2025.03.28[LR福岡]開幕10連敗も確実に見える成長の兆し。キャプテンの背中を追い、チームは一つになる

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第12節
2025年3月30日(日)12:00 久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県)
ルリーロ福岡 vs 中国電力レッドレグリオンズ

ルリーロ福岡(D3)

ルリーロ福岡の三股久典キャプテン。「本当の意味で“ワンチーム”になれたとき、このチームはもっと強くなれる」

「1試合1試合を大切に戦いたい」。三股久典の言葉には、静かながらも揺るぎない覚悟が感じられた。リーグワン参入1年目は開幕から10連敗。それでもルリーロ福岡(以下、LR福岡)はあきらめていない。その中心にいるのが、キャプテンの三股だ。

今節の相手は中国電力レッドレグリオンズ。これまで公式戦では一度も勝てていないが、今季開幕前のプレシーズンマッチでは1点差で勝利している。「ターゲットとして、全員でフォーカスして勝ちにいきたい」と三股は力を込める。過去の接戦で手ごたえを感じた相手だからこそ、雪辱への思いは強い。チーム全員が“やれる”という実感を共有している。

今季新たに構成されたバックス陣も、試合を重ねるごとに連係を深めている。三股自身も「プレー中の意図が伝わりやすくなったし、練習中のコミュニケーションも増えている」と手ごたえを感じている。ただ、チームはまだ発展途上。72名の大所帯の中で、選手たちはポジション争いに奮闘しながら、自分の役割を全うしている。多くの選手がいるからこそ、全員の意識を同じ方向に向ける難しさもあるのだ。

「先週の練習では雰囲気が悪くて、ちょっとした衝突もあった」。三股はそう振り返るが、それは“意見のぶつかり合い”という健全なプロセスだ。「本当の意味で“ワンチーム”になれたとき、このチームはもっと強くなれる」と三股は確信している。その言葉には、キャプテンとして仲間を信じ続ける熱意がにじんでいた。

豊田将万ヘッドコーチも、三股の存在を高く評価している。「ハードワークできる選手を選びたい」という選手選考基準には、単なる運動量の多さだけではなく、相手と向き合う姿勢、試合の流れを読む知性、そして仲間を鼓舞するリーダーシップが求められている。三股はまさにその象徴だ。ピッチ内外で「勝つために何が必要か」を自ら考え続けている。

今節のポイントは、技術でも戦術でもない。「これまで積み上げてきた小さな成長をチーム全体で出し切ること」。三股の言葉どおり、それを80分間、すべてピッチにぶつけられるかどうかが、勝敗を分ける。

LR福岡は、まだ「挑戦者」かもしれない。しかし、確実に成長の兆しが見え始めている。三股の背中を追い、チームは1勝を目指して走り続ける。信じる気持ちがチームを一つにしている。

(柚野真也)

2025.03.28[中国RR]今日も今日とてラグビーができる幸せをかみ締めて。二人は試合開始の合図を待つ

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第12節
2025年3月30日(日)12:00 久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県)
ルリーロ福岡 vs 中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズ(D3)

中国電力レッドレグリオンズの森山皓太選手(左)、浅井佑輝選手

ラグビーができるのは幸せなことだ。

中国電力レッドレグリオンズの森山皓太は3月8日の狭山セコムラガッツ戦で首を負傷し、交代を余儀なくされた。上半身の左側にまったく力が入らず、最悪の事態が頭に浮かんでベンチで大泣きした。

「もうラグビー人生が終わったと思いました。大事なものがなくなった感覚で、何も身が入らなくて、初めてラグビーを見るのすらイヤになりました」

引退も覚悟して病院に行ったが、検査の結果は大事に至らなかった。「医師から『ラグビーをやっていいよ』と言われて、またチームのために体を張れると思うとうれしかった」。日に日に回復して笑顔も戻った森山皓太は、3月30日のルリーロ福岡戦でスタメン入りし、戦線復帰する。

「僕にとってラグビーは人生そのもの。まずは自分の持ち味であるタックルでチームを勝たせられるように頑張りたい。ラグビーが大好きな思いを前面に出してプレーしたいです」

同じく今節のスタメンに入った浅井佑輝もまたラグビーができない時期があった。2023年の夏に突然、脊髄の炎症で約2週間入院。体が痺れて思うように動けず、退院後も車椅子で過ごし、ラグビーはおろか日常生活を送ることも難しかった。原因不明だったため、「ラグビーができるのか、今までの生活に戻れるのか、不安はかなりありました」。

それでも徐々に回復して約3カ月後には練習試合で20分プレーし、「ラグビーができて楽しかったし、できるだけ長くみんなとラグビーがしたいと思いました」とうれしい実戦復帰を果たしていた。そして、昨季も9試合に出場し、完全復活を遂げた。

今季はけがやポジション争いの影響で出場機会が少なかったが、長いシーズンの中で必ずチャンスがくると信じて常に準備をしてきた。今節は今季初のスタメン入り。浅井は、「こうやって普通にラグビーができていることが幸せだし、どういう立ち位置でもこのチームに長く携わって一つでも力になりたい」と仲間のために戦う。

森山も浅井も30歳を超えて、「いつまでラグビーができるか分からない」と先のことがどうしても気に掛かる。だからこそ、目の前の戦いに思いっきりぶつかっていく。ラグビーができる幸せをかみ締めながら、二人は試合開始の合図を待つ。

(湊昂大)

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