2023.01.09NTTリーグワン2022-23 D1 第3節レポート(GR東葛 33-43 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第3節 カンファレンスB
2023年1月8日(日) 14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 33-43 コベルコ神戸スティーラーズ

猛追の口火を切った尾又寛汰。
敗戦の中で見せた確かな存在感

NECグリーンロケッツ東葛でのデビュー戦でトライを決めた尾又寛汰選手

後半の猛追も及ばず、NECグリーンロケッツ東葛は33対43でコベルコ神戸スティーラーズに敗れた。

試合後、レメキ ロマノ ラヴァが「強い相手に最初に19点を取られたら勝つのは難しい」と振り返ったとおり、試合開始からわずか10分間で3トライを取られ、序盤に大きく点差を広げられたことが最後まで響く形となった。NECグリーンロケッツ東葛の入りの悪さと、開始10分間で19点を奪ったコベルコ神戸スティーラーズの勢いを考えれば、ワンサイドゲームになってもおかしくない展開だった。

だが、その悪い流れを断ち切り、反撃の狼煙を上げたのが、尾又寛汰が前半30分に決めたトライである。今季移籍加入の尾又にとって、この試合はNECグリーンロケッツ東葛でのデビュー戦となった。新天地での初戦へ臨む心境を、彼はこう口にした。「昔から気負いすぎるとあまり良いことがないので、これまでやってきたことを信じて、チームのみんなを信じて、しっかり自分の仕事をすることを意識して試合に臨みました」。チームのみんなを信じる──。まさにその“信頼”こそが、前半30分のトライを生むキーワードとなる。

NECグリーンロケッツ東葛のアタックでハンドリングのミスが生じるも、味方をサポートしたレメキがルーズボールを拾いターンオーバーを回避。さらにコベルコ神戸スティーラーズのプレッシャーを跳ね除けてレメキは突破を図った。「マノさん(レメキ)なら、抜いてきてくれる」。瞬時にそう感じた尾又は、レメキが突破することを信じて左サイドのスペースへ駆け上がっていった。予測どおり、数人のディフェンスを引きつけたレメキから尾又はパスを受け、二人のコンビネーションでラインブレイクに成功すると、尾又は移籍後初トライを決めた。かつて三重ホンダヒートでチームメートだった尾又とレメキは、今季から再び同じユニフォームを着て戦うことになった。レメキが「ずっと兄弟のように仲が良くて、ひさしぶりにプレーができてめっちゃうれしかった」と言えば、尾又もまた「三重ホンダヒートの時からお世話になっていて、こうしてプレーできるのはうれしかったし、トライを取ったところも、あの人だったらあれぐらいやるというのはよくわかっていました」と、ともにプレーができる喜びと先輩への信頼を述べた。

トライの場面以外にも、80分を通じて尾又は鋭いランを随所に見せた。尾又にとってはプレシーズンを含めて今季初の80分間のプレーだったため、「正直、ちょっと試合勘が薄れている部分があったのは事実で、後半は足がちょっと動かなかった」と苦笑いを浮かべていたものの、フルタイムをこなしたことでコンディションは向上し、試合勘はより研ぎ澄まされるはず。おそらく彼自身がその手ごたえを感じているのだろう、今後の戦いへ向けて「これから良いランを何発も見せます!」と力強い言葉を残した。

チームとしては試合の入りの悪さに課題が残った。そしてその点差が響き、コベルコ神戸スティーラーズに敗れた。しかし前半30分のトライで息を吹き返し、後半に見せた猛追は非常に見ごたえがあった。その口火を切った尾又寛汰。今季からNECグリーンロケッツ東葛に加わった男が、チームに新たな風を巻き起こす。

(鈴木潤)

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛のロバート・テイラー ヘッドコーチ(左)、レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ

「今日はみなさん、応援に来ていただいてありがとうございます。コベルコ神戸スティーラーズは勝利おめでとうございます。自分たちのチームとしては、試合ではかなり戦ってくれましたが、コベルコ神戸スティーラーズのような強いチームを相手に試合の序盤で19点を取られてしまっては追いつくのは難しいです。最初に19点を取られてしまいましたが、そこから選手たちが一生懸命頑張り、戦い続けたところは自分のチームに誇りをもっています。セットピースも良かったですし、ペナルティをしないというところもだいぶ良くなってきました。ただ、相手は素晴らしいアタックチームで、彼らがそのチャンスをつかんだという試合でした」

──立ち上がりの10分間で3トライを取られてしまったことについて。

「そこから、ウチのチームが絶対に立ち直ってくれるということは分かっていましたし、そういうスタートは私も良くないとは思いますが、今日の試合はみなさんもご覧になったとおり私たちは点を取れるチームでもあります。今後のNECグリーンロケッツ東葛を楽しみに見ていただきたいということと、最初の10分間に3トライを取られたことに関しては当然フラストレーションがありましたが、そこから必ずチームがカムバックしてくれるということは分かっていたので、そこまでどうこうという思いはなかったです」

──後半は攻勢でした。前半から後半にかけてどの部分を修正しましたか?

「あるシーズンからずっとやってきて、いくら点数を取られようが絶対に立ち直ってきたという話をしました。そして後半が始まったら、もう一度頭の中を引き締めろと言いました。負けていようがそこは自信をもっていました」

NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

「入りがあまり良くなかったです。ファーストキックオフでイエローカードが出て、14人で戦い、そこでコベルコ神戸スティーラーズに連続でトライを取られてしまいました。入りが良くなかったですけど、最後までファイトしたのは良かったと思います。昨季ならば60点ぐらい取られていたと思うけど、今日はみんなが最後までファイトして、勝てそうだったけど、結局10点差で負けてしまいました。お互いに良いラグビーを見せたので、これからは良い(試合の)スタートができれば勝ち切れると思います」

──最初の10分間で3トライを取られたあとは拮抗した試合展開になりました。19点を取られたあとのチームの雰囲気はいかがでしたか?

