2023.03.21NTTリーグワン2022-23 D2 第9節レポート(釜石SW 26-35 江東BS)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第9節
2023年3月19日(日)12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
釜石シーウェイブスRFC 26-35 清水建設江東ブルーシャークス

天国で見守る父へ。片岡兄弟が叶えた夢

初めて公式戦での同時出場を果たした兄の片岡将選手(ボールキャリア)と、そのすぐ左側にサポートにつく弟の片岡領選手

ホストゲーム3連戦最後の試合に臨んだ釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)。今季最多の1247人が釜石鵜住居復興スタジアムで選手の奮闘を見守るも勝利をつかむことができず、悔しさの残る3月となった。

レギュラーシーズン最後の相手は今季、釜石SWが不戦勝以外で唯一、勝利を挙げている清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)だ。釜石SWはしっかりボールを動かしながら攻め込むも最後に細かなミスが相次ぎ、流れをつかめなかった。小野航大キャプテンも「自分たちで首を絞めてしまった。良い形が作れていても準備したプレーではないプレーが出てしまった」と振り返った。このあと、控える順位決定戦と入替戦に向け、どんな場面も自分たちのプレーに自信を持って遂行できるか。チームの立て直しが急がれる。

一方でこの試合ではある「夢」が実現した。兄・片岡将と弟・片岡領の「片岡兄弟」が公式戦で人生初めて同時にピッチに立った。前節もその瞬間に注目が集まっていたが、後半、味方選手のシンビンが重なり、結局は領から将への兄弟バトンタッチ交代で同時出場は「お預け」となった。今回は後半29分に将がピッチに投入されたことで同時出場が実現。領は「やっと来たかという感じだった」。将は「長くラグビーをやってきてこんな日が来るのだと不思議な気持ちだった」とお互いの顔を見ながらはにかんで答えた。

片岡兄弟にとって大きな存在はいつも熱心に応援してくれたラグビー好きの父だという。一番の応援団だった父だが4年前に病気で他界。当時大学生だった領はショックを隠せず、ラグビーをやめることも考えたそうだが、そんなときも兄の支えが力になった。

去年の合宿では自ら同部屋を希望するほどの仲良し兄弟。弟の領は兄の将を「師匠のような存在」と慕うように、幼いころから一緒にラグビーに取り組み、どんなときも切磋琢磨してきた。「二人が公式戦のピッチに同時に立ったことについて、父は特別に何か言うわけではないと思いますけど、うれしい顔はしてくれていると思います」(片岡領)。

父の命日でもある3月に新たな一歩を踏み出した「片岡兄弟」。父も次こそは勝ち試合の中で輝く彼らの姿を期待し、二人を見守ってくれているかもしれない。片岡将と片岡領。二人はこの日の思い出を胸に、いま、苦しむチームの力になっていく覚悟だ。

(佐々木成美)

釜石シーウェイブスRFC

釜石シーウェイブスRFCの須田康夫ヘッドコーチ(左)、小野航大キャプテン

釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ

「今日は総当たりリーグ戦の最終戦(※第10節は日野レッドドルフィンズとの対戦で不戦勝)、ホストゲームということで素晴らしい環境でラグビーできたこと非常に光栄に思っております。ゲームの内容としましてはみなさんが感じているとおり、われわれのミスで負けてしまったというところが大きいと感じています。アタックでしっかり崩せている部分はあるけどもそこでプレーのチョイスで攻め急ぎ、焦りもあったかもしれませんが、そういったところで勝ちを拾い切れなかったというゲームでした。次、順位決定戦がありますけどそこでしっかり勝って、また一つ順位を上げて入替戦までしっかり準備できればと思っています」

──総当たりリーグ戦が今日で終わったということで、ここまでの総括をお願いします。

「非常にフィジカルなディビジョンで、その中でわれわれは互角以上に戦えたというわけではなかったと思うんですけど、われわれの強みを出して、昨季の総当たりリーグ戦でのトライ数を見ていただければ分かるんですが、得点能力というのは飛躍的に改善しました。そういった攻撃が通用するという部分は、今季10節までできませんでしたけど、非常によく伸びた部分かなと思ってポジティブに考えている部分でもあります。またディフェンスのところはまだ課題が残る部分ではあるので、そういったところでは修正ポイント含めて最後、まずは順位決定戦、入替戦とわれわれのレベルアップした集大成を皆さまにお見せできればと思います」

──重点を置くべき修正点はどこですか?

「ディフェンスのところであったり、プレー選択に対しての意図というか、最終的にどこで取り返すのかであったり、どうやって取り切るのかという部分の意図が少しないのかなと感じます。例えば今日、風下で、風の流れ的に右に蹴ってみることや最終的に何をどこでどうターンオーバーしたらいいのか。ディフェンスするにしても我慢し切れないというようなところは見えた部分だと思っています」

釜石シーウェイブスRFC
小野航大キャプテン

「細かいミスとペナルティで、自分たちで自分たちの首を絞めてしまった印象です。ホーム3連戦の最終戦だったので、なんとか勝つ姿をみなさんにお見せできればよかったのですけど、情けない試合になってしまって申し訳ないと思っています。次も(順位決定戦で)清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)さんとの試合なので、修正すべき点をチーム全員で修正して、次こそ勝てるように準備したいと思います」

──今日の試合後にチームで共有したことはどういったことですか?

