するのに大切なのは完全にセットピース。総当たりのリーグ戦ではセットピースで劣勢になり、プレッシャーを受けることでやりたいことが思惑どおりにいっていない。伊藤がセットピースの核として、いいボールを出してくれればわれわれのいい攻撃を始めることができる」と、セットピースの精度が勝負を分けると話した。

練習場では、全体練習後にラインアウトのスローイングにひたすら取り組む伊藤の姿がいつもある。その数は、最低100本は行うという。

「セットピースで上回らないと勝利は見えてこないと思っている。100%のボールを出すところはこだわってやる。自分が引っ張って、チームにいい流れを持ってくる」(伊藤)

今季全試合に先発出場し、チームを引っ張ってきたキャプテンの小野航大を初めて欠く試合となる。より一層、“一枚岩”となって勝利をもぎ取りにいく。

(佐々木成美)

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