「最初はショックだったけど、19点を取られたときまでは僕たちはずっとディフェンスをしていました。でもボールを持てば、僕らは絶対に良いアタックができると思っていたので、みんな起こったことは全然気にしないで、『次、俺はここに蹴るから』、『ここでボールを取って動かせば絶対にトライが取れるから』という話をしていました。『19対0でも、そのあとはボールを動かせばトライを取れるから』と。だから最初はショックだったけど、そのあとは全然大丈夫でした」

──後半の流れを見ていると逆転してもおかしくない試合展開でしたが、こうした試合で勝つためには何が必要ですか?

「本当に後半はめちゃめちゃ良かった。やっぱり強い相手に対して、最初に19点を取られたらなかなか勝つのは難しい。スタートをもっと良くして、例えば5点だけ取られたならそこから行けると思うのでスタートが大事ですね。それはいつも言っていることなんですけど、今回はうまくいかなかったです。それができたら最後に勝ち切れたと思います」

──尾又寛汰選手のトライはレメキ選手のアシストでしたが、久しぶりに尾又選手とプレーをした感想は?

「久しぶりに一緒にプレーができてうれしいですね。三重ホンダヒート時代からずっと兄弟のように仲が良くて、(尾又選手が)NECグリーンロケッツ東葛に来て一緒にラグビーができたのをうれしく思います。彼の能力は本当に高いです。何もない状況から何かを作ってくれるし、一緒に久しぶりにプレーができて、めっちゃうれしかったです」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのニコラス・ホルテン ヘッドコーチ(左)、李 承信バイスキャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ

「良かったところと悪かったところが完全に二つに分かれてしまった試合だったと思います。前半に関しては自分たちの求めているラグビーができている時間も多く、良い部分をたくさん見せられたと思います。後半に関してはイエローカードがああいう形で2枚出てしまったことによって、自分たちが良い形で試合を締めくくれなくなってしまったと思います。イエローカードが2枚出て、簡単にトライを与えてしまった場面もありましたし、後半最初のトライにならなかった場面がトライになっていたら、もっとイージーな形でその後の後半を進められたかもしれません。そういう部分で自分たちにとって悪い判定が続き、そこで自分たちが流れをコントロールし切れなかったことが一番良くなかったと思います」

──試合の流れをコントロールできなかった、自分たちのミスが続いてしまった、そもそもの原因はどこにありますか?

「いろいろな理由があるので、これというのを一つ言うのは難しいのですが、どうしてもこうしたタフな試合になると、モメンタム(勢い)という流れがこちらにあったり、相手にあったり行き来する状況にあります。その中で自分たちにモメンタムがないとき、相手にモメンタムが行っているときにペナルティを与えてしまう。いま、問題になっているのがそこでペナルティを与えてしまったあとに、自分たちに流れを引き戻せず、ペナルティの数が重なり続けてしまうところです。その流れの部分を本来ならば最小限で食い止めたいところ、あまりにも相手に勢いが行き過ぎてしまっているところが一番の問題だと思います。理由に関しては複数あると思います」

──今日はどのようなゲームプランを描いていたのでしょうか? それでうまくいった部分とうまくいかなかった部分を教えてください。

「アタックに関しては、最初の3フェーズにどれだけフォーカスしていけるか、その中で精度高く自分たちがどれだけ前に出続けることができるかをプランとしてもって試合に入っています。

前半に関しては、そこはできていたと思います。ただ、後半になり、自分たちが悪くなってきたときにアタックでミスをしてしまい、精度が悪くなってターンオーバーで相手にボールを与える、そのあとにディフェンスでさらにミスをして、自分たちのミスから最終的にペナルティを与えるところにつながっていると思います。良かったことに関しては前半の内容ばかりになるんですけど、自分たちのディフェンスのコネクションや、ダブルタックルをしっかりやっていこうと話していて、前半はできていたと思います」

──ミスからペナルティを与えてしまったところは、すぐに修正できる部分でしょうか?

「前半の40分はリスクを冒しながら良いプレーができていたので、できる能力はもちろんあると思います。ではそのミスが修正可能かと言ったら、修正可能なミスだと思います。ただ、それを80分やり切らなければいけないということが自分たちの課題で、相手チームからは必ずプレッシャーを掛けられるので、そのプレッシャーを掛けられたときに、自分たちがどれだけミスを少なく、精度高くやっていけるかが課題だと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
李承信バイスキャプテン

「試合の入りに3トライで先制して非常に良い入りができたんですけど、特に後半が始まってからは今シーズンの課題であるチームの規律の部分や、自分たちのミスで自分たちの首を絞めてしまったという印象が強いです。終わってみて、しんどい試合だったんですけど、自分たちでしんどい状況を作ってしまった印象です」

──試合の流れをコントロールできなかった、自分たちのミスが続いてしまった、そもそもの原因はどこにありますか?

「ペナルティにしても、自分たちのミスにしても、1回のミスに対して取られたあとのハドルで自分たちがどうするべきかを話せるんですけど、それを全員で同じページを見ることができていないというか、1回のミスに対してどう修正していくか一人ひとり理解し合う部分で同じページを見ることができていないので、それが積み重なって、今日は80分まで修正できなかったことが、今日はこのスコア、この結果に表れていると思います」

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