浦安D-Rocks(D2)

自分たちのいるべき場所へ。生まれ変わったチームは集大成となる戦いに挑む

浦安D-Rocksの飯沼蓮キャプテン。「キャプテンらしくしないことを意識してきた」

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1/ディビジョン2 入替戦の第1戦。浦安D-Rocks(以下、浦安DR)は、宮城県のユアテックスタジアム仙台で、花園近鉄ライナーズに挑む。思い返せば、リーグワン初年度の昨季は、シーズン終了後にNTTグループの2チーム(旧・NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪)が再編されるという激動が起きた。新たに『浦安D-Rocks』として生まれ変わったチームはディビジョン2からのスタートを余儀なくされる。しかし、その混沌と波乱の中で、ラグビーができる環境に感謝しながらディビジョン1への昇格だけを目指し、リーグ戦は全勝。まずは入替戦の切符を手に入れた。

チームの原動力は新キャプテンと、キャプテン経験者たちだ。まずは、今季からキャプテンを務める飯沼蓮。「キャプテンらしくしないことを意識してきた」。明治大学でキャプテンを務めていたころは、「キャプテンらしくなければならない」と自分を縛り付けていたが、いまのチームでは違う。「グレイグ(・レイドロー)や(金)正奎さん。キャプテンとしても選手としてもすごい人たちから、いろいろなアドバイスをもらいました。その中で、『周りを頼りながらも、まずは自分のプレーにフォーカスすることが大事だ』、と。それを意識して、楽しみながら試合に臨むようにしています」と胸を張る。

そして、新キャプテンを支えるキャプテン経験者たち。そのうちの一人、旧チームでキャプテンを務めていた金正奎は言う。「飯沼は、こちらからアドバイスすることがないくらい、素晴らしいキャプテンシーを持っています。(周りが)助けてあげたいと思わせるキャプテンですね」。

1シーズンで再びディビジョン1のステージへ、自分たちがいるべき場所へ戻ろう──。新キャプテン率いる新生チームが、リーグ戦の勢いそのままに目標達成なるか。シーズンの集大成へ、注目のカードの幕が開く。

(有働文子/Rugby Cafe)


花園近鉄ライナーズ(D1)

世界的名手の存在感と去り行く二人のベテランへの思い。最高の一体感で決戦へと臨む

花園近鉄ライナーズのクウェイド・クーパー選手。「先週や今週だけでなく、長期間ずっと準備を続けてきたので、レベルの高いプレーができる確信はある」

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1では勝ち点5にとどまり、最下位に終わった花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)。しかし、まだ今季の戦いは終わっていない。5月7日、ディビジョン1への残留を懸けて、浦安D-Rocks(以下、浦安DR)との入替戦第1戦に挑む。

5日に行われたゲーム形式の練習では、リーグ最終節のNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)戦で30秒程度だけピッチに立ったクウェイド・クーパーが臨戦態勢を整え、第7節の静岡ブルーレヴズ戦を最後に負傷で戦列を離れていた日本代表のセミシ・マシレワも先発組に入ってゲーム形式の練習をこなしていた。

「試合に出ているメンバーがベストメンバーだし、『アイツが出ていれば』という思いは微塵もない」とキャプテンの野中翔平は負傷で離脱者が相次いだ今季にも言い訳をしようとはしなかった。それでも、入替戦に向けてようやく充実した顔ぶれがそろい、試合に挑むことになる。

GR東葛戦では入替戦での出場資格を得るために異例のワンプレー出場となったクウェイド・クーパーだが、この一戦を心待ちにする。

「電気のスイッチを入れるように試合日だけスイッチを入れることはできない」(クウェイド・クーパー)。昨年8月に左足のアキレス腱を断裂。リハビリを続けながら、シーズン最終盤の復帰を視野に入れてきた世界的スターは「先週や今週だけでなく、長期間ずっと準備を続けてきたので、レベルの高いプレーができる確信はある」と自信を口にする。

ディビジョン2では順位決定戦を含めて12戦12勝。圧倒的な戦歴を残している浦安DRではあるが、野中は「相手はデータ的にもペナルティが(リーグで)一番多い。ウチはアタックでもディフェンスでもペナルティが減ってきていて、規律高くやれている」と自信を見せる。

巧みなパスやキックはもちろんだが、クウェイド・クーパーがピッチに立つことで細部まで徹底的にこだわるその姿勢と影響力が、おのずと花園Lのクオリティーを高めるはずだ。

そして、「あきらめない気持ちを持ち続ける状態を自分は作り出せると思う。自分の姿を見てチームメートにも学んで欲しい」とクウェイド・クーパーは言う。

「チームの士気が高まりますよね。みんなも自信を持ってプレーできる」と水間良武ヘッドコーチもクウェイド・クーパーの存在感をこう話すが、さらにチームの一体感を高める要素も加わった。

5日の練習後、花園Lの公式SNSではある発表が行われた。今季初勝利を手にした第15節・コベルコ神戸スティーラーズ戦でトライを決めている南藤辰馬と樫本敦の両ベテランの今季限りでの現役引退を発表。入替戦はこの両名が花園Lの選手として戦う最後の舞台となる。

チームの未来のため、そして、チームを去る仲間のため、花園Lは最高のモチベーションとともに浦安DRに立ち向かう。

(下薗昌記)

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