2026.05.29[埼玉WK]悔しささえ「宝物」。最後にもう一度、“優勝の景色”を仲間と

NTTジャパンラグビー リーグワン2025ー26
プレーオフトーナメント準決勝
2026年5月31日(日)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
埼玉パナソニックワイルドナイツ vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1)

埼玉パナソニックワイルドナイツの布巻峻介選手

「初めてジャージーを着たときの喜びや、優勝したときの気持ち。試合に出られない悔しさや、負けたときの悔しさでさえ、すべて僕の宝物です」

2026年5月9日。NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 第18節後に行われた引退セレモニーでのこと。今季限りで現役を退く埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の布巻峻介は、込み上げる感情とともに、言葉を紡いだ。

「本当にたくさんの経験と成長をさせてもらいました。調子が良いときだけでなく、試合に出られない悔しさや、ギリギリで優勝できなかったときも。その一つひとつが僕を成長させてくれました」

苦しい時間さえ「宝物」と呼べる理由。それは、このチームだったからだ。

「好きなチームでなければ、イヤな思い出にしかならない。そういう(苦い)思い出すらも宝物と思わせてくれるチームでした」

それから2週間。レギュラーシーズンを2位で終えた埼玉WKは、プレーオフトーナメント準決勝のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)戦に向け、着々と準備を進めた。

試合4日前の練習場所となったのは、クラブハウス横の熊谷ラグビー場Aグラウンド。通常は試合時しか使用できない神聖な場所だが、「ぜひ優勝を」という熊谷スポーツ文化公園側の厚意により、最高の状態の芝で汗を流すことができた。

守備練習が中心となったこの日、ディフェンスコーチを兼任する布巻は、笛を手にグラウンドを動き回り、時に厳しく、時に笑顔を交えながら仲間たちへ声を飛ばした。

選手として、ディフェンスコーチとして、プレーオフに臨む

「練習の準備をしているときは少し不安もありました。でも、今日の朝にはやることは決まっていたので、いまはワクワクという気持ちでいっぱいです」

選手業100%、コーチ業100%で挑んだ今季だった。だがその歩みは、決して順風満帆だったわけではない。

16の勝利と、2つの敗戦。特に2つの黒星が「ターニングポイントになった」と布巻は言う。

「僕たちはどこにでも勝てる力を持っています。でも、それは“ちゃんとやったとき”の話。ちゃんとやらなかったら、どこにでも負けることはある」と教訓を得る。

レギュラーシーズンでのS東京ベイとの対戦時に、ラストワンプレーで逆転勝利を収めたことも記憶に新しい。自分たちのラグビーを貫けば戦える、との手ごたえと自信をつかみ、チームは成長した。

だが、プレーオフトーナメントはこれまた別物。準決勝の80分に必要なのは、ただ気持ちを前面に出すことではない。

「頑張り方を間違えると、一気に試合は崩れます。がむしゃらにやることも大事ですが、そのパワーを正しく使うことがすごく大事です」

今季のレギュラーシーズンで積み重ねた、1440分。そこで得た歓喜も悔しさも、熱源にする覚悟だ。

冒頭の言葉には続きがある。

「最後にもう一度、ファンのみなさんと優勝したときの気持ちを味わいたいと思いますので、最後まで一緒に戦いましょう」

チャンピオンまで、あと2勝。

これまで手にした宝物を携え、最後の宝箱へ辿り着くための地図を、描きに行こう。

(原田友莉子)

2026.05.29[S東京ベイ]3年前とは違う。苦しみを越えた11番が、再び頂点へ走る

NTTジャパンラグビー リーグワン2025ー26
プレーオフトーナメント準決勝
2026年5月31日(日)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
埼玉パナソニックワイルドナイツ vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの木田晴斗選手。今シーズンは2022-23シーズン以来のベストラインブレイカーに再び輝いた

3年前とは異なる自分が、いまここにいる。

2022-23シーズン。木田晴斗は、優勝の歓喜の渦の中にいた。クボタスピアーズ船橋・東京ベイが誇る、爆発力を秘めた左ウイング。故障のないフレッシュな肉体はトライを量産し、22年4月に加入したチームの躍進に大きく貢献した。まさに若さと勢いのまま、フィールドを切り裂いていた。

だが、優勝シーズンのあとから、その歯車は次第に狂い始める。時はラグビーワールドカップイヤー。日本代表合宿に招集されるも、けががたび重なり、戦線から離れざるを得なくなった。また、その痛みを引きずったままリーグワンの2023-24シーズンが開幕。本領発揮とはならず、フィールドから離れる時間も長くなっていった。

昨シーズン、プレーオフトーナメントに木田の姿はなかった。チームは11番に根塚洸雅、14番にハラトア・ヴァイレアを据え、決勝まで進出。グラウンドの外から戦いを見つめていた木田は、仲間たちの活躍をうれしく感じる一方、自分がそこに立てていない悔しさも抱いていた。

「でも、リハビリ期間もラグビー人生の一つですから」

木田は、もどかしかった2年間をそう振り返る。ストレスを溜めたところで、早期に復帰できるわけでもない。自分のコンディションさえ整えば、再び高いパフォーマンスを発揮できるという感覚も失ってはいなかった。

昨年10月には日本代表活動中の合宿で再び負傷。それでも木田は、リーグワン開幕を見据え、リハビリに専念する決断を下した。その視界は、あくまで明瞭だった。

そして迎えた今シーズン。けがを知り、痛みを知り、それでもシーズンを戦い抜く術を覚えた木田が、再びピッチを駆け抜けている。いまも痛みとは無関係ではない。だからこそ、行ける場面では勝負し、そうではない場面では引く。その“緩急”を、木田は戦いをとおして身に付けていった。

「逆に言うと、力を抜くことで周りが見えるようになった。柔らかくプレーできた試合も多かったと思います」

昨季は立つことのできなかったプレーオフトーナメントの舞台。レギュラーシーズンを完走し、再び11番を背負ってそこに立てていることに、木田は確かな喜びを感じていた。シーズンをとおして高い再現性をもったパフォーマンスを続け、その結果はベストラインブレイカー賞という形でも示された。

ただ、本人の感覚ではコンディションは「まだ80%ほど」だと言う。相手との間合いや距離感、周囲との連係、キックスキル──。木田は以前よりも多くの武器を手にしている実感を口にした。

残りの「20%」の余白が埋まったときこそ、“シン・木田晴斗”の完成形なのかもしれない。そして、その輪郭は少しずつ見え始めている。

迎えるプレーオフトーナメント準決勝。立ちはだかるのは埼玉パナソニックワイルドナイツ。今季リーグ戦では苦杯をなめた相手だ。

「まずはディフェンスでしっかりプレッシャーを掛けたいですし、ハイパントやキック処理といったウイングとしての役割も遂行したい。その上で、自分のランニングのチャンスがあれば、しっかりトライを取り切りたいです」

痛みを知ったからこそ、たどりつけるステージがある。

(藤本かずまさ)

試合詳細

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Teams

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  • 浦安D-Rocks
  • クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
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