2023.03.06NTTリーグワン2022-23 D1 第10節レポート(BL東京 51-12 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第10節
2023年3月4日(土)12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 51-12 コベルコ神戸スティーラーズ

自分を、仲間を、クラブを信じ抜く。
クラブカルチャーを体現する男がもたらした勢い

リーグワン初先発でプレーヤー・オブ・ザ・マッチも受賞。躍動した東芝ブレイブルーパス東京の眞野泰地選手

東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は3月4日、秩父宮ラグビー場でコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)と対戦し、51対12で快勝を収めた。

この試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのはBL東京のセンター、眞野泰地だった。前節までにチームは痛恨の3連敗を喫していたが、眞野は試合前の取材から「自分たちはできると信じている」と言い切っていた。

前半10分、眞野はスピードをつけて相手フォワード2人の間に鋭く突っ込み、一度は倒れてもすぐに立ち上がってさらに前進。約20mのボールキャリーで観客を沸かせた。

待ち望んでいたリーグワン初先発の喜びが表現されたような、ハツラツとしたプレーだった。

「ずっとイメージしていたので。絶対に自分が勢いをつけていこうと。これからプレーオフに向けて勢いが大切になるので、そこは意識していました」

直後のプレーでBL東京がペナルティを取られると、センターの眞野は密集に巻き込まれたウイングの濱田将暉の代わりに左ライン際へ移動する。思いどおりにいかない落胆や、レフリーの判定への確認よりも、相手が狙うエリアをまずカバーする――眞野の試合への姿勢が感じられる動きだった。

後半19分には相手選手のノックオンで両チームに一瞬の間ができたが、眞野は休まずにボールを拾ってスルスルと抜け出してオフロードパス。このプレーが小川高廣のトライにつながった。

「試合中は常に集中して、チャンスは逃さず、ピンチは救えるようにしています。攻守のつなぎ目も意識しています」

また、この試合では12番に入った眞野が前に仕掛けることでバックスラインの勢いを加速させた。これは神戸Sのディフェンスが前に出るよりも横に流すタイプであることを研究した結果でもあった。

「完全に意識していました。相手チームのレビューでその傾向が出ていたので、引いてくるところに対して自分がどんどん仕掛けるというイメージどおりのプレーができたと思います」

厳しいチーム状況でも、なぜ自分たちを信じられたのか、その思いが揺らがなかったのか。試合後、あらためて眞野に聞いた。

「BL東京のカルチャーは熱さ、ひたむきにハードワークするところにある。そこが自分たちの根底にあるので揺るがないです。みんながそこに立ち返って、シンプルにプレーすれば結果が出ると信じていて、それが表現できたと思います」

自分を信じ、仲間を信じ、クラブを信じる眞野。ただひたすらに目の前のプレーに没頭する25歳が、苦しんでいたチームに再び勢いをもたらした。

(安実剛士)

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、小川高廣 共同キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「選手たちのことを誇りに思う試合でした。この数週間は厳しかったのですが、その中でも修正しようとタフにハードワークしてきました。今日の試合はタフにできて、ディフェンスでも良いところを見せられたと思います。自分たちの自信を見せることができました。アタックで一つのチャンスを得たときに決め切ることができたのが素晴らしかったと思います。

当然、ミスもいくつかありましたが、乗り越えることができました。逆境を跳ね返す力を見せることができました。スクラムとラインアウトが良かったので、サム・ワード コーチをはじめとして選手たちのことを喜ばしく思います。

また、小川高廣選手を始めとするリーダーたちがしっかりやってくれたことを誇りに思います。信念の部分を最後まで維持してくれました。梶川喬介選手の100キャップを祝うセレモニーがあったので、こうした形で祝うことができてクラブにとって良い日になりました」

──アタックでセンターから外のところでしかける部分の評価は?

「自分たちとしてはよくできたと感じています。後半にラインの深さを調節して、アタック側がディフェンスにしかけることもできました。選手は自信をもってプレーしたと感じていて、ボールをサイドラインに近いところまで持っていけました。過去の2試合はできなかった部分において適応できました」

東芝ブレイブルーパス東京
小川高廣 共同キャプテン

「今日の試合でロッカーを出るときには、『一人ひとりが100%、自分の役割を果たして、エナジーを出していこう』と話しました。みんながエナジーも勢いもあって、難しい時間もあったのですが、次の仕事、次の仕事と切り替えて、スイッチを切ることなく80分間を戦えたのは良かったと思います。チームに勢いがついたので、また来週から全勝できるように準備していきます」

──先週の試合から修正して、今日の試合で成果として出たところは?

