2023.02.19NTTリーグワン2022-23 D1 第8節レポート(横浜E 59-48 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第8節
2023年2月18日(土)14:00 レゾナックドーム大分(旧昭和電工ドーム) (大分県)
横浜キヤノンイーグルス 59-48 東芝ブレイブルーパス東京

金色の千両役者は大分のファンを虜に。泥臭く、そして、華麗に勝利を導いた

泥臭いプレーもあり、型破りなプレーもありで、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞のファフ・デクラーク選手。横浜キヤノンイーグルスの勝利に貢献した

序盤からスコアが目まぐるしく動き、効果的に加点した横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)が一時は52対15と大量リード。一方の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は4連続トライで猛追をしかけたが、最後は突き放されて反撃も及ばず。59対48のスコアで横浜EがBL東京を振り切った。

レゾナックドーム大分(旧昭和電工ドーム)に集った5,830人の観衆は、この日のヒーローが誰であるかを知っていた。後半26分、選手の入れ替えでピッチを去るファフ・デクラークにこの日一番の拍手が注がれた。

特に前半はファフ・デクラークの“独壇場”だった。例えば、7対7で迎えた前半8分。ファフ・デクラークが自ら右サイドの相手陣地深くに蹴ったロングキックに対して、自ら猛然とアプローチ。ファフ・デクラークの激しいプレッシャーにさらされたBL東京のトム・テイラーはたまらずノックオンのペナルティを犯してしまう。横浜Eはそこからスクラムを組み、最終的にイノケ・ブルアの逆転トライにつなげた。

世界的名手による泥臭いプレー。本人は「成功するためには泥臭いプレーも必要だよ」と素っ気なかったが、チームメートの梶村祐介はこう言って目を細めた。

「ファフ(・デクラーク)は常にハングリーな姿勢を見せてくれていますし、アタッキングマインドを持った選手。彼のそうした姿勢から学ぶことで、チームの良いサイクルにつながっています」

さらに圧巻のビッグプレーが飛び出したのは前半37分。相手のダブルチームでのタックルに自ら飛び込む格好となったファフ・デクラークは体をのけ反らせながらも、マックス・ダグラスにパスをつなぎ、BL東京を突き放すトライを演出した。ファフ・デクラークが自身のビッグプレーをこう振り返る。

「直感で逆立ちのような形になりましたが、あきらめずに判断したことがトライにつながりました。(マックス・)ダグラスの声が聞こえたかって? ボールを放せる選手に対して、ボールを放しただけだよ」

逆転勝利に貢献したファフ・デクラークは、プレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞。ピッチを去る際に降り注いだ万雷の拍手が象徴するように、現役南アフリカ代表は大分のファンを虜にした。

(郡司聡)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスB)の沢木敬介監督(右)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「前半は自分たちが準備してきたことを発揮できていましたし、チームのためにプレーしている時間帯が続いていたので、良いゲームコントロールができました。ただ、後半の最後の20分ぐらいは、まだまだ負け犬根性の悪い習慣が残っているなと思いました。せっかく大分でスカッとした試合をファンの方々に見せられると思ったのに……。試合後のロッカールームではみんながスッキリしない顔をしていましたが、まだまだ甘さがあるということ。上位4つに食い込んでいくようなマインドセットをハングリーに突き詰めていかないと。最後の20分間のようなプレーをして喜んでいるチームにはなりたくないので、来週からまた引き締めて、勝てる準備をしていきます」

──試合終了の瞬間は非常に険しい表情をされていました。あの時の心境は?

「一種のボディーランゲージです。後半の最後の20分ぐらいはあれだけやられたので、最後にもう一度トライを取りに行くぐらいの闘争心が見られればもっと良かったです」

──熊谷スポーツ文化公園ラグビー場での埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)戦は負けましたが、満足された表情をしていたように見えました。今回はそうではなかったように見えましたが、何か納得のいかないことがあったのでしょうか。

「僕だけではなく、見ている方々が最後の展開を見て、われわれの選手たちから何か感じるものはあるかというと、ないと思います。ボディーランゲージは悪いし、ネガティブなプレー選択をするし。プレーの質というよりも、マインドセットの強さみたいなことは、埼玉WKとの試合では感じました。毎試合、そういう思いの強さを感じられるようになっていかなければならないと思っています」

──バイウィークがあった中で、チームとして重点的に取り組んできたことは?

