2025.05.09[日野RD]100キャップに到達する堀江恭佑、引退を決めたキャプテンの思いを胸に今季最終戦へ

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第14節
2025年5月10日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズ(D2)

出場すればトップリーグ・リーグワン通算100キャップとなる、日野レッドドルフィンズの堀江恭佑選手

ついにディビジョン2も最終節を迎える。現在6位の日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)は5月10日に5位の清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)とビジターゲームで対戦する。勝ち点差はわずかに『1』。この直接対決に勝ったチームがD2/D3入替戦をまぬがれてD2残留を確定できる。両者ともに絶対に負けられない、まさに最終節にして最も大事な“決戦”となった。苑田右二ヘッドコーチも「われわれがベストなゲームにするためには献身的に動き続けることがキーとなる。選手達が80分間一貫性をもって戦い続けられるか、の勝負になる」と土曜日の試合を見据えた。

その試合で記念すべきトップリーグ・リーグワン通算100キャップを記録するのが出場する堀江恭佑だ。

「100キャップもそうですけど、今季、ずっと一緒に切磋琢磨してきた選手たちとプレーできる最後の試合でもあるので。その選手たちのためにも、勝って最高の終わり方ができる“チャンス”だと思っている」と堀江は静かな口調で必勝を誓った。

2013年にヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)でトップリーグにデビューした堀江。19年に日野レッドドルフィンズに移籍してからも力強いプレースタイルは変わらず、ひたすらチームのために体を張って常に最前線に立ち、その背中でチームメートを引っ張り、鼓舞し続けてきた。

「昨季のD3でも開幕戦と最終節……、今季のD2でも江東BSとは開幕戦と最終節で対戦します。お互いにどういうラグビーをするかは分かっていると思うし、相手も負けられない試合になると思うので、“ラストのラスト、ワンプレーまで分からない試合”になるのではないか」と堀江は展望する。

では、その“決戦”をどうやって勝ち取るか?

「自分たちが今季、練習で積み上げてきたことを全員が信じてやり抜くこと。どちらのチームがやり抜けるかの勝負になるが、仲間を信じてラストのワンプレーまで必死に走ってそれを貫く」

堀江自身もすべてを出し尽くす覚悟でこの試合に臨む。

もう一つ、堀江にとって負けられない理由がある。長年ともに切磋琢磨し汗を流してきた笠原雄太キャプテンがこの試合を前に引退を発表したのだ。笠原キャプテンはジャージープレゼンテーションで試合用ユニフォームをメンバーに手渡し、熱い思いを後輩たちに託した。背番号6のジャージーを笠原キャプテンから渡された堀江もその気持ちをがっしりと受け止めた。

今シーズン限りでの引退を表明した笠原雄太キャプテン

「ヤマハでも一緒にプレーしていて、また日野RDでもともにプレーできることになって……。プライベートでも仲良くさせていただいている存在なので寂しくなると思います。でも、最終戦でも笠原さんはウォーターボーイとしてサポートしてくれると思うので、笠原キャプテンの思いも背負って戦い、しっかりと勝って笠原キャプテンを胴上げしたいです」

今週は『献身』という言葉をテーマにチームは練習を重ねてきた。その『献身』という言葉は笠原雄太キャプテン、そして堀江恭佑のプレースタイルであり生き様そのものに重なる。苑田ヘッドコーチがチームへの大いなるメッセージとして選んだ『献身』という言葉。堀江や笠原が背中で伝え続けてきたこの二文字を心の中心に据えて、日野RDの選手たちは今季最後の試合へと臨む。

(関谷智紀)

2025.05.09[江東BS]来季へと続くチームへ。ともに成長してきたプロップが贈る、最後のプレゼント

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第14節
2025年5月10日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 日野レッドドルフィンズ

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

引退を表明している清水建設江東ブルーシャークスの間藤郁也選手。「みんなで作り上げてきたこのチームを誇りに思います」

5月10日(土)、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)は、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)を江東区夢の島競技場に迎えて対戦する。両チームとも勝敗によってはD2/D3入替戦に回る可能性があり、最終節にして運命が分かれる大一番だ。

そんな中、江東BSは今季限りで現役を退く6選手を発表した。その一人が、8年間にわたりチームを支え続けた間藤郁也である。ラストマッチに向けた心境を尋ねると、「チームは来年も続くので、普段はあまり感じないですけど、今後にも関わる試合ということでプレッシャーを感じています。そして、この最後のタイミングで試合に出られることが、本当に幸せだと感じています」と話した。

江東BSに入団したのは、山梨学院大学在学中に行われた練習試合がきっかけだった。当時は主務だった現・仁木啓裕監督兼チームディレクターが、自ら車を運転して間藤を勧誘しに行ったという。「ディフェンスもしっかり行くし、良い選手だと思いました。チームの過渡期を支えてくれて、本当に頑張ってくれました」。その言葉は、8年間の貢献に対する確かな証だろう。

間藤がチームに加わった当初、江東BSの環境は決して恵まれたものではなかった。「グラウンドが半面しかなくて、とても驚きました。社会人チームですよ?!」と、笑いながら当時を振り返る。水しか出ない簡易シャワールームに、排水の悪い足元。食事は各自持参だった。そんな時代を、間藤は文句一つ言わず、プロップの位置で黙々とプレーで支え続けてきた。

いまでは立派なクラブハウスが建ち、人工芝の全面グラウンド、栄養士が作るビュッフェ形式の食事と、環境は大きく変わった。「リーグワンという舞台で、これだけフルタイムで働きながらD2で“戦える”チームになってきたことはうれしいですし、みんなで作り上げてきたこのチームを誇りに思います。正直、まさかここまで来られるなんて、入社したときには思っていませんでした」。レッドハリケーンズ大阪に勝ち、花園近鉄ライナーズを下した今季の戦いを語る言葉には、チームとともに歩んできた実感と誇りがにじんでいる。

そんな間藤を支え続けてきたのは、家族の存在だ。高校時代に出会い、人生の半分以上をともにしてきた妻は、地元・新潟に戻らずに東京でラグビーを続けたいという決断を、快く理解してくれた。そして、現在4歳になる子供は、いまでも練習に行こうとする父に泣きながらすがりつくという。

「ラグビーがない生活はまだ想像できない」としながらも、「ひとまずゆっくりして、家族と一緒に過ごしたいですね」と穏やかに語る。

感情を前面に出すタイプではない。地道に、誠実に、与えられた仕事を黙々とこなす。その姿勢こそが、江東BSをここまで導いてきた。この最終戦で間藤がチームへ贈る『最後のプレゼント』は、きっと特別な何かではなく、いつも通りのプレーだ。やるべきことをやる。それが、彼が選び続けたラグビーの美しさであり、信念なのだ。

「この8年間所属できたというのは、僕の人生の誇りですし、引退した後も『こんなすごいチームにいたんだよ』と胸を張って言えるような、そんなチームにこれからもどんどん成長していってほしいです」

この男の、最後のスクラムを、目に焼きつけたい。

(奥田明日美)

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