2022.12.25NTTリーグワン2022-23 D3 第2節レポート(九州KV 43-34 WG昭島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3(リーグ戦) 第2節
2022年12月24日(土)15:00 ベスト電器スタジアム (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 43-34 クリタウォーターガッシュ昭島

1週間前の悔しさを晴らす強気のトライ。その裏にあったアタックへの確かな自信

ウォーカー アレックス拓也選手

大寒波に見舞われた九州北部。雪の残る中でのホワイトクリスマスイブマッチとなった九州電力キューデンヴォルテクスのホスト開幕戦。ホストチームは43対34でクリタウォーターガッシュ昭島を退け、九州のラグビーファンにクリスマスプレゼントを届けた。

1週間前に味わった悔しさ、そして、イヤな流れを断ち切る選択だった。前半終了間際、敵陣深く、相手ペナルティーで得たチャンス。12対24で12点差のビハインド。ペナルティーゴールでの確実な加点か。それとも、トライを狙い、一気に差を縮めるか。思えば1週間前、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦では逆の立場で逆転勝利を狙う相手の強気に呑み込まれた。

「前節の悔しさを忘れていない。あの悔しさを二度と味わいたくない」(ウォーカー アレックス拓也)

「全員で意思統一をして、自分たちのピックゴー(ラックからボールを拾ってさらに縦に突進するプレー)で取れると話していた」(山田有樹キャプテン)

この強気の姿勢が実り、トム・ロウのトライが生まれ、萩原蓮のコンバージョンゴールも成功。先制しながら逆転を許した前半の流れを断ち切り、後半の逆転劇へと結びつけた。

強気の選択の裏には、確かな自信があった。

「(点を)取られ過ぎ」と赤間勝監督は苦笑いしながらも「力強いフィニッシュが多かった」と攻撃面を評価。九州電力キューデンヴォルテクスと言えば、粘り強い守備からのロースコアゲームが伝統だが、今季は横浜キヤノンイーグルスから加わった今村友基バックスコーチの存在がアタックにも自信をもたらしている。「今村さんが来て、アタックの質も変わったし、みんなが自信を持ってアタックできている」(萩原)。「今季はこういう点の取り合いになっても勝ち切れるぐらいに成長してきている」(ウォーカー)。

自信と強気が生み出した逆転劇。生み出した6トライと勝利で九州電力キューデンヴォルテクスはファンを熱くした。

(杉山文宣)

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ(右)、山田有樹キャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ

「まずは試合の入りで強いプレーをしたかった。それはしっかりできたと思います。でも、クリタウォーターガッシュ昭島さんが前半の中盤以降、強いプレーをしてきてこちらにプレッシャーが掛かりました。先週の反省から、『後半の入りからしっかり強くスタートする』という話をしていたので、経験のある選手たちが態度で見せ、試合をしっかりと締めくくることができたと思うので、そういった選手たちには『ありがとう』と伝えたいです。
次節の中国電力レッドレグリオンズ戦に向けての課題は、クリタウォーターガッシュ昭島さんがプレッシャーを掛けてきたところへの対応です。そこは修正していきたい。キーになるところでプレッシャーを許してはいけない反省がある。プレッシャーを許してしまったことで自陣に入られてしまったところが反省だと思います。先週の反省から、最後、しっかりと試合を締めくくることができたことはよかったと思います」

──注目の山田章仁選手を後半途中から投入しましたが、あのタイミングでの起用の意図は?

「私たちにとってアキ(山田章仁)はスーパースターですし、それは明らかです。チームとしてアキのような選手がいてくれることはすごく幸運なことだと思います。フィールドでの経験だけでなく、オフフィールドでコネクションを作るところやこれまでの3カ月で見せてくれてきた仕事は素晴らしいものです。最後の30分でそれを見せてくれたのは明白だったと思います。コミュニケーション力に長けていますし、周囲の選手に自信を与えてくれる。そういったところをしっかりと示してくれたと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス
山田有樹キャプテン

「まずはクリタウォーターガッシュ昭島さん、本当にありがとうございました。正直な気持ちとしては、まずホストで勝てたことがすごくよかった。前半はちょっとクリタウォーターガッシュ昭島さんの勢いもあり、自分たちのペナルティーから勢いに乗れなかったところがありましたが、後半は切り替えることができた。自分たちがどんどん敵陣に入って、スコアできたところがよかったと思います」

──前半の最後、相手ペナルティー後のラストプレーでペナルティーゴールではなく、トライを取りにいく選択をしました。そこで取り切れたことが勝利の要因の一つになったのでは?

