2023.01.15NTTリーグワン2022-23 D1 第4節レポート(相模原DB 23-19 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第4節 カンファレンスA
2023年1月14日(土) 12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 23-19 東芝ブレイブルーパス東京

「10分間のプレゼント」で石田一貴の右足がさく裂。粘り強い逆転劇で相模原DBが“BL東京戦初勝利”

大事な場面で難しいペナルティゴールを成功させた三菱重工相模原ダイナボアーズの石田一貴選手

三菱重工相模原ダイナボアーズが序盤の劣勢をひっくり返し、東芝ブレイブルーパス東京に対して公式戦初勝利を挙げた。

三菱重工相模原ダイナボアーズは、ミスで試合の入りが悪くなり、2トライを献上したが、ブレイクダウンのプレッシャーとハードタックルで、さらなる失点を食い止める。そして、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた坂本侑翼のジャッカルから、「粘り強いディフェンスとターンオーバーからの反撃」という三菱重工相模原ダイナボアーズの特徴が現れ始める。

前半の終了間際には、東芝ブレイブルーパス東京のリーチ マイケルが、モールでの攻防の際、相手選手をパンチングしたという判定を受けて10分間の一時的退出。東芝ブレイブルーパス東京の小川高廣共同キャプテンが「アタックのブレイクダウンでプレッシャーを受けて、何も判断しないままボールが出てきてしまうことが結構あり、苦しくなった」と振り返ったように、三菱重工相模原ダイナボアーズのディフェンスが、東芝ブレイブルーパス東京の攻撃の歯車を狂わせていく。

それでも、東芝ブレイブルーパス東京は、三菱重工相模原ダイナボアーズのジェームス・シルコックが10分間の一時的退出の間に再逆転して2点をリードした。

しかし、ここからもう一つのドラマが始まる。主役はこの日が誕生日の石田一貴。キッカーであるジェームス・シルコックに代わり、ペナルティゴールを決めて1点リード。さらに左サイドのゴールを狙うには難しい角度のペナルティキックを獲得すると、「上(スタンドから見ているヘッドコーチら)の指示は『タッチ(キック)、ラインアウト』だったが、その前に『ショット』と(レフリーに)言っていた」(石田)。

開幕戦で全5本のキックを決めていた石田は、この場面でも「ルーティンでいつもどおりに蹴って、いつもどおりまっすぐ飛んで入った。毎回蹴るキックの一本」で4点差に広げて、ジェームス・シルコックからもらった「10分間のプレゼント」(石田)を見事に生かす。

ペナルティゴール1本では逆転できなくなった東芝ブレイブルーパス東京の果敢なアタックを、三菱重工相模原ダイナボアーズが前に出るディフェンスがはじき返した。今季の三菱重工相模原ダイナボアーズの強さを象徴するような試合。岩村昂太キャプテンは「特に後半に関しては、われわれのDNAを出せたかなと思います。全員がしっかり体を張って、どんなにラインバックされてもしっかり帰る。そして自分たちのラグビーを遂行できたことが勝利の要因」と笑顔で話した。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「ものすごいバトルだったと思います。実際そこにいた昂太(岩村昂太キャプテン)が話したほうがいいと思うので、そこ(試合の所感)については昂太に任せます」

──石田一貴選手がいいショットをしましたが、石田選手の誕生日でいい思いをさせようということだったのでしょうか。ジェームス・シルコック選手がイエローカードでアウトになったときに、やはりプレースキッカーのことを頭に入れてのチェンジだったのでしょうか?

「逆に、カズ(石田一貴)から僕たちへのプレゼントがあったような感じだったと思います。とても信頼している選手ですし、キックも上手です。私たちのチームにそういうキックをもっている選手がいることはラッキーなことだと思います。自分のやらないといけない仕事、役割を完璧にこなせたので、そこはすごく良かったと思います。最後にカズがジェームス・シルコック選手に『10分間のプレゼントをありがとう」と冗談で言っていたのが面白かったです」

──ベテランの安江祥光選手をリザーブに置いておく判断は、どういうところを基本に考えてでしょうか?

「宮里侑樹選手がプレシーズンにジャージーを勝ち取って、今季はスタート時からいいプレーをし続けている。そのおかげで、経験豊富な安江選手をこういう大事な場面で出せる。安江選手は大きいクラブでのプレーやインターナショナルの試合の経験があり、大事な試合の経験がまだ浅い選手がいる中で、みんながもうちょっと冷静になれる存在だと思います。自分たちがこういう感じで安江選手を使えるところもすごくいいことです」

──今日は特に顕著でしたが、安江選手のようなワークレートのある選手がブレイクダウンでもプレーしてくれるのは、非常にプラスになっていますね。

「そうですね。安江選手もブレイクダウンが上手ですし、チームもそこが一つの強みだと思います。リザーブから上がるとき、試合のリズムをいきなりつかむことがなかなか難しい選手がいると思います。今日は安江選手がすぐそのリズムをつかむことができて、冷静にプレーをしてくれました。そこはチームにとって大事なことで、チームのベテラン選手にそういう感じで活躍してもらえるのはありがたいところです。川俣直樹選手は、この3週間に大きなバトルを3回連続していたので、1週間休みをとってメンバーに入りませんでした。それができるのも坂本駿介選手がいいパフォーマンスを出しているからです。チームがいい方向に進んでいるのは、若手選手たちがどんどん手を挙げるし、ベテラン選手もいろいろ教えていけるからだと思います」

