2024.05.23NTTリーグワン2023-24 D1/D2入替戦 第1戦 花園L vs 浦安DR-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1/D2入替戦 D1 12位vsD2 1位 第2戦
2024年5月24日(金)19:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ vs 浦安D-Rocks

花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)

花園Lが誇る二枚看板が見せる余裕。圧倒的不利のデータが並ぼうとも残留は“ミッション・ポッシブル”

花園近鉄ライナーズはウィル・ゲニア選手が5試合ぶりに戻ってきた。クウェイド・クーパー選手とのハーフ団は、文字どおり花園Lの“心臓部”といえる

D1/D2入替戦の第1戦で花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)は、浦安D-Rocks(以下、浦安DR)に12対21で痛恨の敗戦を喫した。

過去2シーズンのD1/D2入替戦を振り返ると、初戦を制したチームがいずれも翌年のディビジョン1を戦う権利を得ている。まさに花園Lにとっては“ミッション・インポッシブル”な戦いが待つことになるが、オーストラリア代表として数々の大舞台を経験してきたクウェイド・クーパーとウィル・ゲニアの双肩に、チームの運命は託された。

向井昭吾ヘッドコーチは運命の一戦を前にキッパリと言い切った。

「彼らで作ってきたチームだから、彼らで締めてほしいと思っています」

10点差以上での勝利、あるいはボーナスポイントを獲得しての勝利で花園LのD1残留が決まる一戦。

横浜キヤノンイーグルス戦で負った脳震盪の影響で、5試合ぶりに戦列に戻ってくるウィル・ゲニアはあえて点差を考えずに戦うと話す。

「フォーカスすべきは、自分たちのゲームをやり切ること。そうすれば自ずと結果は付いてきます。点差を意識すると私たちがやろうとするラグビーのディテールが疎かになってしまう」

そんなウィル・ゲニアが頼りにするのは「15歳で初めて出会って、ずっと一緒にやってきました」と信頼を置くクウェイド・クーパーの存在である。

オーストラリア代表だけでなく、スーパーラグビー(現在のスーパーラグビー・パシフィック)のレッズやレベルズでも僚友だったクウェイド・クーパーとのハーフ団は、文字どおり花園Lの“心臓部”である。

一方のクウェイド・クーパーも「ウィル(・ゲニア)もワールドクラスの選手。何百試合も一緒にやってきましたし、二人がそろう強みはいろいろとありますよ」と静かに笑みを浮かべる。

9点のビハインドを背負って迎える第2戦だが、攻め急ぎやチームの慢性的な課題でもあるペナルティを犯すことは禁物。まさにチームは崖っぷちに立たされているが、世界的ハーフ団は異口同音に「楽しみ」とさえ口にした。

「次の試合は自分たちのキャリアにおいて、また新たな1ページになるんでしょうね。その物語をどんどん続けていきたいと思っています」(クウェイド・クーパー)

そう、百戦錬磨の彼らにとって次なる戦いは“ミッション・ポッシブル(実現可能なミッション)”。気負いも焦りもなく、大一番のピッチに立つ。

(下薗昌記)

浦安D-Rocks(D2)

新しい強さを生み出した1年前の敗北
浦安DR史上最高の80分で歴史を塗り替える

第1戦は浦安D-Rocksのホストゲーム。多くのファンがスタンドを埋めた

すべてが決まる運命のD1/D2入替戦第2戦。第1戦で先勝した浦安D-Rocks(以下、浦安DR)は、東大阪市花園ラグビー場に乗り込む。悲願達成の条件はシンプルだ。勝てばディビジョン1昇格となる一戦が、金曜日の夜にキックオフする。

選手、スタッフ、ファン、その誰に昨季の入替戦のことを聞いても返ってくる答えは同じだった。「昨季はチームがバラバラでしたね──」。クラブ創設1年目、レギュラーシーズンを全勝で駆け抜けたが、肝心の入替戦で弱さと脆さを露呈。自分たちから、D1昇格のチケットを手放した。

迎えた今季、一貫して選手たちは口をそろえた。「本番は入替戦」。決してそれはレギュラーシーズンを甘く見ているわけではなく、どんなに勝とうが最後に勝てなければ意味がないことを分かっているからこその戒めの言葉だった。だから、開幕戦で負けようが、それを引きずらず、糧に変え、前に進んできた。勝っても内容に満足できなければ、トレーニングから全員で話し合い、突き詰め、上だけを見てきた。

その根底に常にあったのは、昨季に味わった屈辱だった。ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチは落ち着いた口調で今季のここまでを振り返り、最終戦に向けた思いを口にした。

「昨季は新しいチームで難しいところがありましたし、もしかしたら昇格するための準備が足りなかったかもしれません。ただ、その入替戦の敗北を経て、今季のチームは(戦いの場に)戻ってきましたけど、(シーズンのスタートから)いい状態で合流できました。間違いなく、あの敗北の経験が自分たちに生きていて、新しい強さを生み出したと思います。次の試合もほかの試合と同じように、一つひとつのプレーに集中して、リセットして、また次をやるだけです。できることはそれしかないので、選手たちがそれをやってくれればどんな結果でも受け入れる準備はできています」

第1戦を終えた直後、決勝トライを決めた石井魁は第2戦に向けて共闘を呼び掛けた。

「今日は多くのファンが来てくれて、楽しくラグビーができました。来週はビジターでのゲームですけど、多くのファンに足を運んでもらえたらうれしいですし、テレビで応援してくれる人たちにも楽しんでもらえる試合ができたらと思います」

今季の14試合目であり、このメンバーで戦う最後の試合は、2023-24シーズンの道のりの答え合わせの時間となる。もちろん、浦安DRに関わるすべての人が望む答えはただ一つ。浦安D-Rocks史上、最高の80分を過ごし、クラブの歴史を塗り替える。

(須賀大輔)

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