NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第2節
2025年12月21日(日)14:30 ヤンマースタジアム長居 (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 vs 豊田自動織機シャトルズ愛知
レッドハリケーンズ大阪(D2)
落語一つとってみても、噺の大筋は同じでも、江戸では粋なところに落とし込むが、上方ではバイタリティーにあふれた物語を紡ぎ出す。上方文化が根付く大阪には、ネガティブなことも開き直って笑い飛ばせるような、クレバーなたくましさがある。それこそが活気ある街の屋台骨と言えよう。
しかしながら、大阪人がみんなそろってしゃべりが達者だと捉えるのは、少し偏った見方だ。大阪人でも、しゃべることを不得手だと感じる者もいる。島田久満も、そのタイプだった。
3シーズン前の開幕前、前キャプテンの杉下暢が「必ず活躍する」注目選手として挙げた島田に話を聞いた際、表情はかなり強張っていた。それでも、さすが大阪人。「こういう経験がなかったので、どう話せばいいか分からない」と、大きく笑い声を上げてもいた。
話すからにはうまく話さなければいけないと思っていたところもあったのかもしれない。区民アンバサダーでの務めや試合後に人前で話す機会が増えたことで、臆することなく言葉が出てくるようになった。苦手意識のあったものに向き合い、随分成長したものだ。いまではチームメートの良さを自ら伝えてくるようにもなっている。
今季はキャプテンに就任した。昨季バイスキャプテンだった島田には、中学のラグビー部と大阪選抜、大学でのバイスキャプテン経験しかない。それでも「キャプテンとしてのプレッシャーは感じていない」という。ベテランも若手も、社員選手も外国籍選手も、みんなが気づいたことを話してくれるという信頼があるからだ。
とはいえ、悩みがなかったわけではない。就任当初は、「杉さん(杉下)は、話すこともすごいし、ゲームでも頼りになる。そんなふうになっていかないと」と考えていた。「でも、功さん(松川功ヘッドコーチ)もきっと自分のことを分かった上でキャプテンに指名してくれたのだと思うし、仮面をかぶってもうまくいかないだろう」と思い直した。日々の成長は志すが、自らを飾りはしない。「みんなを巻き込んでいく」キャプテンとして、生まれ育った活気ある街に相応しい「活気あるゲームを見せたい」。それが生粋のなにわっ子である島田の目標だ。
粛々と上がるホストタウンの赤い緞帳。袖幕の内にも、いつもの音楽と観客席からの拍手が聞こえる。簡単でないことは、分かっている。けれど、たとえ何かあったとしても、これまでと同じように仲間がサポートしてくれるだろう。積み上げてきたものを信じ、舞台に上がる覚悟は決めた。
さあ、出番だ。大阪の街の人たちに“おもろいやん”と言わせにいこう。
(前田カオリ)



























