2023.04.23NTTリーグワン2022-23 D1 第16節レポート(S東京ベイ 39-24 東京SG)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第16節 カンファレンスB
2023年4月22日(土)14:00 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 39-24 東京サントリーサンゴリアス

死力を尽くした“前哨戦”。S東京ベイ、絶体絶命からの逆転劇でPOに弾み

逆転での勝利に貢献したクボタスピアーズ船橋・東京ベイのバーナード・フォーリー選手

もはや絶体絶命──。後半16分にゲラード・ファンデンヒーファー、同18分には谷口和洋がシンビン(10分間の退場)を課せられ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は13人での戦いを余儀なくされた。前半は10対5と5点差のリードで折り返したものの、後半は追い上げられ、逆転を許してしまう。

相手は今季開幕節まで18年間も勝ち星を挙げられなかった“天敵”東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)。後半21分には中村駿太にトライを決められ、得点差をさらに広げられた。イエローの歓声とオレンジ色のため息がスタンドにこだまする中、窮地に立たされたS東京ベイ。万事休すと思われた、そのときだった。

すべてを託された13人は、愚直なまでに前を向き、コツコツと、ときにゴツゴツとアタックを積み重ね、ひたむきに前進を続けていった。そして、テアウパ シオネが手にした楕円球がついにインゴールに到達。バーナード・フォーリーがゴールキックを決めて、あとに続く。試合の表情が、一気に変わった。

「チームみんなでいい仕事をしたと思います。13人になった場面ではしっかりアジャストして、みんなでいいコミュニケーションを取ったことが結果につながったと思います」(バーナード・フォーリー)

まさに怒とうの猛追。残り時間が7分を切ったところでルアン・ボタがトライを決め、逆転に成功。さらには自陣22mラインから一気にフィールドを駆け抜けたゲラード・ファンデンヒーファー、これまで献身的なファイトでチームに貢献し続けてきた末永健雄も得点を重ねた。

「昨年に比べて、強くなれていることを感じています。昨年は試合に波があって負けてしまったこともありましたが、簡単に負けないところは、本当に成長できたと思います」(根塚洸雅)

熱狂のスピアーズえどりくフィールド。劣勢を一気に覆し、ホームでの連勝記録を17に更新。今日よりも明日、明日よりも明後日、進化と成長を続けるために、逆境に直面したときこそ笑顔で立ち上がる。同会場で今季動員レコードとなる5,651人の観衆の前で、S東京ベイはチームとしての生きざまそのものを描き切った。

「非常にタフな試合になりましたが、こうして勝ち切れたことに誇りを感じます」(バーナード・フォーリー)

前半には根塚、デーヴィッド・ブルブリングが立て続けにストレッチャーで運ばれた。後半は、東京SGのデビタ・タタフも戦線離脱。両チームともに大きな代償を払った死闘。

すでに試合前に順位は決定。3週間後のプレーオフ準決勝で両チームが再び相まみえることは、前日の段階で確定済みだった。しかしながら、男たちが死力を尽くした戦いは、この一戦を決して消化試合にはしなかった。

(藤本かずまさ)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、立川理道キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「コンニチワ! 後半、(二人が一時退場となり)13人になった局面で、ここにいる立川理道キャプテンをはじめ、リーダーたちがしっかりと落ち着いてブルーヘッドな状態(どのような状況でも感情的にならず冷静に判断できる状態)に持っていってくれたこと、また13人になってもトライを取れたというところが大きかったと思います。

今日の試合でも、多くの学びを得ました。プレーオフまでの期間で調整し、次の試合に向けてまたしっかりと準備をしていきたいと思います」

──プレーオフトーナメントでも対戦する相手との戦いは?

「まずは1試合1試合が大切です。先々のことを考え過ぎずに、いいプランをしっかりと持つこと。また、今週はショートウィークだったので、しっかりとリカバリーすることに重きを置いてやってきました。今日は、先週のNECグリーンロケッツ東葛戦での学びをしっかりと生かせた試合になったと思います。そして、最終節のスピアーズえどりくフィールドで、良い形で終えることができました」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「ヘッドコーチが言ったように、ゲームの中(後半)にシンビン(10分間の退場)が二人、出た状態がありましたが、前半からゲームコントロールはうまくできたと思っています。前半は風もうまく使いながら、エリアもほとんど敵陣にいたと思うので、そういったところが最終的にスコアにつながったと思います。

後半、二人いない間は苦しい時間帯となり、相手のペースになりかけた部分もあったのですが、13人でスコアができたというのはすごく大きいです。バーナード・フォーリーがスクラムハーフをやってくれたり、フォワードがハードワークをしてくれたり、みんなが一つになって何をすべきかが分かっていたと思うので、そうした中でうまくリードできたところはこれから先のプレーオフに向けてもいい収穫になったと思います。

また、ゲームの中で修正しなければいけない部分があった、学びのあるゲームだったことは間違いないです。もう一度、東京サントリーサンゴリアスさんと試合をすることは決まっているので、開幕戦で当たったときからの成長をしっかりと見せていきながら、一戦一戦、戦っていきたいと思います」

──けがによる交代やTMOなど、中断される場面も多かったが?