──前節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦から改善したことについて教えてください。

「埼玉パナソニックワイルドナイツ戦も前半25分までは5対0でしたが、自分たちが一番苦労したところは、セットピースのラインアウトです。そこでの成功率が低かった。そこは自分たちがコントロールできるところだと思うので、そこに集中して、今日はもう少しいいパフォーマンスをそこで出せたと思う。そういう自分たちの行動のところに集中しました」

──昨季、非常に大きな存在感のあったマイケル・リトル選手が今季はコベルコ神戸スティーラーズに移籍してしまったが、その穴を感じさせないプレーをされていると思います。彼がいなくなったことで、その穴をどう埋めようと考えたとか、逆に、ここを伸ばそうと考えたとか、どういうふうにチームづくりをしてこられたのでしょうか?

「マイケル(・リトル)は自分たちも大好きな選手ですし、三菱重工相模原ダイナボアーズでの歴史の長い選手ですが、あくまでもフィールドにいる15人の選手の中の一人です。マイケルは昨季のゲームプランを実行してくれた選手ではありましたが、今季もまた、ここにいる人に集中して、そこで自分たちは何をしなければいけないのか、どういうゲームプランをするのかというところに集中しました。自分たちが大事にしているのはハードワークをすること。15人だけではなくて、選手みんながハードワークをしなければいけない。そこに集中した。もちろんマイケルは自分たちの大好きな友だちではありますが、違う道にいったので、いまいる人たちに集中しているということです」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「前半、自分たちのミスで、2トライ先取されるという、われわれとしてはあまりいい流れではなかったのですが、そのあと、しっかり自分たちのやるべきことに立ち返って、ノーペナルティだったり、ディシプリンを守ったりすることで、自分たちのディフェンスからしっかり流れをつかみとれた。前半30分くらいからは、われわれのプレッシャーからしっかりスコアまでいけた。前半最初の悪い流れを引きずらず、そこで修正できたのは、前節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦から成長できたところです。特に後半に関しては、われわれのDNAを出せたかなと思います。全員がしっかり体を張って、どんなにラインバックされてもしっかり帰る。そして自分たちのラグビーを遂行できたことが今日の勝利の要因だったのかなと思います」

──ジャパンラグビー トップリーグ優勝5回の東芝ブレイブルーパス東京に勝ったことは、チームにどういうプラスになるでしょうか。初勝利ということですが?

「東芝ブレイブルーパス東京さんに勝ったことはすごくうれしかったですけど、僕らが試合中やハーフタイムに話したのは、相手がどうこうよりも、自分らのラグビーにフォーカスすること。各々が自分の役割を遂行すること。そこにフォーカスしてやった結果がこういう結果につながった。自分らの役割をしっかり果たしたことが、まずはうれしいなと思います」

──ペナルティが前半8で後半3。このあたりは何か修正されたのですか?

「ハーフタイムのときに、前半にオフサイドといったペナルティがあったので、ディシプリンはしっかりやっていこうと。実際にどう行動していくかのもしっかり話し合えたので、後半は改善できたのかなと思います」

──埼玉パナソニックワイルドナイツ戦から改善したことについて教えてください。

「先ほどヘッドコーチの言ったとおり、セットピースのところもそうですが、あとはバックスのところで、キックバトルのところは前節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦でちょっとうまくいかなかったところもあった。今回はそういったところもしっかり修正できた一つかなと思います」

──具体的に、バトルは何を改善されましたか?

「誰がチェイスして誰が残るかとか。そういった連係のところですね」

──イエローカードが出て逆転されて、一人少ない状態で追わなければいけない。その段階でどういうことをチームメートと話したのか。いったん逆転したあと、もう一度狙うまでのあたり、どういう声がけをし、コミュニケーションをとったのでしょうか?

「まずは10分間をうまく使っていく。モールなどでちょっと時間をかけながら使っていくことを僕の中で考えていました。バックスも一人少なかったので、僕がカバーするなど、『一人いないぶん、しっかりカバーしていこう』と話していました。ただ、一人ひとりの役割は、バックス以外は特に変わらなかったので、自分らの役割にしっかり集中して、このままプレーしていこうと伝えていました」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、小川高廣 共同キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「はじめに、三菱重工相模原ダイナボアーズさんにおめでとうとお伝えしたいと思います。試合開始直後はよくプレーできたかなと思っています。チャンスは作り出せていました。トライしたあとに厳しい判定があって認められなかった部分はありました。ただ、最終的には自分たちのハンドリングのミスがこの結果につながったと思っています。あとは、ブレイクダウンに対して緊急性をもって直行するという部分ができていなかった。そこが自分たちの求めるレベルまでできていませんでした。まさにそういった部分が表れた試合だった。三菱重工相模原ダイナボアーズさんのほうがブレイクダウンでハードに競い合ってきました。そういうことでプレッシャーを掛けられてしまいました」

──後半、最後のほうでハーフバック団がメンバーチェンジしました。そのあたりをお聞かせいただけますか?

