2024.03.15NTTリーグワン2023-24 第7節 釜石SW vs GR東葛-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第7節
2024年3月17日(日)12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs NECグリーンロケッツ東葛

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

釜石の人たちの夢を追って。
キャプテン・小野航大、節目の一戦へ

この試合で「公式戦100試合出場」を達成することになる、日本製鉄釜石シーウェイブスの小野航大キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)は、3月17日(日)に釜石鵜住居復興スタジアムでのホストゲームに臨む。この試合は、降雪によるグラウンドのコンディション不良で中止となった3日のNECグリーンロケッツ東葛戦の再試合となる。先週に今季初白星を挙げて、一つ壁を打開した釜石SW。今季初の連勝、そして、ジャパンラグビー リーグワン参入後初となるレギュラーシーズン2勝目もかかる試合だ。

リーグワン参入から3年目。一番勝ちたかったホストスタジアムの“うのスタ”でレギュラーシーズン初めての勝利を収めた先週の第8節。『東日本大震災復興祈念試合』という大事な試合で、地元の大きな声援も背に勝利をつかんだ選手たちの姿は誇らしかった。それでも、キャプテンの小野航大に浮つく様子はない。「勝利がたまたまではなくて、チームが強くなっている結果だと証明するためにも、この試合で勝つことがすごく大事だと思っています」。

福島県いわき市出身でウイングの小野は、釜石SW一筋11年目。今節の出場で、釜石SWの公式戦通算100キャップとなる。もちろん、プレシーズンマッチなども含めれば出場した試合は倍以上になるだろう。これまでを振り返ったとき、小野が一番に頭に思い浮かべたのは、2018年、釜石鵜住居復興スタジアムのこけら落としとなった試合だ。スタジアム完成までの道のりや、釜石の人々のラグビーへの熱い思い、さらに、観客席を埋め尽くすほどの大勢の人たちに応援された試合当日の経験が、「地元東北のために」という小野の思いをさらに強くした。「どこかに移籍しようと考えたこともほとんどなく、釜石SWに全力を注ぎ、貢献できたというのは自分にとって価値のあること。関わってくれたたくさんの人に感謝したい」と、さまざまな思いをかみ締めていた。

ラグビー選手としての一つの節目を迎える小野。ただ、これからも変わらない目標を追い続ける。「体は小さいですけど、泥臭くプレーする姿をこれからも見てもらいたい。ディビジョン1で釜石SWが戦う姿を思い描いている人たちがたくさんいると思うので、それを達成するためにもう少し頑張りたいと思います」。

インタビュー終盤、「いつもと変わらないですけど、せっかくの節目なので勝っておいしいビールを飲みたいですね」と、笑顔で話した小野。釜石SWの100キャップ、そして今季初の連勝に、レギュラーシーズン初の2勝目。お祝いづくしの試合になることを期待したい。

(佐々木成美)

NECグリーンロケッツ東葛(D2)

いまは“フィジカル一辺倒”ではない。
新たな一面を見せるクリスチャン・ラウイ

NECグリーンロケッツ東葛のクリスチャン・ラウイ選手。「自分自身も、チームも、成長している実感があります」

「久しぶりに良い試合ができました」

クリスチャン・ラウイはそう言って満面の笑みを浮かべた。

NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、先週の第8節・レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)戦の前半38分、クリスチャン・ラウイのパスを起点に尾又寛汰、アッシュ・ディクソンと素早くつなぎ、左サイドを鮮やかに切り崩した。そしてアッシュ・ディクソンからパスを受けたクリスチャン・ラウイはライン際を疾走し、今季自身初となるトライを決めた。

目を引いたプレーはトライだけではない。後半24分には絶妙なオフロードパスを小幡将己に通してチャンスを広げ、後半26分にもニック・フィップスの守備によってこぼれたボールをキャッチすると、右サイドへパスを展開してマリティノ・ネマニのトライをお膳立てした。

