2026.04.02[S愛知]次は自分が“希望の存在”に。逆境を乗り越えた男が再び立つリーグワンの舞台

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第10節
2026年4月4日(土)12:00 いわぎんスタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

けがからの復帰の過程が思うようにならず、一時は引退も考えたという豊田自動織機シャトルズ愛知の佐藤慶選手(中央)

「逆境のときこそ、人格みたいなものが磨き上げられるのかなと思いました」

開幕戦以来のメンバー入りを果たした豊田自動織機シャトルズ愛知の佐藤慶はここ数シーズン、葛藤を抱えながら日々を過ごしてきた。

一昨季の終盤、左足首に違和感を抱えながらプレーを続け、シーズン終了後に手術を行った。その影響もあって、昨季は一年を棒に振った。当初はリハビリをこなしながらグラウンドに戻る予定だったが、なかなか思うように事が進まず、いつけがが治るのか、いつ練習に復帰できるかも分からなかった。

「引退するかもしれないです」

ある日、そうボソッとこぼしたこともあった。それほど、先が見えない現状に不安を募らせていた。

それでも、さまざまな人のサポートがあり、症状が劇的に回復。練習場に戻ってくることができた。これまで曇りがちだった佐藤の表情が、パッと晴れた瞬間だった。

チームメートの存在も支えになった。「特にジャマ(ジェームズ・ガスケル)には公私ともに助けてもらいました。ほかの選手たちにもグラウンドに戻って来られたときに『おかえり』と言ってもらえて、本当にうれしかったですし、支えてくれたすべての人に感謝しています」。

ただ、グラウンドに戻ってからも葛藤は続いた。開幕戦こそ出場を果たしたが、以降はメンバーから外れる。「正直、苦しむ時間が長かった」と振り返る。

そこでもまた、人に支えられた。特に「クリスチャン(・リアリーファノ)には頭が上がらないですね。ノンメンバーのみんなに声を掛けて、僕たちに居場所を作ってくれました。どういったマインドで過ごすべきか、すごく勉強になりました」

「人の痛みが分かるようになった」ことがこの長い期間をとおして、佐藤の得た財産の一つだ。

「(松岡)大河や(グレイトリー)献人など、若くして長期離脱している選手の気持ちが痛いほど分かります。できるだけ相談に乗ったり、サポートしたりしてあげたいですし、またノンメンバーのぶんまで、今週の試合で頑張りたいです」

逆境からはい上がり、人間としてひと回り大きくなった男が、再びリーグワンのグラウンドに戻ってくる。その姿がきっと、いままさに逆境に立ち向かうチームメートの希望となるはずだ。

(齋藤弦)

2026.04.02[釜石SW]ヘッドコーチの言葉が道標。遠回りに見えた道からつながったキャリアの転機

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第10節
2026年4月4日(土)12:00 いわぎんスタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 豊田自動織機シャトルズ愛知

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

ケフ ヘッドコーチとの面談を重ねるなかでプレーヤーとしての価値を高めてきている日本製鉄釜石シーウェイブスの髙橋泰地選手

今季、着実に評価を高めている髙橋泰地にとってのキャリアの転機。それはまさに“いま”にある。

「地元の茨城県日立市から秋田工業高校に進んだこと、ニュージーランドでプレーしたこと、思い返せばいろいろありますけど、やはりケフ(トウタイ・ケフ ヘッドコーチ)との出会いが一番大きいです」

今季ヘッドコーチに就任したトウタイ・ケフ ヘッドコーチは、オフから継続的に髙橋泰地と個人面談を重ねてきた。中でも強く印象に残っているのが、プレシーズンマッチ後に告げられた「存在感がなかった」という一言だ。

「さすがにショックは受けました。でも、何が足りないのかをハッキリ言ってもらえたことで、自分がやるべきことが見えました」

率直で厳しい指摘は、同時に明確な道標でもあった。「ここを伸ばせばいい」。具体的な改善点とともに示された基準は、髙橋泰地にとって進むべき方向を照らす指針となった。

それまでの2シーズン、リーグワンでの出場はわずか2試合。もどかしさと向き合い続ける時間が続いた。しかし今季は一転、全試合で出場機会を得ている。試合ごとに課題を修正し、次のプレーへとつなげていく。その積み重ねが好循環を生み、確かな手ごたえへとつながっている。

評価の軸にあるのはディフェンス、とりわけタックルだ。ケフ ヘッドコーチも「フィジカルが強く、ディフェンス、モール、クリーンアウトも光る。タックルが一番うまい選手の一人」と高く評価する。高校時代から磨き続けてきた武器は、いまやチームに欠かせない強みとなった。大柄な相手にも臆することなく低く鋭く入り続けるその姿は、チームに確かな前進力と勢いをもたらしている。

グラウンド外での取り組みにも積極的な姿勢を見せる。東北各地や、自身が育った日立ラグビースクールを訪れ、子供たちとの交流を続けているが、純粋なまなざしで向けられる声援は、大きな原動力の一つだ。

「やっぱり子供たちの反応は正直で、試合に出ているのと出ていないのとでは全然違いますね(笑)」

そう語る言葉の裏には、いまの立ち位置を自らの力でつかみ取ってきた実感もにじむ。出場機会を得られなかった過去を経て、ようやく手にした現在。プレー面だけでなく、精神面でも充実したシーズンを過ごしている髙橋泰地は、いま確かな存在感を放っている。ケフ ヘッドコーチが、今節のキープレーヤーの一人に彼の名を挙げるなど、チームの中で担う役割は、より大きなものへと変わりつつある。

日本製鉄釜石シーウェイブスに加入してからの2年間、思うように出場機会を得られず、悔しさともどかしさを抱え続けてきた。しかし、その時間があったからこそ、いまの加速度的な成長がある。遠回りに見えた道のりは、確かな意味をもって現在へとつながっている。その積み上げの先にあるパフォーマンスが、髙橋泰地という選手の価値を、さらに鮮やかに浮かび上がらせていく。

(髙橋拓磨)

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