2026.05.08[釜石SW]胸に秘める“雲外蒼天”。その先にある青空を信じて、心を一つに戦う

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第14節
2026年5月9日(土)13:00 サンディスクスタジアムきたかみ (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 清水建設江東ブルーシャークス

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

日本製鉄釜石シーウェイブスの南篤志選手。「見てくれた人たちに、誇らしい気持ちになってもらえる試合をしたい」

一つのクラブで10年。前節でリーグワン通算50キャップを達成し、クラブ通算100キャップも目前に迫っているのが南篤志だ。

「ここまで長く現役を続けているとは、正直思っていなかったです」

かつては、自分も30歳前後でスパイクを脱ぐのだろうと思っていた。だが、そのキャリアは決して平坦な道のりではなかった。

大きな転機となったのが、3年前の疲労骨折だった。

「もとの自分に戻れるのかな、という不安がありました。もし戻れなかったら、辞めるしかないのかなって」

思うように回復しない日々。焦りともどかしさ。その時間は、自身のラグビー人生を見つめ直す時間でもあった。

「20代のころは、とにかく量をやれば強くなれると思っていました。でも、その考え方だけじゃダメだった」

その経験を経て、南が大切にするようになった言葉がある。

“雲外蒼天”。

厚い雲の先には、青空が待っていることを意味する四字熟語は、いつしか自身のキャリアそのものを表す言葉になっていた。

そして今季、チームは再び苦しい状況に立たされている。7連敗を喫し、D2/D3入替戦へ回ることも決まった。その中でも、前節・日野レッドドルフィンズ戦の敗戦は、南の胸に強く残っている。

「正直、自分たちらしくない試合だったと思います。相手のほうが気持ちが入っていたし、それが結果にも出ていた。ファンのみなさんに見せるには、情けない内容だったと思っています」

だからこそ、レギュラーシーズン最後のホストゲームに懸ける思いは強い。

今季、チームが最も熱を放った試合の一つが、東日本大震災復興祈念試合となった第7節・花園近鉄ライナーズ戦だった。当時、首位を走る強豪を相手に、魂をぶつけるように戦い抜き、勝利。試合後、南は思わず涙を流した。

「社会人になってから、勝って泣いたことってほとんどなかったんです。でも、あの試合は自然と涙が出ました」

かつて大敗を喫してきた相手を倒した歓喜。復興祈念試合という特別な舞台。そして、どんな状況でも戦い続けてきた時間。そのすべてが重なった涙だった。

心を一つにできたとき、このチームはどんな相手にも立ち向かえる。そんな自負がある。だからこそ、最終節でも求めるのは結果だけではない。

「見てくれた人たちに、誇らしい気持ちになってもらえる試合をしたい」

厚い雲の先に、青空は必ず広がっている。最終節は、その青空へ踏み出すための80分になる。

(髙橋拓磨)

2026.05.07[江東BS]取り戻したラグビーの楽しさ。古巣戦で示したいラグビー選手としての自分にできること

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン2 第14節
2026年5月9日(土)13:00 サンディスクスタジアムきたかみ (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

清水建設江東ブルーシャークスのキャメロン・ベイリー選手

今季もいよいよ最終盤。D1/D2入替戦進出を懸けた戦いが続く中、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)で存在感を高めているのが、今季加入のキャメロン・ベイリーだ。

前節の九州電力キューデンヴォルテクス戦では、力強いキャリーとスピードを兼ね備えたランで相手を圧倒し、1トライを挙げてプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出。コンディション、パフォーマンスともに、ここへ来て明確に上向いている。

しかし、その裏側には試行錯誤の時間があった。

「新しい戦術、新しいメンバー、まったく違う環境だったので、フィットするのに時間は掛かりました」

シーズン序盤、思うように力を発揮できない時期が続いた。そんな中で転機となったのは、第4節でメンバー入りを逃したあとの行動だった。自ら吉廣広征ヘッドコーチ兼マーケティングリーダーの元を訪れ、「なぜ外れたのか」を問い、アドバイスを求めたのである。

「一度ベーシックに戻ろう、と。基礎に集中したほうがいいという話を受けて、それを実行しました」

自分の現状を受け止め、答えを外に求め、そして素直にやり切る。その誠実な姿勢こそが、ベイリーの本質だ。当時は「自分のキャパシティー以上のことをやろうとし過ぎていた」という。ミスが増え、プレッシャーを自ら強めていた。しかし、基礎に立ち返ったことで、プレーは整理され、感覚も戻ってきた。

「間違いなく成長しました。ラグビーを楽しめていなかった自分がいたんですけど、基礎に戻ったことで、また楽しく感じられるようになりました」

今シーズンの序盤以降「間違いなく成長しました」と自信を深めている

その変化は、プレーだけではない。チームメートとの関係性も彼を支えた要素の一つだ。外国籍選手たちと食事やゴルフを通じて交流を深め、ピッチ内外で信頼を築いてきた。そして、日本人選手の勤勉な姿勢に触れて思うところがあった。

「仕事を終えてから練習に来る日本人選手たちのハードワークには、本当にリスペクトがあります」

自身の意識もさらに引き上げられ、江東BSで戦う覚悟がさらに深まった。その先に見据えるのはディビジョン1という舞台だ。

「誰しも上のレベルでプレーしたいと思いますし、どれだけ自分が通用するのかを試したい気持ちもあります。このチームがどの位置にいるのかを測る機会にもなると思うので、そのチャンスが巡ってくれば、すごく楽しみです」

憧れではなく、“挑戦の対象”として見据えるその視線が、いまのベイリーの現在地を物語っている。

そんな彼にとって、次節は特別な一戦となる。4年間所属した古巣、日本製鉄釜石シーウェイブスとの対戦だ。ただ、今回の一戦は単なる“古巣戦”ではない。岩手県大槌町で発生した山林火災の影響により、開催環境にも変化が生じている。試合会場がサンディスクスタジアムきたかみへと変更されることが決まった。釜石市は自然に囲まれ、ラグビーとともに歩んできた地域。その状況に、彼も思いを寄せる。

「ラグビーの街であり、ラグビーを誇りにしている場所。だからこそ、観客が思わず立ち上がるような試合を届けたいです」

良いプレーで、良い試合で、人の心を動かす。それがラグビー選手として、自分にできることだと理解している。

成長を遂げた姿を古巣に示し、ノーサイドの瞬間、スタンドに万雷の拍手が広がるような試合を──。

その中心に、背番号15の存在があるはずだ。

(奥田明日美)

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