「毎試合そうですが、自分たちが戦術やメンタルをコントロールできるように、また、勝つための準備をすることにはチームとしてこだわってやっています。今週だからどうこうということではありません」

横浜キヤノンイーグルス
梶村佑介キャプテン

「監督と同じで、前半はクオリティーの高い、ディフェンスでも我慢し続けられる良い40分だったと思います。ただ、後半は自分たちの弱さが出たと感じています。リードしている展開の中で、徹底的に相手をつぶすことがまだまだこのチームはできないなと感じました。東芝ブレイブルーパス東京さんは昨季トップ4の相手ですが、もっとクオリティーの高い試合になったときに、それで勝てるのか、ということを突き詰めて、練習から一つひとつクリアにしていきたいです」

──前半4分のジェシー・クリエル選手のトライにつながった、相手のアタックを田村優選手とともにタックルで阻止した場面を振り返ってください。

「覚えていないですね……。ただ、ジェシー(・クリエル)とは常につながってプレーしようと話していますし、今日の試合も頻繁に良いコミュニケーションが取れました。試合を重ねるごとに二人のコンビネーションは良くなっているので、これからも引き続き、継続してできるようにやっていきたいです」

──勝ちはしましたが、反省点の多い試合でした。来週に向けて、どんな準備をしていきたいですか。

「やることは毎週変わりません。やってきたことの精度を上げていくこと。そして、今日出た課題の部分はチームとしてのそれもありますが、個人としてのパフォーマンスのことを選手がもう一度考え直して、週明けから準備をしていくことが大事かなと思っています」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(左)、德永祥尭 共同キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「まずは横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんにおめでとうと伝えたいです。ゲームの入りが大事になると認識していましたが、まさに横浜Eさんが良い試合のスタートを切りました。それによって、自分たちがプレッシャーにさらされて、ミスをつけ込まれました。自分たちのラインアウトも相手のプレッシャーにさらされました。7本のラインアウトも取り切れませんでした。このレベルの試合でそうなってしまうと、自分たちのプレーをできるチャンスがなくなります。後半に勢いを取り戻せたことは、選手たちを誇りに思います。自分たちの本来の姿を見せられたことは良かったです。一番学んだことは、自分たちが相手のプレッシャーにさらされる状況に追い込まれないことです。コーチ陣としては、自分たちを見つめ直して、どう準備していくか、今後の対策をしていきたいです。その中でしっかりと対応策を実行していきたいです。大分には初めて来ました。素晴らしいスタジアムでラグビーをプレーできたことをうれしく思っています。街の方々がサポートする姿を見ることができたのもうれしく思います」

──ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)がうまくいかなかった原因は?

「自分たちでランを選択する場面と、キックでスコアを取りに行く判断の部分だと思います。普通にキックをするべき場面でそう判断しないこともありました。カウンターアタックから、相手に多くのチャンスを作り出されてしまいました。横浜Eさんはカウンターアタックでスピードを出し、ブレイクダウンを狙ってきました。それらが自分たちに勢いをもたらすことができなかった理由です。後半に見せられたボール保持からの速いブレイクダウンができたときは、自分たちのプレーを発揮できることを見せられたと思います。ボールを速く出せないときにどういうプレーをするか。その判断はもっと良くしていかないといけません」

東芝ブレイブルーパス東京
徳永祥尭共同 キャプテン

「ヘッドコーチの話に付け加えると、前半から入りの部分で相手のプレッシャーを受けました。後半のブレイクダウンはテンポ良く出せましたし、後半のようにスピードをもってプレーできていたら、自分たちの得点力を生かすことができたと思います。また横浜キヤノンイーグルスさんの最初のブレイクダウンファイトでプレーを遅れさせられる場面がありました。その結果、良いアタックができませんでした。また(田村)優さんと(ファフ・)デクラーク選手のキックの使い方がうまかったと感じました。自分たちのミスから得点の機会を失ってしまったので、府中に帰ってから、自分たちのことを見つめ直して、今後に向けて修正していきたいです」

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