2025.02.14[トヨタV]加入後、初めて9番を背負うベテラン。その心を揺さぶった同じ境遇の仲間からの言葉

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第8節(交流戦)
2025年2月15日(土)14:30 岐阜メモリアルセンター 長良川競技場 (岐阜県)
トヨタヴェルブリッツ vs 静岡ブルーレヴズ

トヨタヴェルブリッツ(D1 カンファレンスB)

9番に抜擢された梁正秋選手。「チームのために責任とプライドを持って自分の役割をやり切ろうということ。それだけをいま感じています」

前節も猛追及ばず4点差で敗れたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)。これですでに5敗目と悠長なことは言っていられない状況になってきた。今節は4位の静岡ブルーレヴズを岐阜メモリアルセンター長良川競技場に迎えるホストゲーム。すぐにでも流れを好転させたいところで、スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ/ディレクター・オブ・ラグビーは大幅に先発メンバーを入れ替えた。

「(主力の)けがも大きな理由ですが、彼らがディビジョン1のレベルでプレーできる準備が整っているというのも理由です。グラウンドに出ている時間帯で最大限の能力を発揮してほしいと思っています」と、世界的な名将は期待を寄せる。

その中でぜひ注目してほしいのは、ベテランスクラムハーフの梁正秋である。神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ)からトヨタVに加入したのが2021年。チームにはアーロン・スミスや茂野海人など各国代表クラスのスクラムハーフがそろう中で、これまで4年間は出場機会が多くなかったが、今回初めてトヨタVの「9」番を背負ってプレーをする。

「いつもどおり淡々と準備をして頑張ってきたら、先発の機会がやってきたって感じです。ナギ(アーロン・スミスの愛称)や海人さんがいる中で、自分を選んでくれて感じるのは、チームのために責任とプライドを持って自分の役割をやり切ろうということ。それだけをいま感じています」

Bチームと呼ばれる控え組が行っている「MIRAI MATCH」では、キャプテンマークを巻いてチームを引っ張ってきた梁。チームメートがトライを挙げれば満面の笑みで駆け寄って祝福し、難しいメンタルにある若い選手たちを鼓舞してAチームに押し上げてきた。考えているのは常にチームのこと、自分がチームのために何ができるのか、である。

「先発と聞いてうれしかったというよりも、同じBチームのメンバーが『おめでとう』ってすごく喜んでくれて、そっちのほうがうれしかったですね。トヨタVに来てからずっとBチームですけど、苦しいというよりも本当に楽しみながら若い選手と一緒にラグビーをしてきたので、『次はお前たちの番だぞ』っていうのを示したいなと思っています」

(斎藤孝一)


2025.02.14[静岡BR]異色の経歴を持つ“マザー”が知性とリーダーシップでチームをリードする

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第8節(交流戦)
2025年2月15日(土)14:30 岐阜メモリアルセンター 長良川競技場 (岐阜県)
トヨタヴェルブリッツ vs 静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)

弁護士資格にカテゴリAでまい進、マリー・ダグラス選手

ここまで5勝2敗(勝ち点21)で4位と好調な静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)。その中でチームの躍進や安定に大きく貢献している198cmのロックがいる。静岡BRに来て5季目、今季からカテゴリAになったマリー・ダグラスだ。

今季のダグラスは、ここまで7試合すべてに先発出場し、途中交代したのは第6節の東京サントリーサンゴリアス戦だけ。ほかの試合ではフル出場を重ねている。昨年10月に35歳になったが、これだけ出場時間が長くなったシーズンは彼にとって初めてのことだ。それでも試合終盤にパフォーマンスが落ちることはなく、ラインアウトの成功数はリーグ3位タイ。第4節横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)戦では長いストライドを生かし、縦に抜け出してトライも取っている。

本人も「今季はラインブレイクできる選手がたくさんいるので、ブレイクしたあとにしっかりサポートに走っていくことを意識していますし、そこは自分の中で良くなっている部分だと思います」と語るが、横浜E戦のトライはまさにその形からだった。前節リコーブラックラムズ東京戦でも、素早いサポートから抜け出してマロ・ツイタマのトライにつなげる走りを見せた。藤井雄一郎監督は「もともとタフな選手で、80分間一貫して良いプレーを続けられる。相手のディフェンスを読むのも得意ですし、技術的なことはすごくリーダーシップを取ってやってくれるし、彼自身も成長を続けていると思います」と、目に見えない部分の貢献にも言及する。

弁護士資格を持っていることで話題になることもあるが、そのクレバーさはラグビーでも存分に生かされている。経歴もかなり異色だ。スコットランドの大学を卒業した際にはプロチームに入ることができず、オーストラリアに渡って法律関係の仕事に就いた。その仕事と並行して地元のアマチュアチームでプレーし、「仕事とラグビーの両立は本当に大変でした」という生活を4年間続けた。

そうした努力の末にトライアウトのチャンスを得てプロ入りし、ニュージーランド、スコットランド、オーストラリアでプレーして、2020年にヤマハ発動機ジュビロ(当時)に加入。すでに20代後半を迎えていたが、「日本に来てからもすごく成長した。特に昨季と今季の伸び方はすごい」とチーム関係者は証言する。

35歳になってもフィジカル面、技術面の進化は止まらず、頭脳の面でもチームを支えている。トヨタヴェルブリッツを倒すためにも、このまま上位に食らいついていくためにも、“マザー”(ダグラスの愛称)の存在は非常に大きな推進力となり続けるだろう。

(前島芳雄)


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