2026.03.12[S愛知]小さな努力を積み重ね、今季初出場へ。勝利への近道を知る男はただの代役にあらず

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第8節
2026年3月14日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

豊田自動織機シャトルズ愛知の戸野部謙選手。「もらったチャンスをモノにできるように、いつもどおりやるだけです」

前半戦を5勝2敗、勝ち点25で折り返し、今週末から勝負の後半戦に向かう豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)。目の前の一戦に全力を尽くし、成長しながら勝ち点を積み上げていきたい。

13番で先発出場を予定している戸野部謙にとって、今節は今季初出場の舞台。前節にけがで交替した市川敬太に代わっての出場となるが、徳野洋一ヘッドコーチは戸野部について「市川の控えという立場で、代わりに出てくる選手ではない」とキッパリ。「いつでもメンバーに選ばれる立場でしたし、実力でジャージーを奪い取ったと思っています」と続ける。

「もらったチャンスをモノにできるように、いつもどおりやるだけです」と戸野部。今季はS愛知のノンメンバー組をまとめるキャプテンとして、練習中にもリーダーシップを発揮してきた。「今までそういった立場になることはなかったので、心配な部分もありました。『何か発言しないと』という気持ちでいましたが、逆にそれがチームのことを考えることにつながって、いろいろと得るものがありました」。

「周りを見る力がついたと思います」と自信をもって話す戸野部。「お手本しかいない」チームメートにも支えられ、アピールを続けてきた。どのような部分をアピールしていたのか問うと、「難しいことはしていないです。自分のプレーを見せて、どうチームに貢献していくかを意識していました」との答え。試合に出られないことへの焦りや、激しい競争に対する気負いはなかったという。

小さな努力の積み重ねが、戸野部をメンバー入りまで押し上げた。「試合中は、練習でやってきたものがうまく出せないことだらけだと思います。そのときにいかにコミュニケーションを取って対応していくかが大事だと思うので、『シンプル・イズ・ザ・ベスト』でやっていきたいです」。

派手なプレーや豪快な選択はいらない。小さな良いプレーを続けることが、勝利への近道だと戸野部は知っている。「チームを助けられる存在になれたらいいなと思います」。ただの代役ではないことを、グラウンドで証明する。

(齋藤弦)

2026.03.12[江東BS]ダサい自分から抜け出し、テーピングを巻く日々。泰然自若の37歳が歩み続けるラグビー道

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第8節
2026年3月14日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス vs 豊田自動織機シャトルズ愛知

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

清水建設江東ブルーシャークスの立川直道選手。今節は16番でリザーブからゲームを支える

「次に大けがをしたら、もう僕は引退なんで。そのときに、誰かに負い目を感じさせたくないんですよ」

そう言って、立川直道は足に細かく張り巡らされたテーピングを外していた。前回の豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)とのビジターゲーム後のことだ。筋肉や関節を一つひとつカバーするテープの量と、その細かさに驚いて声を掛けると、「自ら巻いている」ことを教えてくれたのだ。そして、その理由にもまたこの男らしさがにじみ出ていた。

「極端な話ね、例えば自分がトレーナーで、選手の足のテーピングを巻いたとするじゃないですか。それで、その選手がその足をけがしてしまったら、『自分のせいなのかな』ってめっちゃ気にすると思うんですよ」。だから立川は、自分で巻くことにした。「自分が引退するときに、そういう気持ちを誰にも感じさせたくないんです」。

2018年、立川は当時所属していたクボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)でラグビーキャリア最大の大けがを負った。シーズン開幕直前の大切な時期でもあった。「めちゃくちゃ人のせいにしたんですよね」。OKを出したドクターの診断と、不安を感じていた自分の感覚。その食い違いを抱えたまま出場し、結果としてけがを負った。しかし、その後、「ダサいと思って」立川は考え方を変え、今度は自分に矢印を向けてラグビーを続けるための努力をした。いまでは、「もちろんドクターは信頼していますけど、結局自分の体は自分の体だし、自分で責任を取るというところを意識しています」。そこから復帰の過程で学んだケアやテーピングの方法が、37歳のいまも現役を続けるための軸になっている。

昨季はほとんどの試合に出場し、チームを支えてきた立川。だが今季はここまで4試合の出場にとどまっている。それでも、本人はいつもと同じ顔だ。「実際こうやって休んでも、昨季だったらチームに対してすごく不安な気持ちがあったんですよ。(田森)海音が出るとか、ヤス(山本泰之)が出るとか、チームを案ずるところはあったんです。でもいまは、全然僕が出なくても彼らがしっかり、なんなら僕以上に仕事してくれているんで頼もしいですね」。若手の台頭により、自分自身のコンディションとプレーに、より集中できるようになった。

次のS愛知戦では久しぶりにリザーブメンバーとしての起用が見込まれている。

「後半最後の20分のセットピースというのは、チームとして重視しているところだと思う。この前のNECグリーンロケッツ東葛戦もそうなんですけど、ラスト20分ぐらいでラインアウトが乱れたり、スクラムが押されたりしたんです。そういう細かい部分を消したくて、僕は後半に使われるんじゃないかと思っています」

コーチや監督から、試合前後でフィードバックを受けることが少なくなった。「何か一言くらい欲しい」と冗談めかしてボヤくベテランだが、その実、しっかりと起用の意図を理解している。若手が育ち、頼もしくなった今季だが、まだまだベテランの経験は欠かせない。

「次に大けがをしたら、もう僕は引退なんで」。そう覚悟しながらも、何度でもけがを治し、ラグビーとともに道を歩む姿が見える気がする。

(奥田明日美)

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