2023.12.11NTTリーグワン2023-24 D1 第1節レポート(BL東京 43–30 静岡BR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスA
2023年12月9日(土) 14:30 味の素スタジアム (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 43-30 静岡ブルーレヴズ

急成長を証明する4トライ。“信頼のパス”をトライに変えた日本代表のジョネ・ナイカブラ

4トライを上げてプレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞のジョネ・ナイカブラ選手。「今までも素晴らしい選手でしたが、一段上のレベルに進みました」とブラックアダー ヘッドコーチも称賛

東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は12月9日、味の素スタジアムで静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)を43-30で破り、白星スタートを飾った。

ラグビーワールドカップ2023フランス大会の日本代表で躍動したジョネ・ナイカブラが4トライを奪って、BL東京を勝利に導いた。

ジョネ・ナイカブラは前半30分、右ライン際でパスを受けると素早く加速し、二人のタックルを振り切ってトライ。後半15分と18分にもトライを決めると、圧巻は29分だった。右ライン際でタックラーが迫る中で、相手に近い左足のキックでボールを転がし、自ら拾ってゴールラインに飛び込んで観客を沸かせた。

開幕戦における大活躍にも、ジョネ・ナイカブラは謙虚な姿勢を崩さない。

「うれしく思います。ボールをもらったらフィニッシュするだけだと思って走りました。(トライ王も狙える?)そこまで先は見えていません」

本人は多くを語らないが、トライを取るスキルに加えて、前半34分にピンチを救うタックルを決めるなど、成長を感じさせるシーンを何度も見せた。

トッド・ブラックアダー ヘッドコーチもその活躍を称賛する。

「ワールドカップの前とあとでかなり違います。ワールドカップではチャンスを最大限に生かして、優れたフィニッシャーだということを示してくれました。戻ってきて、自分の能力にあらためて自信を持っています。今までも素晴らしい選手でしたが、一段上のレベルに進みました」

ニュージーランド代表でBL東京に新加入したリッチー・モウンガは「ジョネにボールを渡さないといけないことがわかりました」と楽しげに笑った。

ただ、周囲の高評価にも当の本人は「やることは変わらないです。ハードワークを続けます」と言い切る。

開幕前、今季のチームスローガン「BE THE ONE」について、「僕にとっては信用される人になることだと思っています」と語っていたジョネ・ナイカブラ。チームメートから信頼のパスが届けば届くほど、“謙虚なトライゲッター”はその輝きを増すだろう。

(安実剛士)


東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、リーチ マイケル キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「リーグワンにたくさんのメディアが戻ってきてくれてうれしく思います。リーチ マイケルを含めて選手のパフォーマンスを誇りに思います。静岡ブルーレヴズさんはすごく良いチームと分かっていて、思ったとおり、タフな試合になりました。こちらが得点を取ってもすぐに取り返してきました。また、ゲームの中で素晴らしいプレーが何度も見られたと思います。チームのスタートとしては良かったので、もっともっと素晴らしいことを成し遂げられると思っています。観客もたくさん来てくれて、みなさんの歓声を聞くことができてうれしかったです」

──眞野泰地選手を起用した意図と、今日の評価を教えてください。

「セレクションという意味では、彼を高く評価していることが分かってもらえたのではないかと思います。昨季、彼はポテンシャルの片りんを見せてくれましたが、いまはディフェンダーとしてもボールキャリアーとしてもしっかり能力を見せてくれています。タフで素晴らしい選手です。今季は長い時間をプレーするチャンスがあります」

──今日の試合の中で最もポジティブな部分はどこでしょうか?

「ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)からクイックテンポで攻められたことだと思います。セットピースも安定していて、そこからのアタックも素晴らしかったです。一番誇りに思うのは、ごちゃっとした展開になっても自分たちのペースを取り戻して、勝つ道を見つけてくれたことです」

──リーチ選手をキャプテンにした理由と、今日のキャプテンシーについてはどう評価していますか?

「彼は天性のリーダー、そこに尽きます。誰もが彼を尊敬しています。おそらく最初にキャプテンの要請を断ったのもほかの選手に経験を積ませたいと思っていたはずです。常にチームのことを考えています。キャプテンを快諾してくれてうれしいですし、行動で示してくれる選手が必要で、彼は毎週、毎週、背中を見せてくれています。あとでビールをおごっておきます(笑)」

──ジョネ・ナイカブラ選手が活躍しましたが、ラグビーワールドカップ2023フランス大会のあとで変化はありますか?

「ラグビーワールドカップ2023フランス大会の前とあとでかなり違います。ラグビーワールドカップではチャンスを最大限に生かして、優れたフィニッシャーだということを示してくれました。戻ってきて、自分の能力にあらためて自信を持っています。今までも素晴らしい選手でしたが、一段上のレベルに進みました」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

「今日はありがとうございました。多くのファンの前で静岡ブルーレヴズに勝てたことをうれしく思います。試合が終わってから体がすごく痛くて、予想どおりのフィジカルバトルでした。接点のところでプレッシャーがありましたが、その中でも勝つことができて良かったです。シーズンをとおして修正しながら、チームが成長できるようにがんばっていきます」

──新加入のリッチー・モウンガ選手とシャノン・フリゼル選手と実際にプレーしてみていかがでしたか?

「まずは(リッチー・)モウンガですが、彼はスピードよりも賢さがあって、チームを前に出すことに優れていると感じます。試合以外でも、若手とパス練習をしたり、9番の選手に指導をしてくれたりしています。(シャノン・)フリゼルはボールを持ったら必ず前に出られますし、ディフェンスも強いです。二人とも、チームにすごく良い影響を与えてくれていると思います」

──リッチー・モウンガ選手のゲームコントロールで優れているところはどこでしょうか?

