2025.12.20[日野RD]“家族のような絆”で日々成長。持ち味発揮で手繰り寄せる初勝利

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第2節
2025年12月21日(日)13:05 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズ(D2)

日本製鉄釜石シーウェイブスとの試合に向け、苑田ヘッドコーチからパスに関してコーチングを受ける日野レッドドルフィンズの金昂平選手

金昂平がそのプレーでチームに今季初勝利を手繰り寄せる。開幕戦でフルバックの先発メンバーに抜擢された若手の成長株。第2節の日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)戦でも2試合続けて先発メンバーに選ばれたことは、チームからの期待の表れだ。リーグワン2キャップ目となる日曜日の試合では「ぜひトライも奪いたい」とチームを今季初勝利に導く決意だ。

金は今年2月に明治大学からアーリーエントリーで日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)に入団。そこからトレーニングを重ね、体重も昨季より4~5kg増やし現在は90kg弱にパワーアップ。そうやって相手に当たり負けない体を作ってきたつもりだったが、リーグワンでのデビューはどうだったのか。

「やはりフィジカルの強さは大学のときと比べて強かったです」と金はその点について素直に認める。一方で、自身のプレーが通用するところも多く実感したという。

「僕の持ち味だと思っているアタックでのスピード、ボールキャリーの部分は通用すると感じましたし、磨いていきます」ときっぱり。開幕先発を告げられたときも「最初はびっくりしましたが、うれしかったですし、試合が近づくにつれてワクワクしかなかった」という。開幕戦では「カウントダウンの数字が進むごとに『リーグワンの試合開始はこういう雰囲気なんだ』と気持ちが入っていった」。ハートの強さも金の大きな武器だ。

「相手との間合いについては改善していきたいですが、そういった点もチームの先輩たちから話しかけてくれて、いろいろと学ばせてもらっています。日野RDはそういった家族のような絆があるチームで、結束が強くて本当に入団して良かったと思っています」

試合まであと2日に迫った全体練習後には、言葉を交わしながらじっくりと時間をかけ苑田右二ヘッドコーチと何度も何度もパスを交換する金の姿があった。

「僕だけ見ていただいているわけではないと思うのですが」と前置きしつつも金は「苑田ヘッドコーチから声を掛けていただいて、ボールを手放すタイミングやフォロースルーといった投げ方の基本の部分からあらためて確認しました。苑田ヘッドコーチからも『自分らしいプレーでチームに勢いをつけてもらいたい』と言われました」。

スピードと切れ味あふれるボールキャリーには定評がある。「声援も力にして、持ち味であるアタック全般でチームの勝利に貢献したい」。釜石鵜住居復興スタジアムでどんな驚きを彼がもたらしてくれるか、楽しみでならない。

(関谷智紀)

2025.12.20[釜石SW]“数字は追わない”。母校の誇りを胸に、淡々と、誠実に

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第2節
2025年12月21日(日)13:05 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 日野レッドドルフィンズ

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

福井県立若狭東高校出身、日本製鉄釜石シーウェイブスの伊藤大輝選手

「試合の前の週に言われたときだけ、ちょっと意識しました」

前節、リーグワンでの50キャップを達成した伊藤大輝は、少し照れたように笑った。節目の試合にも、特別な感情はもち込まない。「意識すると固くなっちゃうので」。その一言が、彼の人柄をよく表している。

リーグワン初出場は2022シーズンの開幕戦。三重ホンダヒート戦だった。

「正直、覚えていないですね(笑)。それくらい必死でした。自分がどれくらい通用するのかも分からなかったし、チームの立ち位置も分からなかった」

それでも、スクラムを組んだ瞬間、感触は悪くなかった。

「フィジカルも、セットピースも、『意外といけるな』と思えたんです」

手ごたえを感じたスタートから約4年。気づけば50試合が積み上がっていた。

一番印象に残っている試合を問うと、少し間を置いて伊藤は口を開いた。

「2022シーズンの日野レッドドルフィンズ戦ですね。順位決定戦で勝利して残留を決めた試合です」

名門相手にけが人が出る苦しい展開。それでもチームは不思議なほどまとまっていた。

「勝ったことがなかった相手だったので。あの一体感は、いまでも忘れられないです」

負ければ降格という土壇場での価値ある1勝は伊藤の胸に深く刻み込まれた。

昨季は接戦で敗れる試合が多く、“惜しい試合からの脱却”を期した今季の開幕戦。勝利こそならなかったが、内容は収穫十分で、特にラインアウト成功率は驚異的だった。10本以上を投げてミスはわずかに1本。伊藤自身はスローワーとしてノーミスを記録した。

「チームで“GOLD STANDARD”という言葉を掲げて、一つひとつのやるべきことを、高い質を伴ってプレーすることにこだわっています。ラインアウトに関してもよりシンプルなマインドで、決めたところに投げ切る。それがうまくいった試合でした」

その“割り切り”は、経験が教えてくれたものでもある。ベテランの域に差し掛かってきた31歳は、スクラムでは真ん中に立ち、若手とも熱心にコミュニケーションを交わす。

「若手の成長には頼もしいなと思いますし、刺激し合うことで良いチームに成長していきたいと思います」

そう笑顔を見せる伊藤が「特に最近強く感じ始めている」のが、地元、そして母校である福井県立若狭東高校の代表としての誇りだ。同校出身者でリーグワンに所属する選手は、彼とマツダスカイアクティブズ広島の富田凌仁の二人となった。

「自分のように高卒でもリーグワンで試合に出られる。その姿を後輩たちに見せたいです。彼らがリーグワンを目指すきっかけになったり、勇気をもってもらえたりしたらうれしいじゃないですか」

だから今日も、淡々と、誠実にプレーする。数字は追わない。ただ、やるべきことにフォーカスする。

「ラグビー、やっぱり好きなんですよね」

その言葉に、伊藤大輝のすべてが詰まっている。

(髙橋拓磨)

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