2022.12.20NTTリーグワン2022-23 D2 第1節レポート(日野RD 48-26 釜石SW)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第1節
2022年12月17日(土) 12:00 武蔵野市立武蔵野陸上競技場 (東京都)
日野レッドドルフィンズ 48-26 釜石シーウェイブスRFC

記録更新の44歳・スクラム職人、「とにかく親に感謝」

44歳の久富選手(日野レッドドルフィンズ)。右は箕内拓郎ヘッドコーチ

ホーム開幕戦、日野レッドドルフィンズはシーズンを順調に船出した。ファーストスクラムからフォワード戦で優位に立つと、前半4分過ぎにはスタンドのファンが手拍子で後押しする中、ゴールラインに迫り、モールからバックスに展開。川井太貴、ティジェイ・ファイアネとつないだボールをオーガスティン・プルに戻して先制トライを奪う。同13分には右サイドのラインアウトをローリー・アーノルドが確保すると、そのままモールで前進し、最後は郷雄貴がトライ。フォワードを中心に前半で一気に試合の主導権を握り、押し切った。

そんなフォワードの結束力は左プロップの久富雄一がこの日44歳4カ月6日で先発出場し、公式戦での最多出場記録と最年長出場記録を更新したことが源だったかもしれない。チームメートから「ドミさん」と親しみを込めて呼ばれる44歳は、この日も「スクラム職人」としての強さを発揮。ファーストスクラムでは釜石シーウェイブスRFCのコラプシングを誘発したが、「レフリーがどういうスクラムだとペナルティーを取るか、の線引きを把握するのが最初のスクラムでは大切」とレフリーともコミュニケーションを取りつつ、体全体に情報のアンテナを張って相手のどこを押せば圧力が効果的に伝わるのかを察知し、日野レッドドルフィンズのスクラム全体をリードした。後半16分にフォワード第1列の3人が同時に交代し試合を退いた際には、フッカーの郷雄貴と右プロップの浅原拓真とがっちり握手。自分の仕事をやり抜いた男たちの充実した表情が印象的だった。

試合後会見ではワラビーズ(オーストラリア代表)のローリー・アーノルドも、最初に「ものすごい記録。ただ出場するだけでなく、しっかりとチームに貢献できている。本当にすごい選手です」と話し、久富の記録更新を祝福。一方で久富自身は「キャップ数や年齢はまったく気にしないので、今日もいつもどおりに自分のプレーをしっかりやろう、と。毎試合チームの勝利に自分の仕事でどれだけ貢献できるかが大切なので、それを続けていきたい」と至って謙虚に話したが、記者から「長くやれる秘訣は?」と質問されると「とにかく親に感謝ですね」と満面の笑顔を見せてくれた。今後出場するたびに記録更新となるが、まだまだこれからもフォワードの中心選手としての活躍を見せてくれるに違いない。

日野レッドドルフィンズの次戦はアウェイで豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦。12月25日(日)14時30分にパロマ瑞穂ラグビー場でキックオフされる。

(関谷智紀)

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの箕内拓郎ヘッドコーチ(左)、オーガスティン・プル 共同キャプテン

日野レッドドルフィンズ
箕内拓郎ヘッドコーチ

「前半は、今季われわれがやろうと取り組んできた内容がしっかり出ていた試合だった。新しい形、新しい日野レッドドルフィンズを発信できた。後半は、自分たちでプレッシャーを掛けた部分もありモメンタム(勢い)を失い得点を許す展開となったが、最終的にボーナスポイントを獲得した上での勝利という結果を手にできたのは収穫。後半については、どういう理由でモメンタムを失ったのかについては学びにし、来週の試合に臨みたい」

──フォワードの戦いぶりはどう評価していますか?

「われわれは個人ではなく組織として戦っていくチームなので、スクラムやラインアウト、モールといったユニットのプレーについては、チームのモメンタムを出す意味でも重要なプレーのため重点的に強化してきた。組織で戦うという部分をこれからも前面に出していきたい。縦横無尽にモールがたくさん動いたという意味では、しっかりスキルを使ってアタックしていくところが見ている人にも伝わったと思うし、“新しい日野レッドドルフィンズ”として発信できたと思う。まだまだシーズンは続くが、初戦で結果を出せたことは自信になる」

──ローリー・アーノルド選手加入の効果は?