「ショットでいくか、ちょっと迷いましたが、全員で意思統一をして自分たちのピックゴー(ラックからボールを拾ってさらに縦に突進するプレー)で取れるという話になりました。先週の試合の反省(同じような状況からラストプレーで逆転トライを許した)を生かして、今度は自分たちがしっかりとスコアできたところがよかったかなと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也選手

「自分たちはディフェンスに自信がある中で、けっこう相手に点を取られてしまったかもしれないですが、そこは自分たちのミスからだと思っています。なので、そんなにディフェンスで相手よりも劣っていた印象はないですね。でも、当然、僕らとしても修正しなければいけないところもあるし、100点満点のディフェンスではなかったなと思います」

──得点に表れているように力強いフィニッシュを出せる回数は多かったのでは?

「昨季まではロースコア中心で、そういった中で競り負けることもありましたが、今季はこういう点の取り合いになっても勝ち切れるぐらいに成長してきているのかなと思います」

──前節はペナルティーゴールではなくトライを取りに来た相手の圧力に屈してラストプレーで逆転負け。今節、前半終了間際の似た状況で今度は自分たちがトライを取り切りましたが、あの選択について。

「自信が出てきているのが大きいです。もちろん、ショットでいく選択もあったと思いますが、まだ後半の40分も残っていましたし、それなら自分たちには自信があるし、ここで取り切ろうとチーム内で共有できていたと思います。前節のことが頭によぎったというよりも前節の悔しさを忘れていない。あの悔しさを2度と味わいたくない。ここはしっかり取り切らないといけない、勝ち切らないといけないと、ハードに行けた部分はあったかもしれないです」

──九州のファンによいクリスマスプレゼントを贈れましたね。

「応援してくださる方々がたくさんスタジアムに来てくださって、応援されていることを感じることができましたし、うれしかったです。これをもっと続けられるようにしたいです。次節、1月7日の試合は新年最初の試合なので、そこでもよい報告をファンにできるように頑張りたいです」

九州電力キューデンヴォルテクス
山田章仁選手

「山田有樹キャプテンとゼイン・ヒルトン ヘッドコーチがすでに言ってくれたように、最後、勝てると信じてプレーできて、ファンのみなさんに良い試合をお見せすることができて、非常に良かったなと思います」

──開幕戦に出場したい思いもあったと思いますが、今節に向けて自分の中ではどう気持ちを高めてきたのでしょうか?

「(開幕戦に出られなかったぶん)どうしても、ここは出たいと思っていました。九州のみなさんに18年間育ててもらって、いろいろと勉強して帰ってきて、グラウンドの中で感謝の気持ちやラグビーの楽しさを伝えたいなと思っていました。今日はこういう形でみなさんの前で30分ほどですが、プレーさせてもらってチームメートにも感謝しています。ほかにもたくさんの良い選手がいる中で監督、コーチ陣に起用していただいて、感謝を申し上げたいなと思っています」

──九州電力キューデンヴォルテクスのチーム文化がある中で自分がどういうプラスをもたらしていくのか。そこに向けた収穫が今日のプレーの中であれば教えてください。

「勝負どころのスイッチの入れ方とか、今日であれば、逆転したあとの試合運びとか、もちろん、ウイングというポジションですけど、今までたくさん勉強させてもらったので、それをみんなとシェアしながら、試合中もコミュニケーションを取ってよいインパクトを残していきたい。そういう思いで今日はプレーさせていただきました」

──ビハインドの状況での出場でしたが、意識していたことは?