「その場でみんなが分かりやすいプランを立ててくれます。『ディフェンスがこうだから、こう攻めよう』という判断が早いです。また、何より自分でアクションを起こせます。パスもうまいし、走ればスピードもあって、何でもできるのが良いところだと思います」

──後半に向けてチームに指示をしたことはどういったことだったのでしょうか?

「ハーフタイムに『前に出られる選手をどんどんタテに使っていこう』と話していました。それがゲームの流れを変えてくれたと思います。(終盤は)三上正貴と森太志の経験もあって、ここだというときにベテランの味を出してくれました」

──キャプテンとして久しぶりの公式戦でしたが心境はいかがでしたか?

「まずは選手たちが話せる場を与えて、アタックで何をするか、みんなが話せるようにしました。自分は自分のプレーに集中して、ミスが続いたときにチームとしてどう立て直すか。それだけを考えていました」

──レフリーがニュージーランド人のアンガス・メイビーさんでしたが、レフリングについての印象はどうでしたか?

「特に変わったことはなく、いつもどおりでストレスはないです。『ストレスはない』と言ったらウソですけど(笑)。英語でコミュニケーションが取れましたし、僕は自分のやることに集中していました」

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(左)、マロ・ツイタマ バイスキャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「試合には負けてしまったのですが、チームが持っているものを出しました。最後までしっかり食らいついて何とかしたかったのですが、相手は経験豊富な選手が多いので、その部分で最後にひっくり返されたかなと思います。やりたいこと、やろうとしたことは7割ぐらいできたので、これを糧にして成長して、勝てるようになりたいと思います」

──新監督としてチームにこれから落とし込みたい部分はどういったところでしょうか?

「(合流して)1カ月ちょっとですが、選手はがんばりましたし、厳しい練習をやってきて開幕まで来たという感じです。本当に1試合、1試合強くなると思うので、決して悲観はしていません。今日も戦えるところはありましたし、今季の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)さんは世界選抜級のスターぞろいなので、その部分で耐えられないところもあったのですが、何とかカバーをしながらチームを作っていこうと思います」

──少ないフェーズでトライを取られるシーンもありました。

「こちらも攻めているので、スキがあったかもしれません。相手のラインアウトからの攻撃が怖かったので、ラインアウトの数を少なくするためにボールを持ってアタックしようとしました。そこではうまくいった部分も、そうではない部分もありますが、少しずつ形として出てきていると感じます」

──やろうとしたことの7割ができたということですが、具体的にはどういった部分でしょうか?

「相手のフォワードに身長が高い選手がいたので、自分たちのラインアウトを減らそうとしました。ラインアウトは前半に両チーム合わせて4つしかなかったのですが、後半はタッチキックのあとにラインアウトからトライを取られたので、やっぱりその部分をBL東京さんはかなりやり込んできていたと思います。戦い方としてはうまくいった部分もあったと思います。
ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)では相手には体の大きな選手がいますし、そこを一番の強みとしているチームなので、みんなで1週間がんばって練習してきました。五分に戦えたのではないかと思います」

──家村健太選手がキックも含めて活躍したがいかがでしょうか?

「まだ若い選手ですが、『アグレッシブに行くように』とコーチングしてきました。今日のゲームコントロールは非常に良かったと思います」

──クワッガ・スミス選手を後半から起用した意図を教えてください。

「合流してからの期間が短かったですし、その前からBL東京戦に向けた準備もしていました。『初戦はリザーブから』という話は本人としていたので、予定どおりです。入ってすぐにジャッカルもしていましたし、インパクトを与えてくれたと思います」

──BL東京のリッチー・モウンガ選手の対策はどう考えていましたか?

「彼は世界ナンバーワンのスタンドオフなので、もちろん脅威ではありました。ただ、彼についての対策はほとんどしていません。できるだけボールを持たせないようにして、ボールを持ったらすぐにディフェンスをするようにしていました。それでも空いたスペースを見つけるのが得意ですし、走ることも蹴ることもできるので、フィットしてくるともっと良くなるのではと思います。シャノン・フリゼル選手もそうですが、『オールブラックス』という感じがしました」

──前半に良いスクラムがありました。日本代表から長谷川慎アシスタントコーチが戻ってこられましたが、スクラムの仕上がり具合はいかがでしたか?

「いま、スクラム自体は田村義和アシスタントコーチが担当して、長谷川コーチがサポートする形です。まだ詰め切れないところもあるかと思いますが、徐々に良くなっていくと思います」

──相手のラインアウトを警戒していたということですが、ノータッチキックからことごとくトライをされたことも想定内ということでしょうか?

「ことごとく取られたという感じではありませんでした。相手のカウンターアタックからボールを取り返すターンオーバーもできていましたし、想定内かなと思います」

──リザーブのブリン・ホール選手を起用できなかったが理由を教えてください。

「出そうと思っていましたが、けが人の関係で交代させられませんでした。矢富(勇毅)は80分プレーできるような選手ではないのでかわいそうなことをしました(笑)。しっかり休みをあげようと思います。(矢富のプレーは)38歳とは思えない動きで、まだまだできるなと思いました」

静岡ブルーレヴズ
マロ・ツイタマ バイスキャプテン

「藤井(雄一郎)監督が言ったように、自分たちもチャンスを作ることはできたと思います。この試合で学んだことを、来週のコベルコ神戸スティーラーズ戦に向けて生かしていくことが重要だと考えています」

──藤井監督のラグビーはラックを作らずにどんどんボールを動かすと言っていました。今日はできましたか?

「自分たちとしてはボールをキープして動かす機会がたくさんありました。その中でもチャンスを生かし切れませんでした。そうなるとBL東京さんのような強いチームを相手に得点するのが難しくなります」


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