2026.04.11[九州KV]原点だった父から受け継いだもの。すべてを懸けた先につかんだラグビー選手という職

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第11節
2026年4月12日(日)12:00 駅前不動産スタジアム (佐賀県)
九州電力キューデンヴォルテクス vs 日本製鉄釜石シーウェイブス

九州電力キューデンヴォルテクス(D2)

九州電力キューデンヴォルテクスのジュード・ギブス選手。「ラグビーを始めたときからプロになりたいと思っていました」「いまは夢がかなってうれしいです」

ジュード・ギブスがラグビーを始めたのは4歳のとき。生まれながらにラグビーが身近にある環境だった。

「ラグビーを始めたのは父がきっかけです。二人の兄や年上の親戚がラグビーをやっていて、触れる機会が多かった。そういう中で自分もラグビーを始めました」

プロラグビー選手だった父はギブスが生まれる前、24歳という若さで現役を引退。プレーする父の姿に憧れたというわけではないが、ラグビーを始めたときからプロになるのは一つの夢だった。

「ラグビーを始めたときからプロになりたいと思っていました。プレスクールにもラグビーのユニフォームで通うような子供で、いまは夢がかなってうれしいです」

若くして引退した父はその後、スポーツドクターの道へ進んだ。ギブス自身もそんな父の姿を見て、プロラグビー選手になる夢と並行してスポーツ医療の世界を志していたという。

「大学でもスポーツ科学やスポーツ医療の分野を学ぼうとしてそういうコースに進みましたが、その道は簡単なものではありませんでした。ただ、幸運にもプロラグビー選手になる機会を得ることができました」

医師になるのもそうだが、プロラグビー選手になれるのも限られた数の人間だけだろう。ギブス自身もプロラグビー選手の希少性は理解している。

「プロラグビー選手になることは簡単なことではないと思います。ただ、自分の人生のすべてをラグビーに懸けたいという思いでやってきて、それをかなえられたことはうれしく思います」

元プロラグビー選手だった父はアドバイスをくれることもあるそうだが「やろうとはしてくれますが、父は私のポジションについての知識が最小限しかなくて⋯⋯(笑)」。ロックだった父はギブスのポジションであるスタンドオフの知識はあまり持ち合わせていないそうで息子は笑う。ただ、「成長の過程では父から練習方法やコンディションを良くするための方法など体作りへのアドバイスはもらってきました」と感謝の思いは強い。

父が引退した24歳のシーズン、ギブスは日本という舞台で新たなチャレンジを続けている。その姿はきっと父にとっても誇れるものになっているはずだ。

(杉山文宣)

2026.04.10[釜石SW]経験とは、時間ではない。細部に宿る違いを見つめ、チームに軸をもたらす男の帰還

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第11節
2026年4月12日(日)12:00 駅前不動産スタジアム (佐賀県)
九州電力キューデンヴォルテクス vs 日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

日本製鉄釜石シーウェイブスのミッチェル・ハント選手

戦列を離れていた時間は、決して長くはなかった。それでも、グラウンドに立てない日々は、チームと自分自身を見つめ直す時間となった。3月22日に行われたNECグリーンロケッツ東葛との第5節。その直前のトレーニング中にハムストリングスを痛めたミッチェル・ハント。大事には至らなかったが、慎重を期して欠場を選択した。

彼はその間、外からチームを見続けていた。

「結果は残念だったけど、シーズン全体でやってきたことが間違っていたとは思っていません」

積み上げてきたものがあるからこそ、わずかなズレが結果に直結する。そのもどかしさを痛感した時間でもあった。

迎える今節、九州電力キューデンヴォルテクスとの一戦は、順位争いの行方を大きく左右する。これまで勝ち切れなかった試合の積み重ねが、現在の順位(7位)につながっているからこそ、落とせないゲームだ。

それでもハントの視線は一貫している。

「特別なことをする必要はない。まずは自分の役割にフォーカスすること」

この数週間、チームが見つめ直してきたのは、ペナルティやエラー、タックルの質といった細部だった。試合を分けるのは、劇的なプレーではなく、小さな精度の差。その認識はチーム内で共有されている。

小さな精度の積み重ね。その一つひとつに向き合いフォーカスしてきたことで、今季前半戦は収穫の多い試合を続けられた。そして、その向き合い方こそが、“経験”の質を変える。

「経験とは、良いことも悪いことも、すべてから学べる力のこと」

その原点にあるのが、クルセイダーズで過ごした時間だ。オールブラックス(ニュージーランド代表)のメンバーが10人以上在籍するチーム。世界最高峰の選手たちと日常をともにする中で学んだのは、プレーの巧拙以上に、向き合い方だった。トレーニングの一つひとつ、細部へのこだわり、自らに課す基準の高さ。すべてが、成長へと直結していた。

「良いプレーも悪いプレーも、次にどうつなげるかを常に考えていました」

ただ試合を重ねるだけでは、経験にはならない。振り返り、問い直し、改善する。そのサイクルを回し続けてこそ、初めて自分の力に変わる。

だからこそ、ハントは自らに厳しくあり続ける。

「あの場面で何ができたか。次はどうすべきか。ハードにレビューする。常に自分に問い続けることが大事です」

その姿勢は、チームにも波及していく。言葉だけではなく、日々の振る舞いと準備で示す。基準を引き上げる存在として、チームに安定をもたらす役割を担う。

復帰戦は、単なる一選手の帰還ではない。チームに再び軸をもたらす機会でもある。

九州電力キューデンヴォルテクスとの今節の試合は大事な一戦となる

経験とは、時間ではない。どう向き合い、どう学び、どう次へとつなげるか。その積み重ねの先にこそ、成長はある。

ミッチェル・ハントは、その答えを体現し続ける。

(髙橋拓磨)

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