「しっかりと、インパクトで少し変化を加えたいということで交代にいたりました」

──リーチ マイケル選手のシンビンをどういうふうにご覧になりましたか?

「テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)から『パンチをした』というアナウンスが入ったようですけれども、自分としては、パンチはなかったのかなと認識しています。ただ、自分たちのモールで相手選手があそこにいたというところで、いるべきではなかったというフラストレーションがすでに存在した中で生じたこと。オンサイド側に戻らなければいけないということをレフリーが促していれば、そもそもこういったことは生じなかったかなと思います。なので、自分としては本来あってはいけないことというのでしょうか。これは私自身の意見ですが。ただ、映像を見返して、TMOでパンチがあったかということに関しては、自分としては、パンチは存在していないという認識です」

──今日のメンバー編成ですが、フロントローだったり、ハーフ団だったり、ウイングだったり何人か変更がありました。このあたり、どんなプランでメンバーを組んだのでしょうか?

「まず、その人たちによってプラスになる要素をもたらすという意図で、変化を加えました。ただ、実際、自分たちでミスを多くしすぎてしまった。そこは自分たちを苦しめた原因の一つだと思います。順調にプレーしている選手でも代えることがあります。そうすることによってまたギアを上げてもらいたい意図をもって代えています。メンバーチェンジによって自分たちのパフォーマンスができなかったという言い訳はできないと思っています」

東芝ブレイブルーパス東京
小川高廣キャプテン

「今日は、自分たちとしては、自分たちのラグビーにフォーカスしてしっかりキャリーやクリーンのところ、ディフェンスではダブルショルダーでスローボールにして、ラインを上げてプレッシャーを掛けていく。そういう感じで試合に臨みました。ディフェンスに関してはそんなに悪くなかったと思うのですが、アタックのブレイクダウンの部分で、二人目のところができなかったし、三菱重工相模原ダイナボアーズさんがすごくいいプレッシャーをかけてきたので、そこで苦しめられたなと思います。自分たちはどのチームと戦うにしても、そこは一貫してやっていかないと難しい試合になってしまうので、来週からもそこをしっかり修正して、自分たちのラグビーを常に出せるように準備していきたいと思います」

──ミスがあったりして、全体的に両チーム、ちょっとフラストレーションがたまるような展開でしたが、それはさきほど小川キャプテンが言ったように、三菱重工相模原ダイナボアーズのブレイクダウンなどのプレッシャーの影響なのか、何かほかに理由はあったのでしょうか?

「中盤でボールを手にしたとき、攻めることとエリアを取りにいくことの判断が早くなかった。判断をしようとするときにブレイクダウンのプレッシャーを掛けられているので、結局、何も判断しないままボールが出てきてしまった場面が結構ありました。そういうところが苦しくなった理由かなと思います」

──敵陣に入ったあとのブレイクダウンのところで、圧力が掛かったということ、今後どのようにしたら直していけそうだと感じますか?

「まずはボールキャリアの仕事で、しっかりスペースに走り込むこと。相手に対して当たってしまっていたので、もっとスペースに走り込むことによって、ボールにからまれにくくする。そこに対して二人目が早くサポートする。口で言うのは簡単ですが、そこをしっかり常にどのラックでもできるようにしていかないといけないと思います」

──三菱重工相模原ダイナボアーズのジェームス・シルコック選手が退いたあとの10分間はどういう印象でしたか?

「時間も残り15分くらいだったと思うので、チームとしてボールをキープして、ラインアウトからは、(ジェームス・)シルコック選手がいなくなって、相手もイグジットするのが難しくなってきていると思うので、そこに対してプレッシャーを掛けながら、ペナルティももらいながら攻められればと思っていたのですが、ラインアウトでミスしてしまったりしたので、ちょっともったいなかったなと思います」

──先ほど攻めるところとエリアを取るところの判断が早くなかったと言われました。そういう迷いが出てしまった理由はなんでしょうか?

「迷いが出たというか、ブレイクダウンで判断する前に球が出てきてしまったので、まずはそこの仕事をしなければいけないと思います」

──苦戦しているから判断のところにも影響が出てしまったということでしょうか。

「はい」

──“猛勇狼士”(もうゆうろうし)の無双ぶり、今季のスローガンには物足りなかった。チームのもっていき方として、ここ1週間良くなかったのか、それともプレッシャーにやられたのか?

「今週1週間はいい練習ができたと思っています。メンバー外(の選手)もすごくプレッシャーを掛けてくれてしっかりできたと思うので。まあ、どうですかね……。そんなに悪くはなかったです。自分たちの感覚としては」

──相手のプレッシャーが強かったか?

「そうですね。あと、天候とかへの対応も、相手のほうがしっかりチームとしてイグジットするところとかの判断がすごく早くて。そういうところかなと思います」

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