「試合が止まっている間は、なるべく早くハドルを組んで、次にやるべきタスクを話せた部分はあります。(中断は)こちらではなかなかコントロールできない部分ですので、そこでフラストレーションを溜めることはありませんでした。次はどうすべきか、という話ができていたので、比較的冷静に対処できたと思います。

後半のゴール前でのペナルティでは、フォワードは少し興奮していましたが、そういったことは試合中には起こりえます。また、それが逆に力になることもあるので、リーダーとしてはマネジメントしていきながら、最後までスイッチオンしながらできたのが最後のスコアにつながったと思います」

──13人で攻めていた局面を振り返ると?

「13人でスコアする前に、1トライか2トライか取られたときに、何を修正しないといけないのかが明確にならないまま、かなりバタバタとキックオフに向かってしまった部分もあったと思います。(13人の局面では)フォワードでボールをキープしながら、また自分たちにボールがあるときはボールをキープしながらアタックしていくということを(明確にしました)。相手のアタックもすごく良かったので、しっかりと13人がハードワークをしなければ、止められないことも分かっていました。一人ひとりがハードワークするということをずっと言い続けました。
本当にベーシックな、一人目がタックルをして二人目がしっかりと絡むところや、少し薄くなったところで相手に一気に乗っかられていたところは、スコアされて気づくのではなく、もっと早い段階で修正しないといけないという学びでもあったと思います」

東京サントリーサンゴリアス


東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、堀越康介 共同キャプテン



東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

「みなさんありがとうございました。また、今日はイエローとオレンジのカラフルなカラーが目立つ、たくさんお客さんが入った中でプレーができたことは、選手たちにとってもすごくエキサイティングだったのではないかと思います。

ゲームには負けてしまいましたが、悔しい部分と自信の部分、この二つを獲得できたゲームだったと思います。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんとの試合は、また3週間後にあります。今日負けたことには、必ず理由があると思います。その理由をしっかりと突き詰めて、この3週間いい準備をして、次は必ず勝ちにいきたいと思います」

──悔しい部分と自信の部分とは?

「悔しい部分は言いにくいのですが、あります(苦笑)。負けたことも非常に悔しいのですが、選手もちょっとフラストレーションが溜まったのではないかと思います。そういう意味で、コミュニケーションと言いますか、そのあたりがクリアだったかどうかというのは、ちょっと確認しなければいけないなと思います。

(試合終盤に)インターセプトされたプレーがあったと思いますが、あれが最終的に大きな結果につながりました。あそこは、選手たちはアドバンテージがあると思って大きく動かしたプレーだったと思います。アドバンテージが出ていたのか、解消されたのか、ちょっと分からないのですが、結果的には試合を決定付けるプレーになりました。そこは非常に悔しいです。

(自信の部分は)クイックにボールを動かしていくというところは、十分に通用したんじゃないかと思います。ここ3試合ずっと雨で、そのようなラグビーができなかったので、久しぶりにボールを大きく動かすダイナミックなアタックができたと思います。そこについては本当にS東京ベイさんにも十分に通用したところです」

──数的優位の場面で得点を取られたことは?

「そこは負けた理由の一つだと思います。次に向けてしっかりと直していかなければいけないと思います。あの時間帯は自分たちが主導権を握っていたと思うのですが、エアーポケットと言いますか、そういう時間になってしまいました。気を抜いたわけではないと思うのですが、そういう時間帯になってしまいました。そこでS東京ベイさんが割り切って、ラック周辺を攻めてきました。そこに対して少し、パッシブ(受け身)になってしまった部分はあったと思います」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介 共同キャプテン

「率直に悔しい気持ちが一番大きいのですが、もっともっと自分たちができる部分、ここは改善しなければいけないという部分も多々あったので、バイウィークを挟んで、小さいところだと思うのですが、しっかりと精度を高めて(プレーオフトーナメントの)準決勝でリベンジしたいなと思います」

──数的優位な場面で得点を取られたことは?

「相手にシンビンが二人出ていて、そこでトライを取られるというのは、精神的にもきたと思います。(イエローカードが)2枚出ている中でどういった戦い方をしなければいけないのか、そこはもっと自分たちがうまくできたと思う部分もあるので、反省していきたいと思います」

──相手のプレッシャーの強さについては?

「やはりS東京ベイさんは一人ひとりが強いです。モメンタム(勢い)を生もうとするプレーなので、そこに対して僕たちは一人目がチョップタックル(低いタックル)、二人目がバインドすることを意識してやっていました。全体的には良いディフェンスができていたと思います。もちろん僕たちもめちゃめちゃキツかったのですが、前半のスクラムでの(相手の)息の荒さだったり、コミュニケーションの少なさだったり(を見て)、これはいけるなというフォワードの共通認識を持っていました。ただ、勝ち切れなかったのはやはり、僕たちの甘さや、勝負どころの大事なプレーによるところだと思います。前半のディフェンスの部分は、まったく問題なかったかと思います」

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