2023.03.06NTTリーグワン2022-23 D2 第7節レポート(釜石SW 38-44 S愛知)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2 第7節
2023年3月5日(日)12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
釜石シーウェイブスRFC 38-44 豊田自動織機シャトルズ愛知

昇格の可能性消滅も、頼れるキャプテンは
「最後まで自分たちのスタンダードを高める」

プレー面でも精神面でもチームを牽引する釜石シーウェイブスRFCの小野航大キャプテン

ホストスタジアムの釜石鵜住居復興スタジアムにおよそ2カ月ぶりに戻ってきた釜石シーウェイブスRFC。最後まで粘り強く戦うも、あと一歩及ばず。この結果を受けて、ディビジョン1昇格条件の3位以内の可能性は消滅した。

「勝てた試合だった」。試合後、取材に応じたプロップの高橋拓也と今季初出場のフッカー吉田竜二はそう話した。チームを長く知るベテランたちは目元を腫らし、痛々しい表情で、そろって悔しさを口にした。

キャプテンの小野航大も「今回こそは前に出て戦い続ける姿を見せたかった」と話すように、前回のホストゲームで大敗した悔しさと、この3月に、東日本大震災からの復興の象徴であるスタジアムで試合をする意味を胸に底力を見せた。今季最初の対戦では50点差で敗れた豊田自動織機シャトルズ愛知に対し、前半からしっかりボールを回しアタックをしかけて、後半は一時逆転に成功した。しかし最終盤、相手にペナルティゴールを重ねられ、再逆転を許す。終わってみれば、わずか6点差の惜敗だった。

今季、試合をこなすごとに手ごたえを感じながらも、なかなか結果に結びつかない苦しい状況が続く。ディビジョン1昇格の条件である3位以内はなくなったが、「自分たちのスタンダードを高めることを最後までしっかりやり続けたい」とキャプテンの小野は前を向く。小野自身はウイングとして今季6トライ目を記録し、現在リーグトップタイとしている。今節もいいポジションで仲間からのパスを受けて2トライを奪う活躍だった。本人はいつも「トライはたまたま。みんながいい形でボールを回してくれただけ」と話すが、仲間からの厚い信頼も結果につながっているのだろう。

試合の後半、一時逆転したあとや自身がトライを決めたあとに組んだハドルの中心で小野は全員に大きな深呼吸を一つ、二つと促し、冷静にチームを鼓舞し続けた。同い年の高橋拓也も、「小野についていけば間違いない。いつも冷静に僕らを励ましてくれる」と話すように、小野はプレー面でも精神面でもチームにとって大きな支柱となっている。

今季のディビジョン1昇格への夢は絶たれたが、「釜石のみなさんを勇気づけられるようなゲームを見せ続けたい」(小野)。ひたむきに進んだ先に見える「勝利」を信じて。釜石での残り2試合を全力で戦う。

(佐々木成美)

釜石シーウェイブスRFC

釜石シーウェイブスRFCの須田康夫ヘッドコーチ(左)、小野航大キャプテン

釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ

「まずは今日たくさんのお客さんに来ていただいて光栄に思っております。そういった環境の中でゲームができたことは、素晴らしいことだと思っています。なんとか今日は勝って(ファンに)勝利をプレゼントしたかった。ゲームの内容も選手たちはよく頑張りましたが、悔やまれるプレーがいくつかあって、そういったところで勝ちを拾い切れなかったという印象です。当然、セットピース、スクラムは少し劣勢だった部分がありますが、それでも優勢にゲームを進めることができたので勝ち点1を取れたことをポジティブに捉えて、また次に向けて準備したいと思いますし、やれると分かった収穫のあるゲームだったと思います」

──今季2戦目の相手。一番フォーカスしていた部分はどこでしょうか?

「今日こそはチームスローガンである『REVIVE』のところ。前節、課題として出たのも起き上がりのところだったので、アタックにしてもディフェンスにしても、もう1回生き返るというところは最大限フォーカスして今日のテーマにして挑みました。そういったところではよくやってくれていましたし、ポジティブに捉えている部分です」

──6点差の敗戦、そのわずかな差を埋めるために大事なことは何でしょうか?

