2025.02.20[花園L]移籍の背景に「やってみなはれ」の精神。退路を断ったフルバックの挑戦

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第6節
2025年2月22日(土)12:00 ベネックス総合運動公園 かきどまり陸上競技場 (長崎県)
九州電力キューデンヴォルテクス vs 花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズ(D2)

サントリーの社員選手から、出場機会を求めてプロ契約で花園近鉄ライナーズに移籍してきた雲山弘貴選手

前節、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)に勝ち切り、今季初の連勝を飾った花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)とのビジターゲームに挑む。

GR東葛戦の勝利は、チームにとっては今季2勝目だが、期待の新戦力として加入した雲山弘貴にとっては、移籍後の出場4試合目にして初めて味わった勝利の美酒だった。

「GR東葛戦はちょっと手ごたえがありましたが、開幕からの3試合は何もできませんでした。でも徐々に調子は上がっています」

明治大学卒業後、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)に加入。2シーズンを過ごしたが、層の厚いチームの中で、出場試合数はわずか2試合にとどまった。

そんな雲山が新天地に選んだのは花園Lだった。D1/D2入替戦の前に向井昭吾ヘッドコーチらから誘いを受け、D2に降格が決まったあと、花園Lでの挑戦を決意したという。

東京SGでは社員選手だったが、花園Lではプロ契約。退路を絶った形での移籍だったが、後押ししたのは東京SGに受け継がれるサントリーグループの創業者・鳥井信治郎が信条とした「やってみなはれ」の精神だった。

「何事にもチャレンジすることを掲げているチームだったので僕も影響をだいぶ受けています」と雲山は言う。

あえてD2からのリスタートを決意したのは出場機会に対する渇望である。「一番は自分の価値を上げること。試合に出ないと日本代表のヘッドコーチの目にも留まりませんから」。

GR東葛戦の勝利は、巧みなキックを持ち、エリアマネジメントに長けた雲山の持ち味が存分に出た結果だった。
派手なランで自らトライに絡む日本代表7キャップのセミシ・マシレワとは対照的なスタイルだが、向井ヘッドコーチも絶大な信頼を寄せている。

「あれだけ正確にロングキックを蹴ることができる選手はなかなかいないし、彼は自分がつぶれてウイングを生かすプレーが得意」(向井ヘッドコーチ)。

雲山がルーキーイヤーの2023年1月22日、東京SGの一員として記念すべきリーグワンデビューを飾った試合の相手が奇しくも花園Lだった。

「そういう(縁を持つ)チームでやれているのはうれしいですね」

所属チームは変わったが「やってみなはれ」の思いがこれからも雲山を突き動かす。

(下薗昌記)

2025.02.20[九州KV]あの日の憧れを重ね合わせて。“ご当地選手”が伝えたいこと

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第6節
2025年2月22日(土)12:00 ベネックス総合運動公園 かきどまり陸上競技場 (長崎県)
九州電力キューデンヴォルテクス vs 花園近鉄ライナーズ

九州電力キューデンヴォルテクス(D2)

開催地長崎出身の竹ノ内駿太バイスキャプテン。「日程が決まったときはうれしかった」

九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)は今節、九州KVのリーグワンでのホストゲームとしては初開催となる長崎県での一戦に臨む。3連勝を懸けて挑む相手は花園近鉄ライナーズだ。

「日程が決まったときはうれしかった」

そう話し、相好を崩すのは今季、バイスキャプテンを務める竹ノ内駿太。長崎市に隣接する時津町出身のいわゆる“ご当地選手”だ。地元での公式戦は長崎南山高校3年生のときに臨んだ全国高校大会県予選の決勝以来とあって気持ちも昂っている。

選手にとってラグビーを始めた原点の地でプレーできるのは大きな喜びだ。V・ファーレン長崎(当時JFL)や三菱重工長崎ラグビー部でスポーツトレーナーを務めていた父の存在もあり、幼少期からスポーツと接する機会は多かった。そんな中で関心が芽生えたのはサッカーよりもラグビーだった。

「ラグビーは仲間のために体を張れて、いろいろな特長がそれぞれにある中で、みんなに輝ける場所がある。それがラグビーの魅力だと子どもながらに思っていました。ラグビーのほうが仲間意識を感じられると思ったのが、ラグビーを始めたきっかけです」

小学校3年生で始めたラグビーは自分の人生に欠かせないものになり、リーグワンの選手として地元に凱旋することになった。昨年12月には長崎県の松浦市立御厨小学校でタグラグビー教室に参加した。九州KVが行っている地域・社会貢献活動の一環だ。

「子どもたちは最初、『ラグビーって何?』という感じでしたけど、最後は『面白かった』『試合を観に行きたい』と言ってくれて(タグラグビー教室を)やって良かったなと思いました」

そう振り返る竹ノ内だったが、かつての自分がそうだった。父親に連れられて行った三菱重工長崎ラグビー部の選手たちを見て「自分もこうなりたい」と憧れを抱いた。そのときの少年は「今度は自分がそういう立場になったのかな」という思いを抱くまでになった。

「今回のゲームをとおして『自分もこうなりたい』『ヴォルテクスに入りたい』と思ってくれる子どもたちが増えてくれたらうれしい」

竹ノ内は仲間のために懸命にプレーする。その姿はきっと子どもたちに“何か”を残すはずだ。

(杉山文宣)

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