「ラインアウト、ハードワーク……ごめんなさい、タカ(小川高廣)の番でした」(トッド・ブラックアダー ヘッドコーチが横から笑顔でコメント)

「自分で自分の仕事をやれば、達成できるとわかっていたので、自分の役割を明確にしてきました。みんなが集中してやっていたと思います。ここで勝たなきゃいけないという気持ちはみんなにあって、リーダー陣が言わなくてもみんながそう思って試合に臨んだから集中できたと思います。今週の準備は本当に良くて、練習の中でメンバー外の選手たちがコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)さんの絵を見せてくれて、それに対して準備ができました」

──攻撃のリズム、球出しが早くなっていると思いますが、いかがでしょうか?

「自分たちが運ぶべきスペースにボールを運べていて、外のボールキャリアーが強いのでサポートが少なくても出せるようになっているのがすごく良いところだと思います。

ディフェンスでもラインスピードを意識しました。これまでは一体感のあるラインスピードを出せていなかったので、今回はみんなでフォーカスしてやりました。

ライン攻撃では、クボタスピアーズ船橋・東京ベイさん、横浜キヤノンイーグルスさんと違って、神戸Sさんは流すディフェンスだったので、自分たちとしては得意な形だったのかもしれません」

──上位4チームが出場するプレーオフに向けて。現在5位ですが?

「昨季も同じような状況で、そこから後半にチーム状態が良くなりました。シーズン中に成長できるチームだと感じていますし、全員がプレーオフをあきらめてないと思うので、良い方向に向かっていると思います」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスB)のニコラス・ホルテン ヘッドコーチ(右)、日佐和篤 ゲームキャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ

「先週と同じように、自分たちがやるべきではないところにハマってしまったと思います。前半にチャンスを作りましたが、得点すべきところで得点できなかった。スコアボード上でのプレッシャーを掛けられずに最終的に自分たちが崩れてしまう形になりました。

時間が経つにつれて接点で負け始め、耐え切れずにペナルティをして、最終的にカードも出されてしまうと勝つことはできません。本当に今日の結果は残念です。相手チームにプレッシャーを掛けて、良い内容もありましたが、結果を残せなかったことは残念です」

──プレーオフ進出に向けて重要な試合でしたが?

「チームとしてはもちろん、あきらめることはしません。細かい数字は把握していませんが、プレーオフ進出が難しくなったことは認識しています。ただ、自分たちとしては順位表を気にするのではなくて、次の試合に向けて修正していけるか、という部分にフォーカスしたいと思います」

──初スタメンとなった日下太平選手の評価は?

「良かった部分も多かったと思います。最初の20分は敵陣でのプレーが多かったのですが、日下選手がコントロールして、正しいプレーを選択してくれました。最終的にけがで交代しましたが、この経験は彼の将来につながっていくと思います」

──欠場した李承信選手の状態は?

「何日で戻るということは確定していませんが、復帰に向けて進んでいます。現時点で『何節から(復帰する)』とは言えませんが、今季中には戻ってきます。脳震盪についてはクリアしているので大丈夫です」

──急きょナンバーエイトで先発したティエナン・コストリー選手(アーリーエントリー制度で加入)の評価は?

「今日は素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思います。将来につながる内容でした。特に良かったのは、大学からリーグワンのレベルになった中で、この強度でも活躍できたことです。今日の試合の中で課題も見えたと思うのですが、ハングリー精神も強い選手なので、経験を生かしてさらに良い選手に成長してほしいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
日佐和篤 ゲームキャプテン

「(コベルコ神戸)スティーラーズのファンの方々に申し訳なく思います。何が良くて、何が悪かったか。いまはわからないので、帰ってレビューをして、何をしなければいけないのかを見極めて、解決して次に進みたいと思います」

──ディフェンス面の手ごたえは?

「後半10分まで良かったです。ただ、規律のところで、競った試合でイエローカードとレッドカードを出されては勝てないです。アタックではチャンスがあったと思いますし、前半にもう少しプレッシャーを掛けられていればと思います。チャンスがあったけど、つかみ取れなかったという感じです」

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