2023.03.04NTTリーグワン2022-23 D1 第10節レポート(横浜E 22-22 静岡BR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第10節
2023年3月3日(金)19:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
横浜キヤノンイーグルス 22-22 静岡ブルーレヴズ

追い込まれてからの同点劇
そこにあったのは、昨季との違い

前節・今節と連続トライ。横浜キヤノンイーグルスの竹澤正祥選手

今季初のナイトゲームとなった横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)と静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)の一戦は、終了間際にドラマが待っていた。22-22で迎えた後半39分、ホストチームの横浜Eは相手のオブストラクションのペナルティからショットを選択。しかし、小倉順平のペナルティキックが左に外れたために勝ち越せず。22-22のドローで熱戦を終えた。

ホストチームの横浜Eは追い込まれていた。後半32分、相手のクイックリスタートからのアタックを阻止できず、スコアはついに15-22と、試合をひっくり返されてしまった。残り時間は10分足らず。それでも、横浜Eフィフティーンの気持ちは折れていなかった。竹澤正祥がこう述懐する。

「逆転されても絶対にトライで取り返すぞというマインドでいられたことは、チームとしての昨季との違いです」

失点直後の後半33分、相手のハイパントの落下点に入った竹澤はボールをしっかりとキャッチし、エスピー・マレーに展開。竹澤はそのままフリーランで進撃せずに動きを一旦止めてから再び走り出すと、エスピー・マレーからのリターンパスをそのままトライにつなげた。

さらに横浜Eは小倉が難しい角度からのコンバージョンゴールを決め、試合は再びタイスコアへ。まさに起死回生のトライとなった殊勲のシーンを、竹澤がこう振り返る。

「ボールを展開したあと、一度ステイをして、エスピー(・マレー)がボールキャリーしたところからリターンパスを受ける形は、トレーニングどおりです」

竹澤にとっては、前節のトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)戦に続く2試合連続のトライ。トヨタV戦でリーグワン初トライを奪っていた竹澤にとっては、うれしい“連発”だった。

こうしてチームは劇的に追いついたあと、終了間際に勝ち越す絶好機を得た。ところが、竹澤が「入ってくれと、祈るような気持ちで見ていた」小倉のペナルティキックが左に外れたため、勝ち越しにはつながらず。“秩父宮の熱戦”は22-22のまま、ノーサイドの笛を聞いた。

「チームとして勝つ自信はあった」(竹澤)ものの、結果は悔しいドロー。試合後の会見に登壇した梶村祐介キャプテンは「この結果を成長できる良い機会にしたい」と前を向いていた。

(郡司聡)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスB)の沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「見ている側も、プレーしている側もストレスの溜まる試合でした。われわれのパフォーマンスが良くなかったですし、周りにエクスキューズを求めるよりは、自分たちにベクトルを向けて、もう一段成長できるように、どんな障害があっても力を出せるぐらいにならないと。来週の試合では自分たちで勝てる、納得のいくパフォーマンスを出せるように、自分たちにベクトルを向けてやっていきたいです」

──後半18分にファフ・デクラークと田村優を代えた意図は?

「選手のコンディションもありますし、あとはもっと違う視点を入れようとしました。選手のパフォーマンスが理由ではなく、チームとしてのボールの動かし方とか、もっとクリアな視点にしていかないといけないという必要性を感じたため代えました」

──クリアな視点についてもう少し聞かせてください。

「結果的に流れをもう一度引き戻すことにはつながらなかったですが、出た選手たちはしっかりと情熱を持ってプレーしているように見えたので、そこは評価できると思います。今日は自分たちで首を絞めるような展開にもなりましたし、ブレイクダウン周りをクリアにしないといけないなと。敵は相手じゃないように見えました。もう一人いましたね」

──静岡ブルーレヴズのクワッガ・スミスについてはどう感じましたか?

「素晴らしい選手ですね。嶋田(直人)もジャッカルを決めましたが、まだまだネームバリューで負けているということでしょう。本人は『頑張る』と言っていましたが」

──先ほど話に出た、障壁を乗り越えて勝っていくためには何が必要だとお考えですか。

「ネームバリューでしょうか。冗談ではなく真面目に言っています。周りから下に見られていることはあると思います。『実力がある』と周りに認めてもらえるようにシンプルに強くなっていくしかありません」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「タフなゲームになることは分かっていた中で、自分たちが用意してきたことを発揮できなかった試合でした。チームメートにも話しましたが、また自分たちに矢印を向けて、来週の試合に向けてやっていこうと気持ちを新たにしました。自分も含めて、一人ひとりのパフォーマンスを見つめ直して、個人としても、チームとしても、成長できる良い機会にしていきたいです」

──先制されて逆転して、追いつかれて、勝ち越されるという展開でした。チームに対しては、どんな声掛けをしていましたか。

「ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)周りをクリアにしようという話はしていました。自分たちでボールを持つ中でブレイクダウンをジャッカル(タックルで倒れた選手からボールを奪うプレー)されて流れを断ち切られるような形になっていたので、慎重に敵陣でプレーをしようと話していました」

──同点に追いついたあと、もっとチームを勢いづかせるために、何が足りなかったのでしょうか。

「自分たちがボールを持つ中で、簡単にボールを手放すこともありました。また点差や時間帯を考えてプレーを選択できなかったことは、自分の判断でしたが、僕自身の反省点でもあります」

──いろいろと選択肢がある中で、22-22の状況で小倉順平選手のキックを判断した理由は?

