2025.03.27[江東BS]100試合出場の節目も「同じ顔でラグビーをする」。あるベテランフッカーの軌跡

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第10節
2025年3月29日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs レッドハリケーンズ大阪

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

ストイックにラグビーに取り組む、清水建設江東ブルーシャークスの立川直道選手

3月29日(土)、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)はホストゲームでレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)と対戦する。チームは現在2連敗中。前節では首位を走る豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)に28対75で大敗を喫した。それだけに、今節は結果を残し、上昇気流に乗りたい。

そんな中、ひと際強い決意を胸に秘める男がいる。立川直道──日本ラグビー界でも一目置かれるベテランフッカーだ。今季は常にスタメン入りしていた立川だったが、前節のS愛知戦ではメンバー入りしなかった。そんな彼の胸には、ある引っ掛かりがあった。

前々節の花園近鉄ライナーズ戦。立川は体の痛みを抱え、十分な練習を積めないまま試合当日を迎えていた。チームにコントロールしてもらい、走るトレーニングはバイクへと切り替え、スクラムなどのコンタクト練習も回避。試合本番でのパフォーマンスを最優先に準備を進めた。これまでこうした調整をすることはなかったが、全力で試合に臨むためだった。

試合での動き自体は悪くなかった。だが、前半30分でひざを痛めてしまう。テーピングで補強しながらプレーを続行したが、結果は敗北。悔しさが募った。

「思い返すと、なんかすごくダメだったなって思ったんです。ひざを痛めてしまって、そこで怖さが出て、弱い自分が出たなって思いました」。そう語る立川はその後、自身を見つめ直して気付いた。「痛いとか、試合当日にパフォーマンスを出すためとか、僕はいろいろな理由をつけて、ちょっと『ラクな選択』をしていたんですよ。今季ずっとスタメンで出ていてうまくいっていたから、この試合もうまくこなすために」

その甘さを払拭すべく、立川は1週間、自分を鍛え直した。ひざを補強するトレーニング、体力に追い込みを掛けるバイクメニュー。己と向き合い、しっかり準備を整えた。そして、次の試合へ向け「自信をもっていける状態になっている」。

そんな立川に、あるとき尋ねたことがある。「すごいと思うラグビープレーヤーって、どんな人ですか?」。ラグビー歴30年以上のベテランが思う「すごい選手」とはどんな存在なのか、興味が湧いた。すると、立川は迷うことなく答えた。「いつも同じ顔でラグビーをする人」だと。

楽しいとき、調子が良いときはもちろん、つらいときや思うようにいかないときも、「いつもと同じ顔」でプレーする選手。そんな選手に、立川はすごみを感じるという。

その日も、立川は強度の高い練習に臨んでいた。試合から逆算して、火曜日は最も強度の高いフルコンタクト練習になることが多い。しかし、いつもと変わらず声を張り、いつもと変わらずチームを鼓舞し、いつもと変わらず激しくぶつかり合った。そして、いつもと同じ顔だった。

次のRH大阪戦は、立川にとっての公式戦100試合出場の節目だ。しかしきっと試合の当日も、いつもと同じ顔でラグビーをしているだろう。準備をしてきたことが出し切れたとしても、コンディションが万全でなくても、どんな状況でも、きっと「いつも同じ顔」で。今までも、そしてこれからもそうであるように。

(奥田明日美)

2025.03.27[RH大阪]成長のために勇気ある決断。アイルランドから来た好漢が日本で築く絆

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第10節
2025年3月29日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs レッドハリケーンズ大阪

レッドハリケーンズ大阪(D2)

今節もNo.8で先発するレッドハリケーンズ大阪のジャック・オーサリバン選手

3月は4連戦となっていたレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)。3試合連続で、今節もナンバーエイトの先発にはジャック・オーサリバンが入る。第5節と第6節は負傷で出場できなかったが、今季のニューカマーは開幕戦からずっとチームに貢献している。

オーサリバンは、アイルランドのコーク出身。2018年にはU20アイルランド代表に参加し、2019年から昨季までは、子供のころからずっと見ていたマンスターでプレーした。さらなる成長を求めたときに環境の変化が必要だと感じたというが、マンスターをとても愛していたのだろう。国内で環境を変えると「ライバルチームでプレーすることになる」ので、「いろいろな人からとても良い環境だと聞いていた」日本でのプレーを決めた。

同じアイルランド出身選手からの助言もあったという。ジャパンラグビー トップリーグ2020シーズンではパナソニック ワイルドナイツでプレー。その後、一旦は母国に帰国したが、今季から再び日本に戻ってきてクリタウォーターガッシュ昭島に加入したハリソン・ブリューワーだ。RH大阪(当時はNTTドコモレッドハリケーンズ)でも、ジャパンラグビー トップチャレンジリーグ2018-2019シーズンにプレーした。「彼からRH大阪はとても良いチームだということを聞いていた」こと、RH大阪がちょうどサードローの選手を探していたことで、加入に至っている。

姉はすでに実家を出ていたが、両親と妹と弟がいるにぎやかな家庭だった。日本までアイルランドからは、乗り継ぎ便を利用して15時間ほど掛かる。時差も9時間。初めて一人暮らしをするには、かなり勇気ある決断だ。それだけ成長したい意志も強かった。

すっかりチームに馴染み、グラウンド外でもほかの選手たちと楽しそうにしている様子もある。アイルランドに比べればサイズの小さい選手が多い日本のラグビーをよく学び、順応している。冗談交じりではあるが「いずれヤニー(矢野樹)のように低く突き刺さるようなタックルもするかもしれないですよ」と話すほど、日本での新鮮な刺激から学んで成長していくことを楽しんでいるようだ。

変化した環境の下、充実したシーズンを送っている。「みんなと一緒にラグビーをする時間を過ごし、時には冗談を交わしながら、1週間1週間を積み上げていく。その中で築く絆が、ラグビーを楽しめるものにしてくれる」と語っていた。シーズンの残り半分も引き続き、アイルランドで鍛えたフィジカルを生かし、絆を築いたチームにエナジーを与えていく。

(前田カオリ)

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