NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第9節
2026年3月28日(土)12:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ vs 日本製鉄釜石シーウェイブス
日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)
シーズンの只中、未知の海へ舵を切った若武者がいる。
髙居海靖(かいせい)は第6節のレッドハリケーンズ大阪戦にキャリア初となるウイングで出場。加入後はフルバックを主戦場としてきた中での配置転換に、当初は「できるのか」という不安が先に立ち、オツコロ カトニ アシスタントコーチに「怖いです」と打ち明けたこともあった。それでも「やれないわけじゃないなら挑戦してみよう」という言葉に背中を押され、試合を重ねながら順応していった。
「ウイングは最後にボールを受けるポジション。つないでもらったボールを仕留める責任を強く感じます」
その言葉どおり、外側でプレーする責任と向き合い続けた。ボールを受ける一瞬に集約される判断と結果。その重圧を受け止めながら、3試合連続でウイングとして出場。左足のキックという持ち味も機能し始めた矢先、チーム事情も重なり、前節は急きょスタンドオフでの出場機会が回ってきた。高校時代にプレーしていたポジションとはいえ、試合2日前に告げられた大役。準備期間は限られる。前日は落ち着かず、どこかソワソワとした時間を過ごしたという。
「顔色が悪いぞ」と声を掛けられるほど、緊張は隠し切れなかった。しかし、そこで力を貸してくれたのがチームメートの存在だった。経験のある選手たちが役割を分解しタスクを整理。髙居の負担を軽減する。同期からの「やるしかないだろ」というシンプルな言葉もまた、背中を押した。
「全部を背負わなくていいと思えたことで、少しラクになりました」
グラウンドに立てば、次第に視界はクリアになっていく。プレーに集中する感覚を取り戻していった。
複数ポジションを経験したいま、髙居の中で確かに広がっているものがある。
「いろいろな視点を知ることは、ほかのポジションでも生かせる」
その実感が、プレーに厚みをもたらしている。
その上で、今季最も手ごたえを感じているのがウイングだ。実戦経験を積みながら、自身の強みをどう発揮するかが明確になってきた。
「左足のキックを軸に、自分なりのウイング像を作っていきたい」
スピードやフィニッシュだけではない。状況判断とキックで局面を変える、新しいタイプのウイング。その可能性を、自らのプレーで示そうとしている。
昨季を「手ごたえをつかんだ試合はあまり思い浮かばない」と振り返った。その言葉どおり、もがく時間のほうが長かった。だがいま、新たな役割の中で、確かな軸をつかみ始めている。
不安を抱え、時に揺れながら。それでも前を向き続けてきた。だからこそ、その先に広がる景色は海のように大きく、深い。
海図は、すでに胸の中にある。その視界を、自らの手で快晴へと変えていく。
(髙橋拓磨)



