「点差と時間を考えてショットが一番正しい判断かなと思いました。また、ラインアウトもうまくいっていなかったので、その二点を踏まえて決断しました」

──後半の攻勢に出た中で最終的に追加点を奪えなかった原因は?

「たらればですけど、ショットを選んでスコアを重ねていくことも有効な選択肢だったかもしれません。ラインアウトを選択したのも自分ですし、80分の中で最適な判断ができないことは、まだまだ僕自身の未熟な部分です。こういう競ったゲームになると、ショットで点を重ねていくことが良かったのかなと。今季はスコアを取れそうで取れないことが多いので、そういったときにこだわり過ぎるのではなく、割り切ってショットでスコアを刻んでいくことが有効だということが、今日の学びになりました」

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)の堀川隆延ヘッドコーチ(右)、クワッガ・スミス共同キャプテン

静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ

「80分間、両チームともに素晴らしいゲームを展開してくれました。観ているお客さんはラグビーの面白さを感じ取れるようなゲームだったかなと思います。われわれの総括としては、ラスト10分でリードしたけれど、勝ち切れませんでしたし、そういうゲームが続いています。今日も勝つチャンスはありましたが、勝てなかったので、映像を振り返りつつ、選手と対話をしながら、ラスト10分をどうしていくか、改善に取り組んでいきたいです。ただ、選手たちは非常に成長していますし、まだまだ成長できると思っています。また次の試合も、チーム一丸となって、準備をしていきたいと思います」

──ポジティブな面はあったと思いますが、最もポジティブだと思われている点は何でしょうか。

「アタッキングチームである横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんに対してディフェンスが素晴らしかったですし、全員がつながり合って、相手に良いプレッシャーを掛けることができました。ディフェンスは本当に良かったと思います」

──ラインアウトはいかがでしょうか。

「前半は相手陣地に入って3つのロストがありました。ただ、ハーフタイムにも話をした効果があったのか、後半は少し修正できたと思います。相手もいることなので、今日の反省点を次に生かしていきたいです」

──クワッガ・スミスについて。

「素晴らしい、その一言です。それ以外の言葉はありません。インターナショナルなプレーを毎試合見せてくれることで、クワッガ(・スミス)選手には申し訳ないですが、そんなに体の大きくない選手が夢を与えるプレーをしてくれています。日本ラグビーに素晴らしい貢献をしてくれているので、毎試合尊敬しています」

──リザーブメンバーの構成の意図について。

「今日はフォワード勝負になるだろうと想定していました。結果的にフロントローの3選手を使う形にはなりませんでしたが、タフなゲームになるだろうと、今回のような陣容で臨みました」

──ディフェンスではどのような準備をしてきたのでしょうか。

「ショートウィークだったので、横浜Eさんのすべてをカバーはできませんでした。横浜Eさんがどうこうではなく、先週の試合をしっかりとレビューした中で、どう課題を克服していくかにフォーカスをしていました。横浜Eさんはセットプレーからいろいろなしかけをしてくるチームでもあるので、一人ひとりがコネクトすること。前に出てプレッシャーを掛け続けること。また二人で接点にいくことにこだわりました。特段、何かを準備してきたことはないです。今季のディフェンスは良くなっています」

──あらためて、クワッガ・スミスはどんなキャプテンでしょうか。

「クワッガ(・スミス)選手は背中で見せるリーダーですし、一人ひとりが自分の仕事に集中することの重要性を示してくれています。そういった意味では、選手たちはクワッガ(・スミス)選手のプレーを見て、成長できていると思います。また十分にキャプテンとしての責任を果たしています」

──アーリーエントリーである家村健太の評価はいかがでしょうか。

「横浜Eというトップ4に入るようなチームとプレッシャーの掛かる試合で素晴らしいリードをしてくれました。ただ、もっと大胆にいっても良いかなと。いまは大学4年生ですが、もっと思い切って挑戦することが今後の成長につながると思うので、繰り返しになりますが、もっと大胆にやってほしいです」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス共同キャプテン

「難しい試合となりました。最後の時間帯で勝つチャンスを失う試合が今季は続いています。今後は修正していきたいと思っています。横浜Eという相手に対して、素晴らしいパフォーマンスを見せることができましたし、ご来場いただいたみなさんには喜んでいただけるゲーム展開だったとも思っています。チームに戻ってからは、良かった部分や悪い部分を話し合いながら、勝ち切るという課題を解消して、次に向かっていきたいと思います」

──プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた感想は?

「たくさんチャンスを作れましたし、前半はラインアウトで相手から厳しいプレッシャーを受けたことで難しい試合を強いられましたが、選手たちはそこから盛り返して、良いパフォーマンスを出せました。相手もわれわれのことをとても分析しているなと思いますが、われわれもしっかりと試合の中で修正できたと思います」

──前半のトライは後ろからファフ・デクラークがタックルに来ていました。あの場面を振り返ってください。

「相手どうこうは関係なく、常にチームにとってベストなことをやり続けることを頭に置いてやっています。南アフリカ代表のチームメートと対戦することは不思議な感覚ですが、全力でプレーしました」

──キャプテンをやっていることでプラスになっていることは?

「キャプテンをやり続けることは自分にとって、とてもプラスになっています。心身を充実させてやれています。チームメートには国際舞台でプレーする選手としての模範を示したいです。チームとしては、最後の数分で勝利を逃してしまう悪循環を断ち切れるようにしたいと思っています」

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