「勝ちを焦らずにプレーしたいなという思いでした。僕自身もそうですけど、チームとしてもどうしても勝ちたい気持ちが先行し過ぎると今までどおりのプレーができなくなることが自分の経験上もありました。それがないようにやってきたことをしっかりと出すだけで、個人としてもチームとしてもそれを心がけました」

九州電力キューデンヴォルテクスの山田章仁選手

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島の岩下和弘チームディレクター(右)、石井洋介キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
岩下和弘チームディレクター

「本日は九州電力キューデンヴォルテクスさんをはじめ、関係者のみなさまのおかげで素晴らしいスタジアムで試合ができたことに感謝したいと思います。われわれとしましては今季、“ランニングラグビー”にフォーカスしてやってきましたが、そのためにポゼッションを上げることを今日は意識して取り組みました。ただ、そこの部分でペナルティーや自分たちのミスで相手にボールを渡してしまった機会がとても多く、そこは次回への課題かなと感じています」

──他チームが先に1試合終えた中での開幕戦でした。選手たちのプレーぶりについては?
「われわれは昨季ちょっと残念な結果に終わっていたので、まずはこの一戦目をターゲットにして取り組んできました。そういう意味では十分に準備して、自分たちのやるべきことを明確にして取り組めた試合だったと思います」

──前半はリードで終えましたが、失点の時間帯は良くなかったのでは?

「そこについてはすべて自分たちのミスですし、改善できると思っていますので、次から、改善していきたいです。そこを抑えることができていれば、今日の試合も十分に勝てるゲームだったと思っています」

──フォワード、スクラムに力を入れてきたということだが、今日の収穫は?

「ミスがありましたし、もっと圧倒できる。もっと圧倒していかないといけないと思っています。そこは強みにして、明確にクリタウォーターガッシュ昭島はセットプレーという認識を持ってもらえるように今後も取り組んでいきたいと思っています」

クリタウォーターガッシュ昭島
石井洋介キャプテン

「前半は自分たちの強みであるフィジカリティーを前面に出して、良いゲームができていました。ただ後半、自分たちのミスによって、自分たちのペースになかなかうまくできなかったことがこのゲームの結果に出たと思っています」

──クリタウォーターガッシュ昭島にとっては今日の試合が開幕戦でしたが、緊張などはありましたか?

「1戦目だからといって緊張は特になかったです。ほかのチームより1週間、準備する時間が長かったことをプラスに捉えて良い準備ができていたと思います」

──前半はリードで終えたが、失点の時間帯は良くなかったのでは?

「プレシーズンでも最初の10分で得失点するケースが多く、練習から『最初の10分、集中していこう』と意識はしていましたが、試合でこういうふうに失点してしまったということは意識が足りなかったということです。練習からもっとリーダー陣から言っていこうと思っています」

──フォワード、スクラムに力を入れてきたということだが、今日の収穫は?

「スクラムとモールについて、昨季からクリタウォーターガッシュ昭島は強みとしてきました。今回の試合でもそこで良い勝負ができているからこそ、こういったゲームになっていると思うので、今後もそこを強みにやっていきたいと思っています」

クリタウォーターガッシュ昭島
小山翔也クラブキャプテン

「前半は良い流れで折り返すことができましたが、後半は入りからちょっと静かになってしまって、自分たちがやりたいラグビーをできていなかった。そこは修正が必要かなと感じています」

──前半はリードで折り返したが、失点の時間帯が良くなかったのでは?

「自分たちの強みであるスクラムの機会が少なかったこと。あとはやりたいアタックができていなかった。そこがもうちょっとできていれば、もっと違った試合にできたのかなとは思っています」

──後半、押し込まれた要因は?

「前半のディフェンスは自分たちのやりたいフィジカリティーの部分を出すことができていましたが、後半は受けるディフェンスが多くなってしまった。もっと前に出て、自分たちの強みを出さないといけなかったと思います」

──次節に向けて。

「自分たちのやりたいラグビーをやり続けること。前半の流れでやれていれば、絶対に勝つことができたと思うので、うまくいかない時間帯があってもそこに立ち戻れるようにしたいです。自分たちのやりたいラグビーをやり続けることにしっかりトライしていきたいです」

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