2026.04.24[釜石SW]あの日、ラグビーに恋をして。運命的な“一目ぼれ”が作り上げたいまの自分

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第12節
2026年4月25日(土)13:00 サンディスクスタジアムきたかみ (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs NECグリーンロケッツ東葛

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

日本製鉄釜石シーウェイブスの松山青選手。空手少年だった中学生がラグビーにのめり込むようになったきっかけは、2015年のあの南アフリカ戦だった──

その出会いは、あまりにも唐突で、そして決定的だった。空手に打ち込んでいた一人の少年が、人生の針路を変える“瞬間”に出会う。

松山青。いまはフォワードとして体を張り、チームにエナジーをもたらす存在だが、その原点はラグビーではなく、幼少期から続けてきた空手。己と向き合い、鍛え上げる競技に没頭していた。

転機は2015年。テレビで目にしたラグビーワールドカップ、日本代表が南アフリカ代表を破った歴史的一戦だった。その熱量に、心を撃ち抜かれた。

「こんなスポーツがあるのか、と思いました。めちゃくちゃかっこよくて」

試合が終わるのを待たず、気持ちは固まっていた。「ラグビーをやりたい」。視聴後、すぐ父に伝える。まさに一目ぼれだった。

長く積み上げてきた空手を手放す決断は簡単ではない。母は反対した。それでも思いは揺るがない。「大会で優勝したら辞めさせてほしい」。そう願い出て、東海大会で優勝。その約束を現実に変えた。全国大会の切符を手にしながらも辞退し、迷わずラグビーの道へ進む。

「それぐらい、ラグビーをやりたかった」

初めて立ったグラウンド。ルールも分からない中で、「ボールを持ったら前に出ろ」と言われ、とにかく前進した。トライを決めた瞬間、仲間が一斉に駆け寄る。その一体感は、個人競技では得られない温もりだった。

「あの感覚は特別でした。すごく新鮮で、心から楽しかった」

あの日の衝動は、いまも変わらない。釜石SWに加入して2シーズン目。環境に慣れたことで落ち着きが生まれた一方、自身の変化も見つめている。

「1年目のアグレッシブさやハングリーさが、少し足りない気がする」

がむしゃらさだけでは続かない。その気づきが、視野を広げた。何がチームのためになるのか、自分はどう貢献できるのか。その問いの先に、あらためて見出したのが“自分の役割”だった。

「自分が一番盛り上げて、一番楽しむ。それが自分の役割であり、強みです。途中から入って、試合を動かせる選手になりたい」

シーズンは佳境。「自分たちのやるべきことをやるだけ」。その言葉に迷いはない。

空手少年だったあの日、テレビ越しに感じた衝動。あの運命的な“一目ぼれ”が、いまの自分を作っている。

だからこそ、どんな状況でも前を向ける。

あのときのように、心が動くほうへ──。

松山は今日も、自分の役割を全うし、チームに熱を灯し続ける。

(髙橋拓磨)

2026.04.24[GR東葛]チームを支えてきた男の決断とクラブの転換点。その思いを継承し、最高の花道へ

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第12節
2026年4月25日(土)13:00 サンディスクスタジアムきたかみ (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛(D2)

NECグリーンロケッツ東葛の瀧澤直選手。そのラストシーズンもエンディングが近い

4月15日、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、瀧澤直の今季限りでの現役引退を発表した。在籍17年、GR東葛通算163キャップ。長らくチームを支えてきた男の決断は、GR東葛にとって一つの時代の節目を意味する。

そして来季からチームはJR東日本へ譲渡される。つまり、GR東葛として戦うのは今季が最後だ。そのラストシーズンで、長年チームを体現してきた瀧澤がスパイクを脱ぐ。チームの歴史が大きく動くタイミングであることは間違いない。

ただ、選手たちの言葉を聞くと、瀧澤が示してきたものは、脈々と後進に受け継がれている。日々の姿勢、仲間への気配り、そしてチームを思う心。その“グリーンロケッツ魂”は、確実に次の世代に受け継がれ、彼らによって次のステージへ紡がれていく。

大澤蓮は、練習場で見てきた瀧澤の背中をこう語る。

「若手のやるメニューをそのまま僕らと一緒にやるので、すごいと思っています。練習では誰よりも楽しんでいますし、誰よりも周りを鼓舞しています」

朝早くクラブハウスに入り、汗を流し、若手と同じ強度で体を追い込む。その上で周囲を明るくし、空気を前向きに変える。ベテランでありながら、誰よりもエネルギッシュにチームを動かしてきた。

亀井亮依が口にしたのは、瀧澤の“見えない仕事”だった。

「自分のこと以上に、チームを俯瞰して見ているんです。悩んでいる子に一言掛けたり、陰ながらチームを支えている。そういう存在はチームには絶対に必要なんです」

メンバー、メンバー外、若手、ベテラン。シーズンが進めば、それぞれが異なる感情を抱える。その機微を察知し、必要な言葉を掛ける。数字には残らないが、勝負の世界で欠かせない役割を瀧澤は自然体で担ってきた。

小幡将己は、その影響力を率直に語っている。

「タッキーさん(瀧澤)が手を抜かずに練習をやっている姿を見ると、俺もやらなきゃと思います」

さらに、小幡はこう続けた。

「フォア・ザ・チームで、一貫性をもって取り組む。そこは自分たちが受け継がなくてはいけないところだと思います」

時にはプレーで、時には言葉で、時には行動で示し続けてきた。その積み重ねは、後輩たちに多大な刺激を与え、彼らの意識を変えてきた。

迎える今節は日本製鉄釜石シーウェイブス戦。今季、残された試合は今節を含めて3試合。瀧澤が歩んできた17年の歴史に、最高の花道を用意するためにも、チームが示すべきものは明確だ。受け継いだ思いを勝利という結果に変え、最後まで戦い抜くこと。GR東葛としてのラストシーズン、その締めくくりにふさわしい時間は、まだここから作れる。

(鈴木潤)

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