2023.04.23NTTリーグワン2022-23 D2 4位~6位順位決定戦 第3節レポート(江東BS 10-38 釜石SW)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2 1位~3位順位決定戦 第3節
2023年4月22日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 10-38 釜石シーウェイブスRFC

敵地で響かせた“釜石コール”。28歳コンビが勝利を手繰り寄せた

初のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞。釜石シーウェイブスRFCの10番、中村良真選手

試合終了を告げるホイッスルのあと、選手たちは空に向かってこぶしを高く突き上げた。ビジターの地にもかかわらず、試合後には特に大きな“釜石コール”が響き渡った。釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)は清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)との順位決定戦に勝ち、4位が確定した。

「ひさしぶりに勝って“釜石コール”も聞けたので、すごくうれしかった」。1月14日以来の公式戦勝利に、須田康夫ヘッドコーチもほっとした表情で勝利を噛みしめた。

この日、正確なキックと冷静な判断が光ったのが中村良真だ。試合開始直後のペナルティキックではペナルティゴールを狙うことを自ら選択。これまでの課題だった試合の入りに得点し、チームを勢いづけた。特に前半は風下の難しい状況でありながら試合をとおして5度あったコンバージョンキックの機会はすべて成功させた。「風が強い釜石の環境で普段から練習できていたのが良かった」と自信をもって蹴り込んだ。後半には自らトライも決めて、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに初めて選ばれた。「とにかくチームの勝利だけを考えていた」と強調しながらも、「トライも決めたので最後のほうはプレーヤー・オブ・ザ・マッチをちょっと意識しましたね」と茶目っ気を交えて正直に答えた。

一方、中村と同い年の28歳、伊藤大輝はフッカーとしてセットピースを安定させ、攻撃のリズムを作った。今季序盤はミスが相次いでいたラインアウトだが、この日は安定感があった。「相手より先にしかける意識とスローイングの精度が上がったことが大きい」と地道な積み重ねの成果を大事な試合で発揮した。さらに、得意としているジャッカル(タックルで倒れた相手からボールを奪うプレー)で圧力を掛けるなど気持ちの入ったプレーで勝利を手繰り寄せた。

チームの中では『プレーヤー・オブ・ザ・マッチは中村か?伊藤か?』という雰囲気が漂っていたという。「僕もプレーヤー・オブ・ザ・マッチを狙っていたんですけど、今日は良真にお譲りします」と、伊藤はすぐ隣にいた中村の顔をときおり見ながら笑顔で同級生の活躍を称えた。

フォワードとバックスそれぞれの核を担う同い年の二人は試合前にお互い声を掛け合うのもルーティーンだ。「チームを鼓舞して引っ張るのが僕と大輝だと思って、試合前も『チームが下を向かないようにしよう』という声をいつも掛けあっている。心強い存在です」(中村)

「次はホストゲームで歓喜の“釜石コール”を」。飢えていた勝利でつかんだ勢いそのままに入替戦へと臨む。

(佐々木成美)

清水建設江東ブルーシャークス(D2)

清水建設江東ブルーシャークスの大隈隆明監督(右)、マーフィー・タラマイ ゲームキャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
大隈隆明監督

「本日は関係者のみなさま、ありがとうございました。試合のほうは釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)さんに対してチャレンジして何としても勝ちたいところではあったのですが、釜石SWさんの勢いのあるラグビーを止められず、受けてしまい、釜石SWさんの強みを出させてしまったという印象です。ただ、われわれとしてもまだ入替戦があるので何としてもディビジョン2残留を懸けて、切り替えて臨みたいと思います。本日はどうもありがとうございました」

──直近の試合から選手が大幅に入れ替わりました。重要視したことはどういったことでしょうか?

「セットピースが強い選手を選考したのと、試合が空いた期間に練習試合など重ねて、そこでパフォーマンスが上がっている選手を選考しました」

──セットピース、特にスクラムに関して釜石SWの印象はどんなものをお持ちですか?

「リーグ戦で2試合やっていますので釜石SWさんのセットピースが強いとは思っていました。こちらもベストで一番強いメンバーを集めたのですが、しっかり防ぎきれなかったというのが率直な感想です」

──入替戦で大切にして戦いたいことはどういったことですか?

「特別な雰囲気があると思うので、勝ちたい気持ちが強いほうが勝てると思います。80分間、一生懸命にひたむきに勝ちをつかむために向かったほうが勝つと思います。しっかりそこにチームで準備して、80分間ひたむきに戦いたいと思います」

清水建設江東ブルーシャークス
マーフィー・タラマイ ゲームキャプテン

「フィジカルバトルで負けてしまってチャンスが来たときにも自分たちのミス、ノックオンなどで逃してしまいました。そのミスにつけ込んでしっかりトライまで持っていった釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)さんは称賛に値すると思います。今日出た修正点をしっかり直しながらフィジカルの面も修正しながら、練習でフォーカスしていきたいと思います。私たちも次の入替戦で勝ちたいですし、釜石SWさんの勝利も願っています」

──今日の試合を終えての一番の修正点はどこですか?

