2025.05.16[東京SG]“シンプルで分かりやすい言葉”が、下剋上達成のキーワードになる

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
プレーオフトーナメント準々決勝
2025年5月18日(日)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアス

コミュニケーションについて堀越康介キャプテン(写真左)は「シンプルで分かりやすい、力強い言葉を選ぶ」、松島幸太朗選手(写真右)は「大事なのは、シンプルなコミュニケーション」

6位からの下剋上へ。5月18日のプレーオフトーナメント準々決勝、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)は、東大阪市花園ラグビー場でレギュラーシーズン3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と激突する。

リーグワン創設以来、4季連続でプレーオフトーナメントの舞台にたどり着いた東京SG。だが、過去もっとも険しい道のりだったのは間違いない。開幕4戦勝ち星なしから始まり、プレーオフトーナメント出場圏の6位にもなかなかたどり着けない日々が続いた。ただ、その苦しい序盤戦を乗り越えてきたからこそ、チーム力はより高まってきた自負がある。出場メンバー23人で同じ絵を見るため、これまで以上にコミュニケーションに意識を向けてきた。

誰よりも仲間に檄を飛ばすため、練習後は喉が枯れていることもあるキャプテンの堀越康介は、チームのコミュニケーションのあり方をこう語る。

「シンプルで分かりやすい声をリーダーとしては意識しています。ここからの戦いはプレッシャーの掛かる場面ばかり。試合中にあれこれ言っても仕方ないので、その場、その場に合ったシンプルで分かりやすい、力強い言葉を選ぶ。『この場面になったらこのワード』という形で同じ絵を見ることができるように。そのコミュニケーションレベルは1試合ずつ上がってきたと思っています」

チームの精神的支柱の一人、松島幸太朗も「シンプルな言葉」の大切さを掲げる。

「まずはチームの雰囲気作り、自分たちがしっかり勝てるようなストーリーを作っていきたい。そのためにも大事なのは、シンプルなコミュニケーション。練習でもどんどん声が出るようになってきましたが、ただ声を出せばいい、ということではなく、少ない時間の中で、より明確なコミュニケーションを心がける。そこからモメンタムを作っていきたい」

小野晃征ヘッドコーチも、特にリーダー陣の声がけに期待する。

「チームの背骨の選手、2・4・8・9・10・15番という経験に裏打ちされたポジションの選手はしっかりリードしてほしい。言葉にすることで自分の行動にもつながり、そのキーの選手が自分のプレーだけではなく、周りを動かせるようなコミュニケーションが取れたら、チーム全体のパフォーマンスアップにもつながります」

東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ

今季のS東京ベイとの対戦成績は1分1敗。ただ、1カ月前の前回対戦では10対30のスコアで完敗を喫した。あの敗戦も踏まえ、何を上積みして臨むのか。ファンが欲しいのは、試合後の選手たちから歓喜の言葉があふれることだ。

(オグマナオト)

2025.05.16[S東京ベイ]帰ってきたマルコム・マークスは戦う。「第二の故郷」であり“もう一つの家族”のために

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
プレーオフトーナメント準々決勝
2025年5月18日(日)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs 東京サントリーサンゴリアス

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

フッカーとしてフォワードの要となっている、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのマルコム・マークス選手

5月11日、母の日。

ちょっと野暮な質問かなと思いつつ「何か贈り物はしましたか?」と聞いてみると、母親想いとして知られる彼は、柔らかい優しさを感じさせるトーンでこう答えた。

「ビューティー系のギフトセットと、『お母さんありがとう』のメッセージを添えた花束です」

「私も見習わないと」と返すと、「あなたもそうするべきですよ!」と笑いながらもどこか真剣に、そんなひと言を残した。

ラグビーワールドカップ2023フランス大会で負傷したマルコム・マークスは、昨季、母国・南アフリカからクボタスピアーズ・船橋・東京ベイの戦いを見つめていた。チームは6位と低迷。画面の中にあったのは、苦戦の渦の中でもがく、仲間たちの姿だった。

「それについて私が何かを言うのは難しいです。傍観者の立場から、あのとき何が起きていたかを推測するのは簡単かもしれません。でも、起きたことは起きたことですし、もう過去のことです。いまはプレーオフトーナメントという次の舞台に向けて、集中しています」

世界最高峰フッカーと呼ばれる彼がオレンジのジャージーに袖をとおすようになり、今年で5年の月日を数える。マークスにとって、スピアーズは「第二の故郷」であり、昨季は戦線から離れていたものの、「初日から温かく迎え入れてくれる、家族のようなクラブ」だと話す。

在籍したこの5年の間に、チームはアタック、ディフェンス、セットピースと、あらゆる面で着実にレベルアップを遂げているという。「そうした小さな成長の積み重ねが、大きな成功につながっている」。彼はそう、分析する。

次なる戦いはプレーオフトーナメント準々決勝の東京サントリーサンゴリアス戦。タフでハードな試合になることは想像に難くない。一発勝負のトーナメント。敗れればそこですべてが終わる非日常的な空間で、「チャレンジをどれだけ楽しめるか。そして自分たちのベストを尽くせるか」。そのための準備は、決して怠らない。

チームにとっては2シーズンぶりのプレーオフトーナメント進出となる。今季、好調な理由について話を向けると、「2023年と2024年、2025年と状況が大きく異なっているので、一つだけを特定するのは難しい」と前置きした上で、思いをそっと語った。

「全体がうまく機能していること、共通の目標に向かって努力していること、そしてみんながベストを尽くしていることだと思います。クラブ、家族、サポーターのために誇りをもってプレーし、全力を尽くすことが大切なのです」

丁寧に言葉をチョイスしながら、質問に真摯に対応するその姿勢からは、プロアスリートとしての意識の高さが静かに伝わってくる。その強さの根源にあるのは他者への思いやりと、視線を落とさず前を向き続ける揺るぎない意志。マークスはこの週末、仲間とともに“もう一つの家族”のために戦う。

(藤本かずまさ)

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