2023.03.26NTTリーグワン2022-23 D2 第10節レポート(江東BS 3-34 S愛知)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23  ディビジョン2 (リーグ戦) 第10節
2023年3月25日(土)14:30 江東区夢の島競技場(東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 3-34 豊田自動織機シャトルズ愛知

S愛知の歴史を知る男のラストゲーム。最初で最後のハットトリックと、美しき幕引き

3月25日の引退試合で「人生で初めて」ハットトリックを達成した、豊田自動織機シャトルズ愛知の渡邊友哉選手

3月24日、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)は、渡邊友哉の現役引退を発表した。

1997年に地元・西陵高校(当時:西陵商業高校)が全国高等学校ラグビーフットボール大会で優勝をしたことをきっかけにラグビーを始めた。そして、あこがれの西陵高校に入学すると、自身も全国大会出場を経験。大学進学を経て、S愛知に加入した。チーム最長となる在籍11シーズン目、誰よりもS愛知の歴史を知る男の決断だった。

その理由について、「けがなどもあって、数年前から引退は考えていた」と渡邊。しかし、徳野洋一ヘッドコーチの体制に変わったことで、「楽しくて、充実感があった。今季は試合に出るか否かは関係なしに、充実した1年を過ごせたので、区切りをつけることにした」と語った。

そして行われた25日の清水建設江東ブルーシャークス戦。試合前、この試合が彼の引退試合であることを伝える場内アナウンスが流れ、ゲームキャプテンを務めた渡邊が先頭で入場する際には、ビジターゲームにもかかわらず、場内からは大きな拍手が起きた。

この引退試合の舞台で、渡邊は躍動する。ラインアウトモールの流れからトライを量産すると、なんと「人生で初めて」(渡邊)というハットトリックを達成。チームの勝利に大きく貢献した。

試合後には、引退セレモニーが執り行われた。ご家族が花束を渡し、本人がファンへ向けてスピーチ。その後、渡邊を中心に、両チームの選手が記念撮影をした。ラグビーらしい、ノーサイド精神が垣間見える美しいシーンだった。

この一連の計らいについて渡邊は試合後、「ありがたいですね。他チームに対してもこういったことをやっていただけることに感謝しています」と感慨深げにコメントした。

ここで一つの区切りとなる、渡邊友哉のラグビー人生を振り返ってもらった。「楽しかったです。もちろんそうじゃない時期もありましたけど、中学・高校・大学・社会人でいろいろな人と仲間になれたのは、僕自身の大きな財産になりました」

この日起きた出来事から、彼の言葉から、スポーツの存在意義をあらためて感じることができた。

(斎藤弦)

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスの大隈隆明 監督(右)と髙橋広大 キャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
大隈隆明 監督

「本日は関係者の皆様、ありがとうございました。そして豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)の渡邊友哉選手、現役生活お疲れ様でした。試合のほうは、われわれとしてはS愛知さんに昨年から4連敗していまして、なんとしてもここで1勝を挙げて、チームに新しい歴史を刻もうという形で臨みました。しかし、グラウンドコンディションや天候等の影響もありましたし、セットピースのところも思うようにボールが確保できずに、なかなか自分たちの強みを出せず、完敗だったと思っています。ただ、最後まであきらめずに選手がトライを取る気持ちで攻め続けたのは、残りのシーズンにつながると思うので、しっかり反省を生かして、残りの3戦に向けて調整したいと思います。最後に、ホストゲーム最終戦ということで、多くのファンの方に来ていただき感謝しています。残り3戦もファンの方の後押しは選手の力になると思うので、よろしくお願いいたします」

──雨の中でプラン変更はあった?

「ボールを回すエリアを少し広めて、キックで敵陣に入ることを意識したくらいで、それ以外は特に変えずに自分たちのラグビーをしようとしました」

──開幕戦以来の対戦となったが、チームとして成長できた部分は?

