2024.05.02NTTリーグワン2023-24 第16節 東京SG vs S東京ベイ-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第16節 カンファレンスA
2024年5月4日(土)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東京サントリーサンゴリアス vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスA)

“最小兵”vs“ビッグパック”。
向上心の塊が、怯まず立ち向かいカンフル剤となる

15節の対東芝ブレイブルーパス東京戦では、トライも記録。東京サントリーサンゴリアスのフッカー宮﨑達也選手

ディビジョン1のレギュラーシーズンも最終節。現在3位の東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)は5月4日、秩父宮ラグビー場でクボタスピアーズ船橋・東京ベイと対戦。すでにプレーオフトーナメント進出を決めている東京SGではあるが、リーグ戦3位通過を果たすため、負けられない一戦となる。

今季開幕節では52対26で東京SGが完勝したものの、昨季はプレーオフトーナメントでの対戦も含めて3戦全敗を喫した相手だけに油断はできない。特に、リーグ屈指の大型選手が並ぶフォワード陣は驚異的。東京SGの選手、コーチ陣は「ビッグパック(大型フォワード陣)に警戒したい」と口をそろえる。

その「対ビッグパック」で先導役となるフッカーでスタメンを務めるのは、東京SGのフォワード陣で最小兵(164cm)の宮﨑達也だ。2022年の入団後、東京SGでは初先発となる。

前所属は、2022年限りで休部となった宗像サニックスブルース。ラグビーを続けるために移籍先を模索した中、練習生という形で東京SGに入団した苦労人だ。

東京SGに入ってからも苦難の道は続き、昨季は出場機会ゼロ。今季もシーズン前半はメンバー入りも叶わなかった。しかし、第11節で初出場を果たすと、前節では途中出場ながら20分近くグラウンドに立ち、モールからトライも決めてみせた。

「チャンスはいつ巡ってくるか分からない。チャンスが来たときに自分のベストを出せるように、毎日練習では意識していました」

身長164cmの小柄な体格でビッグパックにどう挑むのか? そんなシンプルな疑問にも明確な答えを返してくれた。

「タックルではいかに低く当たるか。みんなが苦労して低くならないといけないところを僕は普通に低く入れるので、その部分では苦労はないです」

そんな宮﨑を、田中澄憲監督はこう評している。

「宮﨑は、当初は練習についてこられないような選手でした。1シーズンが終わって、彼の中でチームにただいるだけではなく、『成長したい』、『勝ちたい』という思いが強くなって、今季はその姿勢がすごく良いほうに変化しました」

プレーオフトーナメントに向け、東京SGに必要な『成長したい』、『勝ちたい』という思いを体現する宮﨑がチームのカンフル剤となれるか。ビッグパックに怯まず立ち向かう姿を期待したい。

(オグマナオト)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)

託されたバトン。偉大な先輩の“ラストマッチ”で
苦労人がリーグワン初先発をつかむ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフッカー福田陸人選手は転向組。「セットピースもフィールドプレーも全力でいきます」

必然めいた偶然と遭遇し、大きな喜びといくばくかの緊張をかみ締める男がいる。福田陸人がジャパンラグビー トップリーグ(当時)での活躍という将来を見据え、フランカーからフッカーへポジション転向を試みたのは明治大学ラグビー部2年生のときだった。だが、そこではBチームのスタメンには選ばれるも、そこから先には進めず、シーズン途中でフランカーに復帰。福田が明治大学の先輩でもある、あの選手の存在を意識するようになったのは、このころである。

「そもそも、フッカーに転向したところで試合に出ていないとスカウトの声は掛かりません。ヒロさん(杉本博昭)もクボタスピアーズ(当時)に入団してから(ナンバーエイトから)フッカーに転向されたという話を聞いて、そういう選択肢もあるんだと思いました」

卒業後、2022年に杉本が在籍するクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に入団。同時に、本格的なフッカー転向を目指した。一度しかない人生において、結果が出るかどうか分からないことに挑戦するのは大きな勇気を要するものだ。そんな福田を支えたのがチームメートとコーチ陣。そして杉本も、自分と同じ道をたどる後輩を何かと気に掛け、アドバイスを送り続けた。

だが、時間は無情に過ぎ去っていき、同期入団の選手たちが次々とデビューしていく中、福田は試合出場のチャンスをつかめずにいた。一昨季も、そして昨季も、ピッチの外から仲間たちの戦いを眺め続けた。

「悔しさもありましたが、自分が成長しないことには試合には出られません。吸収できるものはすべて吸収して、早くみんなに追いつこうと思っていました」

そんな福田にとって自身をアピールする場となっていたのが、練習試合だった。“今季こそ”という思いで臨んだ昨年秋のプレシーズンマッチ。ところがその第2戦、早々の時間で福田は左のふくらはぎを負傷。活躍の舞台を失った。

「めちゃくちゃ悔しかったです。プレシーズンマッチ1戦目ではいいパフォーマンスを発揮できたので、『今季はデビューできるかも』と思っていた矢先の出来事でした。少し落ち込んでしまいました」

考え得るすべてのケアを施し、年内には無事にカムバック。練習試合で高いパフォーマンスを発揮し、3月に行われた埼玉パナソニックワイルドナイツとの練習試合では2トライを決めて勝利に大きく貢献。そして、そのときがついに訪れた。ホストゲーム最終戦となった前節の三重ホンダヒート戦。控えの16番に、福田の名があった。

「めちゃくちゃうれしかったです。ヒロさんにも『同じルートを辿ってきた選手が活躍するのはうれしい』と言っていただきました」

物語は、そこで終わりではなかった。控えでのメンバー入りは、あくまで序章。杉本が引退を表明した今季の最終節・東京サントリーサンゴリアス戦に福田は先発で出場する。

「選ばれたからには、やるしかないです。セットピースもフィールドプレーも全力でいきます。また来シーズンも福田を使おうと、(コーチ陣に)そう思ってもらえるプレーをします」

強いS東京ベイを創ってきた男から、これからさらにS東京ベイを強くしていく男へ。バトンは、託された。

(藤本かずまさ)

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