「高さはもちろん、ラインアウトに関する知識や取り組みでラインをリードしてくれ、われわれに新しいものを与えてくれている。インターナショナルのスタンダードというものを示してくれるのはとても助かっている。ローリー・アーノルドと北川俊澄アシスタントコーチがしっかりコミュニケーションを取り、どういう形で進めるのか話し合った結果が今日の試合で形となっていた。最後のプレーとなったラインアウトでも、ローリー・アーノルドの存在が相手チームにとってかなりのプレッシャーになったとも感じている」

──モールで押し込むシーンなどファンを沸かせるプレーも多かった。

「組織としてラインアウトモールに力を入れてきたし、試合の流れの中で相手にシンビン(10分間の退場)の選手が何人か出たことで、そういうオプションを有効的に使っていこうという意味では、選手も良いプレー選択をしてくれたと思う」

──この試合に向けてどんな対策をしてきたか、また釜石シーウェイブスの印象は?

「分析よりも自分たちがやってきたことをしっかり出すことが一番大事な試合だった。昨季の最終戦で負けた相手でもありディビジョン2の相手はどこも強いと評価している。一戦一戦が大事な試合だという認識で臨んでいる」

──前半と後半で流れがガラリと変わった。どう感じていて、また昨季との違いは感じているか?

「どれだけシステムに従い組織で戦っていくか、という重要性を今日学んだと思う。後半はミスが目立ち始め、ハーフタイムでロッカーに勢いを忘れてきたのかな、という印象だった。前半は組織的に規律よく守れていたのでそこは後半も含めてしっかりプレーしなければいけないし、まだまだ改善すべき余地はある。ただ、昨季であればもしかしたら(後半の戦いで)ひっくり返されていたかもしれない。そこで踏ん張ってトライを取らなければいけないシーンでトライを奪い、ボーナスポイントを取れたのは大きい。ただ、一言でいえばラクに勝てる試合は1試合もないと学んだ試合でもあった」

──ホストゲームで2000人以上のファンを前に白星発進できた価値は?

「全員が『いろいろな方に支えられプレーさせていただいている』という気持ちは常に抱いており、感謝を試合でお返しすることができた。今後もたくさんの方々がスタジアムに来てもらえるラグビーをしていきたいし、ラグビー以外の活動を通してもいろいろな方々とつながりを作っていきたい」

日野レッドドルフィンズ
オーガスティン・プル共同キャプテン(スクラムハーフ)

「まずは初戦を勝てて良かった。後半は完璧ではなかったが今日デビューの選手、またドミさん(久富雄一)の最年長記録など記念になる試合で勝ちを贈れたのはとても良かった。ファーストトライはフォワードが頑張ってくれたからこそ。いい形でバックスが展開できるボールをフォワードが頑張って供給してくれたおかげ。悪かった点はしっかりつぶして来週に行けるようにプレーは見直して臨みたい。自分自身のプレーとしては10点中の5点。まだまだこれから状態を上げていきたい」


日野レッドドルフィンズの久冨雄一選手(左)、ローリー・アーノルド選手

日野レッドドルフィンズ
久冨雄一選手(プロップ)

「いつもどおりの自分のプレーをしっかりやり抜こうとの思いで試合には臨んだ。ファーストスクラムから優位に立つことができ、しっかり試合に入れたのは良かった点。レフリーとコミュニケーションしながら、どこを見られているか、どういうプレーがペナルティーを取られるのか、フォワード最前列の3人で会話しすぐにアジャストすることができた。結果的に点差を見れば良い試合だったともいえるが、スクラムについてはまだまだ改善点はあるので次の試合につなげられるよう取り組んでいきたい。年齢やキャップ数を気にしてはいないが、(リーグ最多試合出場と最年長出場)記録を更新できたのは親のおかげで、本当に感謝している。毎試合チームの勝利に自分の仕事でどれだけ貢献できるかが大切だと考えているので、これからも自分の仕事をしっかりやるだけです」

日野レッドドルフィンズ
ローリー・アーノルド選手(ロック)

「シーズン初戦を勝利でスタートできたのは良かった。ホームゲームで地元のファンもスタジアムに駆けつけてくれる中、誇りに思ってもらえるようなパフォーマンスを見せたいと願っていたので白星を贈ることができ本当にうれしい。ラインアウトではできるだけバックスが相手の最終ラインを抜けられるようなボールを供給することが目的なので、その点をしっかり意識してプレーした。ワラビーズ(オーストラリア代表)の経験を伝えるという点では、日本に来てから『何をやるにしても高いスタンダードを持ってプレーしよう』といつもチームメイトと話している。基本的なことを100%しっかりできるということが大事。基本的なことをしっかり貫いてボールを獲得することが大事という意識を徹底して共有している」