「勝ちがついてこない中で、アタックやディフェンスのところでも毎試合出た課題を選手たちが改善しようと取り組んでくれました。結果は出ていないですが、チームとして成長できていますので、あと一歩のところまで来ていると思います。そこを順位決定戦と入替戦の勝利につなげたいと思います」

清水建設江東ブルーシャークス
髙橋広大 キャプテン

「試合関係者の皆様、本日はありがとうございました。自分たちとしては、今回の試合に向けて練習からいい準備ができていて、前節の勝利から自信を持って試合に臨めました。しかし、前半から自分たちのペナルティで得点までいかれるシーンがあったように、自分たちで首を絞めたゲームになって、試合の流れを最後まで持ってくることができずに終わってしまいました。ただ、順位決定戦と入替戦があるので、個人としてもチームとしても最高の準備をして、生まれ変わったと見ている人が思うような良いアタックやディフェンスを練習から求めて、良い状態のチームを見せられたらなと思います。まだ試合は続くので、ファンの方々も引き続き応援お願いします」

──雨の中で普段の試合より難しかった点は?

「自分だけでなくほかの選手も雨の中でプレーしたことはあるし、今週の練習時間も雨が降っていて、今日も想定外の天候ではなかったですが、ペナルティが多くなって自分たちで流れをつかみ切れなかったところが今日の試合で反省すべき点だと思います」

──あきらめずにトライを狙うマインドは今後重要になってくると思うが?

「残り10分で自分たちのアタックを出せた感じはありますが、順位決定戦や入替戦では残り10分でスイッチを入れても遅いと思うので、試合の入りから自分たちのラグビーをできるように、みんなで話し合っていく必要があると思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一 ヘッドコーチ(右)と渡邊友哉 ゲームキャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一 ヘッドコーチ

「本日は雨で気温も低い中、たくさんのファンの方々に来ていただき、また清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)さんの素晴らしい試合環境作りに感謝しております。順位が決まっている中、最終戦を自分たちでどう位置付けるかということで、これまでエンジンがかかり切らない消化不良のゲームも多く、順位決定戦と入替戦に向けてエンジンを稼働させていくきっかけとなる試合にしたいと臨みました。悪天候の中でも規律高く、セットピースや接点の部分で80分間とおしてゲームをコントロールすることができたと思っています」

──初出場の選手が多くいました。

「アーリーエントリーでファーストキャップをとったナイバルワガ セタ選手は、大学トップレベルの天理大学で活躍している選手ですので、実力があることは分かっていました。またチームに合流してからチームのルールやロール(役割)に対して、理解度高く、素晴らしい姿勢でトレーニングに向き合っているということで、チャンスを与えました。本当に80分とおして素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思います。毎週フラットな状態からコンテストしてメンバーを決めています。チャンスがなくても、くじけずに前に進み続けた結果、素晴らしい準備をしてくれたことでチャンスが転がり込んで、素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知
渡邊友哉 ゲームキャプテン

「関係者の皆様、清水建設江東ブルーシャークスの皆様、ファンの皆様、本当にありがとうございました。チームとして、今週は自分たちにフォーカスしてやっていこうと、僕のほうから話をしてやってきました。相手どうこうの前に、自分たちに目を向けて、つながり合っていこうと。そして今日、規律高く、つながり合うところができたと思います。得点を許さなかったところもそうですし、セットピースから安定してボールを出せたのが一番の勝因だと思います」

──ハットトリックを決めた自身のパフォーマンスについて。

「雨だったので、フォワードには『今日はフォワード勝負だぞ』と言っていました。ほかの選手も、モールでトライが取れるようにやっていこうと言ってくれていたので、そこは良かったと思います」

──試合後には盛大な引退セレモニーもありました。

「ありがたいですね。他チームに対してもこういったことをやっていただけることに感謝しています」

──試合後の円陣で言葉をかけていました。

「今週言い続けた『つながり合う』というところで、いままでできていなかった部分が今日の試合でできるようになったと思うので、そこを崩さないように、次に向けて成長していこうと話しました」

──今後の試合や渡邊友哉選手の人生につながる美しい1ページでした。

「そうですね、ハットトリックも初めてだったので、個人的にもうれしかったです。チームや会社、仲間や江東BSのみなさんに感謝したいと思います」

──プレイヤー・オブ・ザ・マッチは自分かなという思いはありましたか?

「いや、特には(笑)。みんながそう言ってくれたんですけど、僕自身としては特に気にしていなくて。引退試合ということで“まずは楽しもう”と思っていたので、3トライもたまたまだったと思いますし、そこまでは考えていなかったですね」

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