「一人ひとりの規律やプレーの精度。一つミスしたらこうなる、一つ油断したらこうなってしまうというのが分かったので、そういったところを確かめる意味でもそこに気を付けていきたい。知ったことでまたさらに良くなるかなと思います」

──残り試合、選手にはどんなことを共有して臨んでいくのでしょうか?

「勝ち点1を取れたことはポジティブですし、相手はトップ3を争うようなチームなので釜石シーウェイブスRFCもそこに互角に戦えるというのは証明できました。そういうゲームができるというのは収穫なので自信にしてもいいと僕は考えています」

──ショットで得点を狙いにいった展開についてどういう意図だったのでしょうか?

「そこはゲームキャプテンの小野航大に任せている部分で、まずはスコアのところで近づくという判断で3点(を取りに行く)。たまたま、いいポジションでビッグチャンスがあったのかなと。そういったゲームマネジメントもゲームの中でできていたのは良かったと思います」

──6点差は前半の点差の影響が大きかったのか、それとも、後半に追いついてからのペナルティか。敗因としてはどちらが重かったのでしょうか?

「あのタイミングでのペナルティというのは正直特に気にしていないです。その前の段階での流れ、そこでペナルティを重ねてしまったのはもちろんあると思いますが、そういった、きついところでしっかり規律を守るところは確かに大事かなと思っているんですけど、その前の展開のところのほうが修正できるかなと思います」

──3位以上に入ることが厳しくなったが、どのように目標を切り替えますか?

「3位がダメなら4位というところになると思います。しっかり目標の方向性を修正して自分たちのベスト、残り試合全部で勝ち点5を取るというところ、ベストを尽くすという先にしかわれわれの成長はないと思いますのでそこに尽きると思います」

──ヘルダス・ファンデルヴォルト選手が今季初出場になりました。

「ヘルダス(・ファンデルヴォルト)に関しては戻ってきてくれてうれしいですし、チームに十分な勢いを与えてくれていたので良かったと思います。今後、どんどんゲームにフィットして活躍してくれればと思います」

──ファンデルヴォルト選手に期待する部分は何でしょうか?

「チームに勢いもたらすことを“モメンタム”というんですけど、ボールキャリーのところやディフェンスもそうなんですが、しっかりボール持たせると長いパスを放れる。そういったところではもう少しコントロールできるようにしてもらって、よりよいアタックができるようにしてほしいと思います」

釜石シーウェイブスRFC
小野航大キャプテン

「前節に続いて自分たちの強みをぶつけるということはゲームの中でできるようになってきたと感じています。今日のゲームを勝ち切れず悔しい思いが強いですが、次に向かって今日の修正点をつぶすしかないですし、細かいところの修正というのがこの短期間でできれば次の2戦、しっかり勝ち切れると思います。トップ3に入ることは難しくなりましたけど、いまできる自分たちのスタンダードを高めるということをシーズン終了までしっかりやり続けたいと思います」

──ひさびさのホストゲーム。どういった思いで臨んだのでしょうか?

「前回のホストゲームは情けないゲームをお見せしてしまって、僕たちが前に出て戦い続ける姿を見せたいという思いがありました。勝つ姿をお見せできれば一番良かったんですけど、最低限、僕たちの戦う姿をファンのみなさんにお見せしたいなと思って戦いました」

──小野航大選手自身は今季6トライ目を記録しました。

「本当に良い形でボールが回ってきたので、チームが外までボール動かせている結果だと思う。僕個人というよりはチームとしてしっかりスペースにボールを運ぶことができているのかなと思います」

──釜石での残り2戦に向けての意気込みは?

「来週は3月12日の試合。3月11日の翌日で特別な思いでチームとしてもゲームに臨みたいと思いますし、ここでプレーする意味、このチームでプレーする意味というのをしっかり共有し、みなさんを勇気づけられるようなゲームになればいいかなと思います」

釜石シーウェイブスRFC
吉田竜二選手

──今季初出場でしたが、振り返ってください。

「腐らずにいつかチャンスが来ると願って練習していたので、こうやってチャンスをもらえたのは、率直にうれしかったです。(勝利まで)あと少しのところだったので悔しい思いもあります」

──3月の残り試合にはどんな気持ちで臨みますか?