「大勢の人からは、フィジカルプレーは得意だけど、ゲームメークやパスは苦手だと見られていると思います。でもこれからのラグビー人生を考えたら、いろいろなプレーができるセンターにならなければいけないと思いました。この前の試合では『僕はこういうプレーもできるんだよ』というところを見せられたと思います」

昨季、クリスチャン・ラウイはディビジョン1のレギュラーシーズンで14試合に出場し、チーム最多タイとなる6トライを記録した。その反面、「トライは取れたけど、できないプレーがたくさんありました」と課題も感じていた。

今季の開幕当初はけがの影響もあり、調子が上がらなかった。試合のメンバーから外れることも多かった。その間は、バックス担当のポール・フィーニー コーチの下でスキルの強化に励んだ。

「自分はチームのために何ができるのだろうかと考えたときに、パスをうまくつなげたり、良いオフロードパスを出せたりできるようになれば、それは自分のためにもなるし、チームのためにもなると思いました」

フィジカルを前面に押し出したパワー一辺倒のプレーに、テクニカルな要素を身につけることで新たな自分を見いだす。進化を期したクリスチャン・ラウイの取り組みは、調子が向上するにしたがい、徐々に成果となって表れ始めた。

「以前はできなかったゲームメークやオフロードパスが、この前の試合ではできるようになりました。今季は試合に出られない時期もあったけど、RH大阪戦では練習してきたものを出せてうれしかったです」

しかもRH大阪戦では、レメキ ロマノ ラヴァを欠きながらGR東葛は9トライを奪う攻撃力を見せた。クリスチャン・ラウイは「自分自身も、チームも、成長している実感があります」と話す。

その自信を携えて、GR東葛は3月17日に、釜石鵜住居復興スタジアムで行われる日本製鉄釜石シーウェイブスとの一戦に臨む。

(鈴木潤)

2024.03.01NTTリーグワン2023-24 第7節 釜石SW vs GR東葛-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第7節
2024年3月3日(日)12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs NECグリーンロケッツ東葛

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

「一日小さな一生」。
恩師の言葉を胸に、歓喜の一勝を

日本製鉄釜石シーウェイブスの山田裕介選手。高校時代の恩師の影響もあり教員免許取得を目指す

日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)は、去年12月以来のホストゲームに臨む。今季いまだ勝ち星をつかめず最下位に低迷する釜石SWだが、ホストゲームという大きなアドバンテージを力に、熱く戦う選手たちの姿に期待が懸かる。

「下を向かずに、絶対に勝つという強い気持ちを全員が持ち続けている。このチームに加入して一番強く感じていることです」。そう話したのは今季、豊田自動織機シャトルズ愛知から加入した山田裕介。今季、安定感が増したスクラムの核を担う一人だ。

愛知県出身の山田は中学生からラグビーを始め、奈良県の強豪、御所実業高校時代には全国高校大会で準優勝も経験。19歳でトップリーグデビューを果たし、さらにU20日本代表にも選ばれた経験がある。それでも昨季は公式戦出場がゼロ。高校卒業後はけがの影響などで思うようなプレーができない日々が続いていたという。「一度、環境を変えることが大事」と、地元を離れ、新天地での挑戦を決めた。スクラムの最前列を担うためのパワーや技術はもちろん、まじめでひたむきに取り組む姿も評価され、開幕から6試合すべてで先発起用された。求めていた出場機会に充実感をにじませる一方、「試合に出られない人たちの気持ちもすごく分かるので、中途半端なプレーは絶対に見せたくない」と覚悟を胸に宿しグラウンドに立っている。今節は初めてリザーブとして試合を迎える。「自分が出たタイミングで勢いをもたらし、相手を“粉砕”するスクラムを組んでとにかく勝ちにいく」と意気込む。