釜石シーウェイブスRFC

釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ

「開幕戦ということで、しっかり準備したことをやろうと話し合って臨んだが、前半はキックを意識しすぎたり浮足立った部分があったりし、スコアを重ねられてしまった。後半はしっかりわれわれの強みを出して自分たちの時間帯も増えたことでスコアを積み上げることができてきたので、そういった部分を80分間継続できれば、という内容のゲームだった」

──前半を終え、後半はどう修正しましたか?

「前半はエリアを取っていこうという形で臨んだが、セットプレーのところでうまくいかない部分があったため、後半はボールをしっかりキープしてアタックする方針に変更して臨んだ。その中で後半は自分たちの形を作ることができはじめ、選手たちがしっかり自分たちでプレーを整理できるような状態になったので、その点は後半の良かった部分と考えている」

──この試合を終え、手ごたえを感じているところは?

「ボールを保持してアタックすればトライを取れるし、ディフェンスでも粘れるところはゴールライン前で粘れていた。『昨季よりは怖くなかった』というのが正直な印象です」

──前半、セットプレーなどでの接点でうまくいかなかった理由は?

「しっかり落ち着いて自分たちの形を作ることを優先にプレーすればゲームも落ち着くと思うし、自分たちのゲームもできると考えている。そういった点で前半は少しパニックに陥った部分もあったのかなと感じている」

──次節は釜石でのホーム開幕戦。意気込みを教えてください。

「ホーム開幕戦をわれわれも楽しみにしている部分が大きいので良い結果を挙げたい。昨季の最後に三重ホンダヒートさんには2点差で負けてしまったが、リベンジをしっかりできるように今日の試合の良かった部分を自信にして来週に向けてしっかり準備していきたい」

釜石シーウェイブスRFC
小野航大キャプテン(ウイング)

「開幕戦ということで難しい試合になった。悔しい結果とはなってしまったが、後半は自分たちの取り組んできた形を出せた時間帯が長く、通用する感触を持って後半40分プレーできたことは次につながる。前半はセットプレーからボールを出せずに起点が作れず、エリアマネジメントできてもボールを失う形だったので後半はボール獲得を増やす意図で、ボール保持エリアを後ろに下げた。風も上手く利用してエリアを取り、ラインアウトも修正できたため楽に試合を進められた、価値あるセカンドハーフだった。次週はホーム開幕戦ということでたくさんのファン・サポーターの方が見に来てくださると思うのでクリスマスに釜石で良い試合を見せることができるように、今日の試合の良かった点を次につなげられるようしっかり準備していきたい」


釜石シーウェイブスRFCのサム・ヘンウッド バイスキャプテン、武者大輔選手


釜石シーウェイブスRFC
武者大輔(フランカー)

「前半はセットプレーから崩れて自分たちの思うようなラグビーができなかったが、後半はしっかりボールをキープしてアタックし、自分たちのシェイプ(形)にすべく取り組んだ結果、最後はたまたま自分がトライを取れた。今季のファーストトライはチーム全員でとったトライだと思っている。前半は反則が多くシンビン(10分間の退場)も二人出てしまうアクシデントもあってアタックする機会がなかっただけで、自分たちがやろうとすることがしっかりできればスコアできるとは思っていた。後半はそのとおりにやれたがまだ改善の余地はある。
釜石シーウェイブスはプレシーズンの試合を重ねるうちにディフェンスが良くなってきており、そこは強みだとも感じていたが、今日に限ってはディシプリンのところで課題が出た。自分たちで自分たちの首を絞めてしまった部分もあるので、規律の部分をしっかり修正して次に臨みたい」

釜石シーウェイブスRFC
サム・ヘンウッド バイスキャプテン(ナンバーエイト)

「試合の入りはみんなも言っているとおりあまり良くなかったが、後半はストロングフィニッシュできて良かったと思う。前半悪かったのはセットプレー、フィジカルでやられたところ、ブレイクダウンになったところと、いろいろある。今後すべての試合でフィジカルは大事になってくるので、その点でも負けないよう準備したい。試合中のケガについては検査結果を待つが、自分の感覚としては来週のホーム開幕戦には間に合う、大丈夫だと思う」

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