「3月にこの釜石鵜住居復興スタジアムでやるということは、震災を経験した人間としては思うところがもちろんあります。その地でみなさんが観に来てくれるところで『これだけ頑張っているんだぞ、みなさんの応援のおかげで頑張れている』というのは体現しないといけないと思います」

釜石シーウェイブスRFC
高橋拓也選手

──今日の試合を振り返ってください。

「前の試合から点差は縮まって良くはなったのですが、勝ち切れたはずの試合だったので悔しい気持ちのほうが強いです。ただ、ここで止まっていてはだめだなと。次の試合勝てるように頑張らなきゃいけないという感じです」

──釜石での残り2試合、大事になってくることは何でしょうか?

「ホストゲームなのでみんなが気持ちを高く持って必ず勝ちに行く、相手を圧倒する、自分たちがこのグラウンドでできるということを思い出してそれを力にして頑張りたいと思います」

釜石シーウェイブスRFC
ベンジャミン・ニーニー選手

──自身、2トライの活躍でした。

「外のスペースのところに立っていて、チームが良い状況を作って僕がトライを取るだけという形でした」

──残りの試合、どんなプレーを見せたいと考えていますか?

「今までと同じくセットピースの中心で、入りの部分を意識して良いスタートができるようにしていきたいです。良いボールキャリーもして良い流れを作れるように頑張っていきたいと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(右)、山口知貴キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「まず初めに本日の試合、素晴らしい天候、そして素晴らしい会場でたくさんのファンの方に応援していただける中でプレーできたことにつきましてこの場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございます。また、この3月というこの時期にこの『3.11』のシンボルであるスタジアムで釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)という伝統あるクラブとたくさんの釜石SWのファンの方々、このような環境でプレーさせていただけたこと、本当にうれしく思っています。6点差というゲームで最後までどちらが勝つか負けるか分からないような展開になりましたが、釜石SWさんの勢いに呑まれてしまったところがこのような展開になったところだと思います。本日はありがとうございました」

──今季、釜石SWとの2戦目。フォーカスした部分は何だったのでしょうか?

「2戦目でお互いの手の内が分かっているということでわれわれ自身がダイナミックにアタックするということ。そこにフォーカスして臨みました」

──6点差の試合。勝因は何だったのでしょうか?

「まずセットピースにつきましてはわれわれのほうがプレッシャーを掛けることができたというところ。そして、アタックが機能しているときはかなりのモメンタムを生み出しながら得点できたこと。そういった点は相手チームを上回れた部分。逆にこのような点差になってしまった要因としては自分たちでの失点。攻撃をしていく中でエラーをしてしまってボールがなかなか継続できない。そういったエラーで自分たち自身を苦しめてしまったという印象です」

豊田自動織機シャトルズ愛知
山口知貴キャプテン

「本日はこのような素晴らしい環境で試合させていただきありがとうございます。また試合を開催するにあたり、ご尽力くださった大会関係者の皆様、ありがとうございました。われわれ豊田自動織機シャトルズ愛知は12年前、この釜石、岩手で起きた大震災、そういう背景があるというのを外国人選手もしっかり理解して、しっかりリスペクトをもって臨みました。観客の皆様が感動する試合をしようと、内容、結果ともにこだわっていきましょうということで臨みました。内容は前半、釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)さんも地道なタックルや迫力ある外国人選手のプレーでじわじわ追いつかれて、最終的には勝ちましたけど、後半の途中まで釜石SWさんのペースで進んでしまってこういう点差になったのだと思います」

──釜石SW相手に苦戦した部分は何だったのでしょうか?

「外のランナー、外国人選手のランナーには苦戦したと思います。そして、(徳野洋一)ヘッドコーチが言ったとおり、自分たちのペナルティ、そして、本当に軽いノックオンなどのミスが目立ってしまった」

──残りの試合の意気込みをお願いします。

「まずは3位以内に入ってディビジョン2での順位決定戦に進むことが大事なところだと思うので、まずはそこを目指します。そのあとの順位決定戦は一戦一戦大事に戦って、ゆくゆくは今年一番大事なのが入替戦なのでそこで勝てるように。ここからの後半戦はペースを上げて、チーム力を上げて頑張っていきたいと思います」

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