山田はラグビーと並行し、通信制大学での教員免許取得の勉強も去年から始めた。これまでのラグビー人生で出会った恩師たちとの出会いが大きいという。特に、高校ラグビー界の名将、竹田寛行監督(御所実業高校ラグビー部)の自宅に下宿しながらラグビーを続けた3年間は忘れられない。卒業して数年経ったいまでも、まるで父親のように親身に話を聞いてくれる姿に何度も助けられ、いつしか自分も、そのような教師になりたいと思ったのだという。「自分もいろいろな経験をして、卒業した子どもたちからも相談を受けるような存在になれたらと思っています」。ホストエリアである釜石市では子どもたちにタグラグビーを教える機会も大切な時間になっている。

山田の座右の銘は、竹田監督に言われた「一日小さな一生」。一日一日を大切に積み重ねれば大きな結果が生まれるという意味の言葉だ。苦しくも前を向いて成長を重ねてきた釜石SW。大きな結果を地元ファンの前でつかみたい。

(佐々木成美)

NECグリーンロケッツ東葛(D2)

磨き上げたスローイングで圧倒を。
新鋭フッカー、いざ檜舞台へ

出場すればリーグワン初キャップとなるNECグリーンロケッツ東葛の小林恵太選手。フッカーとしてスクラム、ラインアウトでの活躍が期待される

NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の若手フッカー・小林恵太が、全体練習終了後、アッシュ・ディクソンのアドバイスを受けながら、新井望友とともにスローイングの練習を行っていた。小林にとって、今節の日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)戦は、控えとして今季初のメンバー入り。出場すればリーグワン初キャップを刻む試合となる。

小林は帝京大学の出身で、2021年度の大学選手権の優勝メンバーの一人。大学時代は常時試合に絡んでいたが、2022年のGR東葛入団後は控えにすら入れない日々が続いた。

「いまはしんどいかもしれないけど、いつチャンスがきてもいいように、いつでも試合に出られる準備をしておいたほうがいい」

GR東葛のチームメートであり、帝京大学の先輩でもある當眞琢や、同い年の藤井達哉からそんな言葉を掛けてもらったおかげで、小林は下を向かずに練習へと打ち込めた。そして2シーズン目を迎えた今季は、自分の置かれている立場が少しずつ変わり始めていく。

「自分が試合に出られない一番の原因はラインアウトのスローイングでした。そのため、毎日、毎日練習し続けて、コーチとも話をして、今年はスローイングの技術が伸びたと実感していますし、練習試合でも自信を持って自分をアピールできるようになったと思っています」

さらに、1月13日の第4節・レッドハリケーンズ大阪戦における、宮宗翔のリーグワン初キャップ・初トライにも多大な刺激を受けたという。小林は同期の活躍を喜びつつも、「自分もメンバーに選ばれるようにならないといけない」と気持ちを奮い立たせた。

そして、日々の練習や練習試合を通じて見せた猛アピールが、ついに今節の控えメンバー入りを手繰り寄せた。小林は、目前に迫るリーグワンデビューに向けて、試合のイメージを膨らませる。

「スクラムが僕の一番の長所なので、そこでみんなを引っ張って、相手を圧倒できるようなスクラムを組みたいと思っているのと、ラインアウトでもミスなく、安定したボールを供給できるようにしたい」

釜石SWとの前回対戦では、ラインアウトのモールからフッカーのアッシュ・ディクソンが先制トライを決めた。この試合のGR東葛はセットピースで優位に立ち、大量得点につなげた。初キャップのグラウンドに立つのであれば、小林は自分の強みであるスクラムと、磨き上げてきたラインアウトのスローイングで、前回対戦同様の優位性を築きたい。

3月3日、GR東葛は釜石鵜住居復興スタジアムで開催される釜石SWとの一戦に臨む。新鋭フッカーがリーグワンデビューを飾るとき、どのようなプレーで観客を沸かせてくれるのか。楽しみである。

(鈴木潤)

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