2025.05.29[SA広島]自分たちのラグビーをやり切る。それが『充実』を『最高』に昇華させる最後のミッション

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
D2/D3入替戦[D2 8位 vs D3 1位]第2戦
2025年5月31日(土)12:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
マツダスカイアクティブズ広島 vs 日本製鉄釜石シーウェイブス

マツダスカイアクティブズ広島(D3)

3人いるリーダーのひとり、1番で先発する加藤滉紫選手。「昇格してめっちゃハッピーなシーズンにしたい」

D2/D3入替戦の第1戦。いわぎんスタジアムでマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)は19点差の敗戦を喫した。特に前半は相手の迫力に押される格好となったが、決して太刀打ちできない相手ではないという実感も残った80分間だった。

加藤滉紫は言う。

「めっちゃ相手のフィジカルが強かったです。でも、セットピースは自分たちのミスもあったので、そこは修正できると思っています。スクラムはやれている感じがあったので第2戦はそこで覆していかないといけない。あとは自分たちがペナルティをしていたり、自分たちが規律を守れていなかったりしたので、相手どうこうではなく自分たちが規律をしっかりと守っていきたい」

亀井康平も自分たちに目を向けていた。

「僕自身もチームとしても、もっとやれたなと思っていて、自分たちのラグビーができなかったという印象です。前半は風下で追い掛ける展開になった中でも自分たちが平常心を保てれば良かったですけど、やっぱり焦りもあったし、早くスコアしたい気持ちが先走ってしまいました」

第2戦に向けた1週間、SA広島は自分たちのラグビーをすることにフォーカスしてきた。SA広島がディビジョン2に昇格するためには、第2戦の勝利が必要なのはもちろん、20点差以上で勝利するか、8点差以上かつ3トライ差以上の勝利でボーナスポイント付きの勝利を得たい。

自分たちで仕掛けて先手を取っていく試合運びができるかどうかが最重要になるが、それは今季にSA広島が実践してきたラグビーである。

今季、リーダーの一人に選ばれた加藤は、「昨季も良いところまでいったけど、最後に負けて入替戦に進めなかった。みんなが何かを変えないといけないと思って、全員で変わろうとした良いオフシーズンを過ごせたことが大きかった」と振り返り、「個人としてもチームとしても得られたものは大きいシーズンだったけど、最後に勝たないと(意味がない)。昇格してめっちゃハッピーなシーズンにしたい」と決意をあらためている。

亀井はシーズン序盤に面白いようにトライを取っていくチームの中で躍動し、「僕は最後にトライを取らせてもらっている感じですけど、いいラグビーをできているなと思います。仕掛けるプレーも多いので、やっている自分たちも楽しいラグビーができている」と顔をほころばせていた。今季がとても充実していたからこそ、「最後もいい形で終わりたい」という思いは強い。

自分たちが今季やってきたラグビーをやり切れれば、D2昇格を果たすことはできるはずだ。

(寺田弘幸)

11番で先発する亀井康平選手。「いいラグビーをできているなと思います。仕掛けるプレーも多いので、やっている自分たちも楽しいラグビーができている」

2025.05.29[釜石SW] 15年分の思いとともに。クラブと東北のラグビーの未来につながる80分が、いまはじまる

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
D2/D3入替戦[D2 8位 vs D3 1位]第2戦
2025年5月31日(土)12:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
マツダスカイアクティブズ広島 vs 日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

日本製鉄釜石シーウェイブスからの退任が発表された須田康夫ヘッドコーチ。東北ラグビーのために、子供たちのために、「釜石SWがインパクトを与える存在でいなければならない」

両チームの未来を決めるD2/D3入替戦第2戦。この試合を最後に、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)という“一家の長”が退任する。須田康夫ヘッドコーチは2010年に釜石シーウェイブスRFC(当時)に加入。現役引退後、母校である仙台育英高校のコーチを経て、2020年にフォワードコーチとしてクラブに戻ると、翌年からはヘッドコーチに就任。足掛け15年、釜石SWに魂を捧げ続けてきた。

「『このクラブにすべてを捧げよう』。そう誓ったのは震災直後に行ったヤマハ発動機ジュビロ(現在の静岡ブルーレヴズ)との練習試合でした」

ラグビーなんてやっている場合じゃない。そんな状況にもかかわらず、会場には2,000人以上が詰め掛け声援を送る。この得も言われぬ光景が揺るぎない決意の原点となった。

もう一つ、須田ヘッドコーチには確固たる信念がある。それは「東北のラグビーの可能性を高める」ことだ。自身も宮城県の出身であり、生まれ育った地のラグビーは紛れもないルーツとなっている。「東北の子供たちには大きな可能性がある。彼らが上を目指すために、釜石SWがインパクトを与える存在でいなければならない」。言葉に熱がこもる須田ヘッドコーチはクラブの存在意義を説く。

「ヤスさん(須田ヘッドコーチ)がディビジョン2で勝つ、競り合えるところまでチームを押し上げてくれた」(サム・ヘンウッド)という言葉どおり、釜石SWの競争力はこの4年間で格段に増した。今季も結果には結び付かなかったが、チームには公式記録やスコアからは読み解くことのできない、確かな強さが宿っている。

「一番はカルチャー。就任当初は個人練習をする選手はいませんでしたが、取り組む意識の部分はずっと選手に言い続けてきて、いまはほとんどが個人練習をするようになりましたし、成長につながっています。そういったプロセスがないと選手として成長はないですし、チームとしても同じです」

昨季まではなかなか太刀打ちできない試合もあったが、今季はクロスゲームやあと一歩で勝利に届くという試合が多くなった。その背景にある文化の構築と積み重ねは、クラブとして一つ先のフェーズに進めたファクターでもある。上位チーム相手でも十分に戦える土台を築き上げたこと。これが4年間の結晶であり、須田ヘッドコーチの大きな功績でもあるだろう。

D2で戦い続けてきたことはクラブの大きなレガシーであり、今後もその座を譲る気は一切ない。第1戦は19点差での勝利となったが「すぐにひっくり返されるスコア。第1戦の内容には危機感をもっています」と、アドバンテージはないものとし、イーブンな状態からの一発勝負で勝ち切る。そのために第1戦同様、自分たちにフォーカスして試合に臨む。

築き上げてきた土台を第2戦でも体現し、クラブの未来、東北のラグビーの未来につなげる。須田ヘッドコーチのラストゲームが、まもなくキックオフのときを迎える。

(髙橋拓磨)

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