2024.03.23NTTリーグワン2023-24 D1 第11節レポート(S東京ベイ 22-55 埼玉WK)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第11節
2024年3月22日(金)19:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 22-55 埼玉パナソニックワイルドナイツ

大敗の中で繰り出した意地の一撃。
S東京ベイの物語はまだ続く

アーリーエントリーでリーグワン初出場を果たしたクボタスピアーズ船橋・東京ベイの為房慶次朗選手。「フィジカルは(リーグワンでも)通用すると思っていました」

無情な物語とも言える真剣勝負の中で、ディフェンディング王者がもがき苦しんでいる。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は首位を走る埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)に完膚なきまでに叩きのめされ、ホストゲームで敗れ去った。前半の時点で3対26と突き放され、後半には約2カ月ぶりのスタメン出場となる山沢拓也、実弟の山沢京平に連続トライを献上。スマートで美しい攻撃で得点を重ねる埼玉WKを前に大敗を喫した。

今季のS東京ベイのテーマは「MMA(総合格闘技)」。その格闘競技にたとえると、テイクダウン(相手をグラウンドに倒す)からトップポジション(相手の上に乗っている状態)を奪われ、降り注ぐパウンド(寝技の状態での打撃)の雨の中で流血にまみれながら反撃を試み続けたような、そんな試合だった。ただ、S東京ベイにとって何の救いもない戦いだったのかといえば、それもまた違う。

後半8分にはこれがリーグワンデビュー戦となるアーリーエントリーの為房慶次朗、後半15分には江良颯がグラウンドに。紙森陽太、江良、為房という新世代選手が最前列に並んだフォワード陣はスクラムでペナルティを奪い、そのチャンスをしっかりとスコアへとつなげた。

「フィジカルは(リーグワンでも)通用すると思っていました。スクラムも今日は調子良く、自分の組み方で通用すると感じました。次また試合に出られたときは、もっと押せるように頑張っていきたいです」(為房)

また、岸岡智樹からのキックパスを受け取った山﨑洋之が殊勲のトライ。チームを活気づけた。岸岡と山﨑、そしてラストのコンバージョンキックを決めた島田悠平は2020年に入団した同期。そして、いずれも昨季はなかなか活躍の機会に恵まれなかった男たちだ。特に山﨑は、これが今季のリーグワン公式戦初出場となった。

「いつチャンスが巡ってきてもいいように、常に準備をしておくことを意識してきました。アタックでは自分のミスもあり不完全燃焼でしたが、ディフェンスの部分では(相手を)止められた部分もあったので、そこは自信につながりました。僕ら(同期)が試合に出て、(レギュラーメンバーと)遜色ないところを見せられているのは、すごくいいことだと思います」(山﨑)

そして後半40分経過後のラストワンプレー。ゴールエリアで山沢拓也が蹴り出そうとしたボールが短くなり、インゴール内にこぼれる。そこに飛び込んでトライをもぎ取ったのが、2022年入団のアシペリ・モアラ。第3節の静岡ブルーレヴズ戦でリーグワンデビューを果たしたもののインパクトを放てなかった新鋭が、最後の最後に爪あとを残した。

「あきらめずに最後まで戦うというマインドセットでやってきました。最後、飛び込んだときは(トライを決める)自信がありました」(アシペリ・モアラ)

ボコボコにされながら、S東京ベイは最後に一発、意地で殴り返した。聞こえてきた未来への胎動。物語は続く。

(藤本かずまさ)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「私たちが求めていた結果、プランしていた結果ではありませんでしたが、まずはこの試合をしっかりと受け入れて、こうした学ぶ機会を生かし、次につなげていくしかありません。それ以上でもそれ以下でもありません。プレッシャーの掛け合いとなった試合でしたが、相手がとにかくプレッシャーを掛けてきました。ペナルティもそうですし、序盤に(相手に)ボールを奪われていいスタートを切られ、点数を重ねられ、プレッシャーが掛かった試合でした。

ただ、ポジティブな面もいくつかありました。キッキングゲームの理解度は良かったです。チャンスを作る中で点数に変えられませんでしたが、敵陣には入ることができました。また、後半にポジティブだった点は、控えの若手選手たちがいいパフォーマンスを見せてくれたことです。彼らがペナルティを取って、それをチャンスにつなげてくれました。その結果が得点につながっていると思います。今後もしっかりと学んで成長し続け、一歩一歩進んでいきたいです」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「ネガティブなことを考えればたくさん出てきますし、こういう試合のあとのカンファレンス(記者会見)は難しいですが、それをしっかりと受け入れて次に進むしかないと思っています。この敗戦をしっかりと受け入れることが、まず自分たちにとって大事な次へのステップになると思います。

(フラン・ルディケ)ヘッドコーチが言ったように、後半に若い選手たちがチームに勢いを与えてくれて、スコアできたというのはチームにとっても明るくポジティブなニュースだと思います。しっかりとそういったところをこれからも伸ばしていかなければいけません。

前半は、相手のペースのまま進んでしまいました。今シーズンの勝てなかった試合、うまく進められなかった試合は前半のゲームの内容があまり良くない部分があると思います。何が悪いのかをしっかりとレビューしていきながら、オフを挟んでしっかりとリフレッシュして、またタフな戦いが始まっていくので、そこに向けて一戦一戦を戦っていくしかないと思っています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「パフォーマンス自体にとても満足しています。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は粘り強いチームで、試合はいつも挑戦的な戦いになります。そうした相手から55点を取れたことはとてもうれしく思います。

そうした中でも、山沢拓也選手はこれが2カ月ぶりのスタメン出場になります。ベン・ガンター選手も55分間とても良いパフォーマンスを見せてくれました。また、竹山晃暉選手も戻ってきてくれました。コンディション不良のところからどんどんと戻ってくる選手が増えて、彼らのいいパフォーマンスが見られて、とても良かったと思います。

また、今日はいろいろな交替があったにもかかわらず、その後半で自分たちのプレーの質を保てたのはとても良かったと感じています。おそらくは次の週がバイウィークとなること(ディビジョン1は1週間の休みをはさみ、2週間後に再開)が関係しているのではないかと感じています」

──竹山選手と山沢拓也選手の評価を聞かせてください。

「S東京ベイはスペースをしっかりと使ってくるチームです。そういった相手に対して、いいキッカーがそろっていたというのは、とても良かったと思います。自陣からの脱出のところでも、最初はプレッシャーを受けていましたが、しっかりとキックの対処をすることによって、そのプレッシャーが相手に移りました。フォワードの選手たちも、ボールが自分の頭上から相手の22mラインを越えるシーンを目の当たりにするのはとてもうれしく感じると思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「ショートウィークでS東京ベイさんという強い相手と戦うという、すごくチャレンジングな1週間でした。チームメートたちはいい準備をしてくれて、今日ゲームに出たメンバーもそうですし、今日は出ていないメンバーたちも、この1週間(リカバリーがメインで)1回の練習しかなかった中で、いい準備をしてくれたということが今日のパフォーマンスに表れたと思っています。ほとんどの時間をいい形で進めることができました。最後は少しペナルティの部分を含め、修正すべき部分が出たのですが、そこに対してはこれからしっかりと修正して、次に向かっていきたいと思っています。

すごく大きな4試合があったこの1カ月、そこに対していい準備をして、いいゲームを続けられたということは、チームとして成長できているのかなと思います。その中でけがをしているメンバー、コンディション不良の選手たちも戻ってきますし、いまいる選手たちもどんどん成長できると思うので、次につながるいいゲームができたのではないかなと思います」

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