「フィジカルのところが第一に修正するべきところです。あとは細かいところは、いい練習を積み上げてこられたのですが、試合になって少し緩く入ってしまったというか、入り切れていない部分があったと思うので、試合に向けての気持ちの作り方が大事になってくると思います。もう一つは規律のところです。自分自身も規律を乱してしまって、最初に相手に3点を取られてしまいました。どれだけボールキープを長くできるかが大事です。レフリーがクリアにコミュニケーション取ってくれましたし、クリアな判断をしてくれたのですごくいい試合だったと思います」

釜石シーウェイブスRFC

釜石シーウェイブスRFCの須田康夫ヘッドコーチ(右)、サム・ヘンウッド ゲームキャプテン

釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ

「今回も素晴らしい環境の中、清水建設江東ブルーシャークスさんのホストゲームで試合ができたことを誇りに思いますし、素晴らしい環境だったと思っています。感謝しております。チームとしてはゲームが止まっていた4週間、しっかり準備し、しっかり自信もつけて挑んだゲームでした。勝利という形で、結果として4位でディビジョン2をフィニッシュできたことはチームとしてすごく良かったと思います。ゲームの内容も、終始コンタクトエリア、ディフェンスで粘れるというところ、かつ、ターンオーバーを前半で6本できたところがいい流れを作ったと感じています」

──試合が終わってから選手たちにはどのような言葉を掛けましたか?

「率直に『おめでとう』ということと、4位でフィニッシュしたことで次の相手も決まりますし、次に向けてまた準備しようという話です。あとは足がつった選手が多かったのでもっと見直しますという謝罪です(笑)」

──セットピースの出来はどう評価しますか?

「安定したスクラムを組めていましたし、それがウチのアタックをいい形で持っていけた要因だと思っています」

──入替戦、また違うカテゴリーとの対戦で大切になってくることはどういったことでしょうか?

「今回もそうなのですが、自分たちにしっかりフォーカスして、自分たちの形に徹底的にこだわることが次のゲームに生きてくると思いますし、さらに良くなるためにもう一度準備していきたいと思います」

──試合後、会場から「釜石コール」が沸き起こっていましたが、どのような気持ちで聞いていましたか?

「声出し応援も少しつずつオープンになってきて、個人的にはひさしぶりに勝って『釜石コール』も聞けたので、やりがいじゃないですけど、すごくうれしかったですし、ファンのみなさんと同じ景色を共有できるように頑張っていきたいと思いました」

──コンタクトエリアとディフェンスの部分で粘れていたということですが、特にどのあたりが前節と違った面ですか?

「やはりスクラムのところは非常に安定していたので、そこでペナルティしなかったことも含めてそういった我慢するところ、特にディフェンスのところでチームとしては規律の部分が良かったと思います。今まではどうしてもスクラムやペナルティで一回自陣に戻されて、そこで耐えてもう一回盛り返すという展開だったのですが、そういったところもなく、自分たちの時間を作れたことが良かったと思います」

釜石シーウェイブスRFC
サム・ヘンウッド ゲームキャプテン

「今季のベストパフォーマンスだと思います。ディフェンスが特に良かったです。試合が空いた4週間フォーカスしていたフィジカル面で成果が出たので、チームメートみんなを尊敬しています」

──ひさびさの勝利どのように噛みしめていますか?

「(日本語で)よかったです。めっちゃ元気!」

──小野航大キャプテンが不在の中での公式戦でした。

「いつもモチベーションを上げてくれるキャプテンなので、小野さんがいないとけっこうロスな感じがしました。でも、今日、チームのサポートとして来てくれて、声を掛けてくれただけで良かったです」

──次の試合へ向けての意気込みをお願いします。

「次の試合がもっと大事な試合になると思うのでやっさん(須田康夫ヘッドコーチ)も言うとおり、自分たちにフォーカスして頑張ります」

釜石シーウェイブスRFC
武者大輔選手

──今日の勝利をどのように振り返りますか?

「規律の部分、ペナルティを与えないところを試合ですごく伝えていて、結果、ペナルティもミスも少ないし、しんどいところで我慢し切れたことが勝因だと思います」

──スクラムはいかがでしたか?

「レフリーと選手の中で相違があったので、『押せるけど、押すのは止めよう。しっかりキープしてペナルティを取られないようにしよう』と、途中から改善して安定したので、セットピースで大きく崩れることがなくいい試合になったと思います」

釜石シーウェイブスRFC
石垣航平選手

──釜石シーウェイブスRFCでの公式戦初トライでした。

「仲間がうまくつないでくれて、最後に取り切れて良かったです」

──入替戦ではどんなプレーを見せたいですか?

「4月からチームとしてフィジカリティーをテーマに取り組んできて、それを今日全員で体現できたので、残り2試合、同じようにやるべきことをやりたいです」

釜石シーウェイブスRFC
伊藤大輝選手

──ラインアウトが安定していました。今季改善できた部分はどういったところですか?

「相手より先にしかけるというテンポの部分はシーズンをとおして良くなってきています。あとはスローインの精度も練習の成果が出ていると思います」

──自陣ゴール前でもいいディフェンスができていた要因はなんですか?

「我慢する時間も試合をとおして出てくると思うので、そこでペナルティをしないで、相手もゲインラインを越えられないとキツいと思います。我慢比べというところは後半入る前に武者選手を中心にみんな全体で共有して臨めたので、良かったと思います」

釜石シーウェイブスRFC
中村良真選手

──最初の得点はペナルティゴールで決めました。ゲームプランはどのような感じでしたか?

「点差の余裕を強く意識して試合に入っていて、劣勢になるとは試合前から思っていました。最初の3点は非常に大事になると思い、僕の判断で蹴りました」

──入替戦へ向けての意気込みを教えてください。

「今季ホストゲームで勝てていないので、ホストの釜石鵜住居復興スタジアムで必ず勝つこと。(入替戦の)2試合を勝ち切って残留を絶対に決めることにフォーカスして臨みたいと思います」

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