「最後のハドルで話をしたのは、今日のゲームに臨む態度、それが江東BSさんは上回っていたのかなというのは伝えました。あとはプレーのチョイスやペナルティなど細かいちょっとしたことを変えるだけで、今日のゲームの中で大きく変わったと思います。総当たりリーグ戦をとおして失点が多かったですし、ディフェンスの部分や、アタックのプレーチョイスのところ。『自信を持って、自分たちのアタックをしましょう』と話をしてやってきたので、自分たちが持っているもの、自分たちがやろうとしていることを遂行することにもう一度フォーカスしたいと思います」

──毎週、入念に準備を重ねる中、大事なときにミスが出てしまっている要因はどこでしょうか?

「今日は本当に取り急いでしまったというか……。自分たちの良い形が作れている場面があったと思うのですが、そこで自分たちの枠じゃないことをしてしまった。準備したプレーではないプレーが出てしまったので、そのへんはチームとして認識しなければいけないところだと思いますし、そこを修正できればもっといいゲームができると思います」

──今後の試合、キャプテンとしてはどのようにチームを引っ張っていきますか?

「残りの順位決定戦と入替戦でしっかりストロングフィニッシュできるように、いまできる最大限の準備と、いま自分ができる能力、何を身に付けるべきかというところをもう一度フォーカスしてしっかり1カ月準備したいと思います」

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスの大隈隆明監督(左)、マーフィー・タラマイ ゲームキャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
大隈隆明監督

「本日は関係者のみなさん、ありがとうございました。試合のほうは釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)さんに前回の試合では負けていますので、しっかりそこに対してわれわれとしてもチャレンジしようという話と、前節、自分たちがリズムに乗れなかったことがあったので、そこをしっかり修正して今節、自分たちのためにしっかりやりきるというところで調整してきました。その結果、こうしてディビジョン2で試合をして初めて勝利することができたのは本当に選手のおかげだと私自身感じています。本当にうれしく思いますし、選手たちをよくやったとたたえたいと思っています。

来週また豊田自動織機シャトルズ愛知さんとの試合があるので、そこにしっかり勝つ。チームで修正して、来週のホーム最終戦、何としても勝ちにいきたいと思います。本日はどうもありがとうございました」

──今回の試合に臨むにあたりフォーカスした部分はどんなことですか?

「浦安D-Rocksさんと三重ホンダヒートさんとの試合で、2試合とも15個以上のペナルティがあって、2試合ともシンビンが2回ずつ出てしまった。われわれがチャレンジする上で、14人で戦う時間が60分もあってどうやって勝つんだというところをしっかりチームで共通認識しました。この試合に関してはとにかくディシプリンのところを修正しようと。そうすれば自分たちのラグビーが絶対にできるので、ディシプリンのところでしっかりこの試合に向けて修正しました」

──1戦目、2戦目を通し、釜石SWの印象の違いなどありましたか?

「特に印象が違うというのはないんですけど、とにかく勢いに乗せたら手がつけられないチームだということと、相手のスキを突いてくるところ。攻撃力が非常に高いチームだと思っていますので、そこはしっかりと自分たちのディフェンスラインを整えて守り切ろうといところと勢いに乗らせない、80分間勢いに乗らせないというところは話しました」

──負けが続いていた中でどのようにチームをコントロールしてきましたか?

「そこは本当に私自身も何ができたかというのはないんですけど、感触としては選手たちに本当に助けられたと思っています、特に私自身、何もしていないんですよ。試合に負けて選手たちが『自分たちでちょっとミーティングしたい』という話を私のほうにくれまして、時間が欲しいというところで選手だけでトークしてくれてすごく練習の雰囲気も変わりました。下を向いている選手が誰もいなくて、もちろん、今日出ていない選手も含めて、試合のメンバーも含めて負けが続いてるときはチームとして暗い雰囲気になるんですけど、メンバー、メンバー外、全選手がしっかり釜石SW戦に向けて話をしてくれて本当に選手に感謝しかないです」

──また対戦が予定されている釜石SWとの試合に向けて改善したい部分や伸ばしていきたい部分はどこですか?

「同じで、とにかく勢いづかせないところとスキを作らないところは継続してやっていきたいです。今回の試合を踏まえて修正したいのは、ファーストフェーズのディフェンスで大きくゲインを切られることが多かった、1対1のタックルを受けてしまう部分があったのでそこはしっかりもう一度、一人ひとりがしっかり体を当てていきたいと思っています」

清水建設江東ブルーシャークス
マーフィー・タラマイ ゲームキャプテン

「今回、新しいメンバーやけが明けの選手もたくさん出ていましたが、そういった選手がたくさんエネルギーをもたらしてくれたと思います。釜石までの長旅も初めての経験で、それもチャレンジの一つだったんですけど、選手たちはすごくよくやってくれて最終的に勝ちをつかむことができました。次、また短い中でしっかり準備していかないといけないので、それに向けてまたフォーカスしていきたいと思います」

──負けが続いていた中、どのようにチームに声を掛けてきましたか?

「とにかく自分たちを信じるということを常にメッセージとして伝えていました。ほかのチームはウチよりも練習時間が長く、レベルも高い。とにかく自分たちができることを信じて、それを出すだけだということは話をしました。特にメンバーの23人に入っていない選手たちからの後押しも絶対必要だと思ったので、そこも声掛けをしっかりして、チームが崩れないように練習からやっていくことは意識してきました」

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