2024.04.14NTTリーグワン2023-24 D1 第13節レポート(相模原DB 20-34 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第13節 カンファレンスB
2024年4月13日(土)14:30 長崎市総合運動公園 かきどまり陸上競技場 (長崎県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 20-34 トヨタヴェルブリッツ

“ボーディー劇場”の裏にあった、それぞれが
100%で仕事を全うする姿勢

プレーヤー・オブ・ザ・マッチの活躍でチームを勝利に導いた、トヨタヴェルブリッツのボ−デン・バレット選手

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1第13節、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)とトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)の一戦は、まさに“ボーディー劇場”だった。

再開発が進む長崎駅周辺から三菱重工のお膝元であることを感じさせる浦上川沿いの街並みを抜けて試合会場へ。晴天の下、両チームのファンや地元ラグビースクールの子どもたちで埋まったスタンドから、長崎県で初めて行われるリーグワンの試合への期待感と高揚感が漂う。

相模原DBの“ハードワークのDNA”発祥の地に、ボーデン・バレットやアーロン・スミス、ピーターステフ・デュトイら世界的名手をそろえるトヨタVを迎えた一戦は、地元のバグパイプ楽団の生演奏の中、グラウンドに入る選手に大きな拍手が贈られる。

緊迫したゲーム展開で40分が短く感じられた前半は3対8のロースコアだったが、後半は試合が大きく動く。先手を取ったのは相模原DB。フィジカルを生かした縦への力強い突破からタウモハパイ ホネティがトライを奪い、コンバージョンゴールも決め、逆転に成功。さらにスクラムでトヨタVのペナルティを誘い、22mライン手前でのラインアウトのこぼれ球をウォルト・スティーンカンプがさらってインゴールに倒れ込む。コンバージョンゴールも成功して17対8と相模原DBがリードを広げた。

トヨタVのキャプテンの姫野和樹はこのとき、ハドルの中で自分たちの強みを再確認し、「(相手コートの)奥に蹴ってエリアを取って、ラインアウトで自分たちの強みのモールでどんどん前に出る。そしてペナルティを取って、コーナーに蹴る。そしてモールでトライを取ろう」と話したという。

すると後半15分、相模原DB陣内奥のラインアウトからモールで押し込み、空いたスペースを縫ってボーデン・バレットがインゴールに走り込む。その後、一旦は同点に追いつかれるが後半24分にはボーデン・バレットが自陣から敵陣奥深くへのキック“50:22(フィフティ・トゥエンティトゥ)”を決めると、ラインアウトモールから再びトライを奪い、勝ち越し。さらに後半27分にはスペースを突くキックで髙橋汰地のトライもアシストした。

「自分たちが自分たちの仕事を100%理解してグラウンドの中でやり切ることができていたからこそ、ボーディー(ボーデン・バレットの愛称)が生きたと今日は感じています」と姫野は振り返った。

後半4つのトライを重ねたトヨタVがボーナスポイントも獲得する逆転勝利を収め、4位以内に与えられるプレーオフトーナメント出場権獲得に望みを残した。

相模原DBは惜しくも勝利を逃したが、トヨタVと前回対戦した第3節よりも見せ場を作り、着実な成長を感じさせた。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「長崎県のみなさんの素晴らしいおもてなしをありがとうございました。素晴らしい天気の中、みなさんのサポートで高いレベルのラグビーができました。私たちの会社(三菱重工)のルーツに戻ってくることができたのもうれしかったです。試合の内容に関しては、ミスをし過ぎたところがありましたが、選手のハートや努力は誇りに思います」

──ラインアウトのミスが目立ちましたが、どういったところに原因がありますか?

「ラインアウトはかなり苦労したところです。相手は、自分たちが守っているエリアを遅いタイミングで変えてきましたが、それに対応できませんでした。ただ、シンプルにエピネリ(・ウルイヴァイティ)選手に(パスが)とおったときは、いいプレーにつながりました。自分たちが改善しなければいけないところだと思います」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「会社の発祥地である長崎でプレーできたことをうれしく思います。試合内容に関しては、本当に勝てた試合を取りこぼしてしまった印象です。自分たちのミスで相手につけ込まれてしまって、簡単にトライを許してしまったシーンが後半にありましたが、個々のミスが結果につながったと思います。もう一回、一人ひとりが自分にベクトルを向けてしっかりと反省して、月曜日からいい準備をしていきたいと思います」

──長崎県でのホストゲームの雰囲気はいかがでしたか?

「試合会場に入るときに多くの方が手を振ってくれて、相模原とは違った雰囲気を感じました。小さい子どもたちがキラキラした目で手を振っている姿を見て、われわれがプロ選手としてしっかりプレーしなければいけないなという気持ちも強くなりました。われわれの姿を見て、新たなリーグワンの選手が生まれればいいなと感じました」

──気合いの入った試合で、気負い過ぎてミスが出たということはありましたか?

「気負い過ぎたという印象はありません。ちょっとした瞬間にステイオン(集中し続けること)できない、判断ミスが起きてしまったと思います」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ

「長崎県の関係者の方々に感謝の気持ちを申し上げます。たくさんの方々に応援に駆けつけていただき、リーグワンにこういった機会をいただけたことを感謝します。試合に関しては、ボーナスポイントを獲得して勝利できたことをうれしく思います。三菱重工相模原ダイナボアーズは激しくプレーして、長崎の地で力を発揮しましたが、われわれとしては粘り強く戦い勝利することができました」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「長崎県のラグビーファンの熱量を感じました。長崎でプレーできたことをチーム一同、うれしく思います。試合の結果には満足していますが、ここで満足することなく成長していくチームだと思いますし、そこを引っ張っていくのがリーダーとしての務めだと思います。勝ってしっかりと兜の緒を締めて、次節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦に臨みたいと思います」

──ラインアウトで相手ボールをスチールする機会が多くありました。どんな準備をしていましたか?

「自分たちの仕事、役割を明確にすることが重要でした。ピーターステフ・デュトイも帰ってきましたし、彼がラインアウトの中でリーダーシップを取ってくれたので、キャプテンとしてその部分はラクになりました。ジョシュ・ディクソンや秋山大地のラインアウトでの役目が機能しているからこそ、この結果が得られたと思います」

──ボーデン・バレット選手は今季最高の出来だったと思いますが、一緒にプレーしてどう感じましたか?

「彼に頼り過ぎずに、自分たち自身がしっかりと役割を果たすことができれば、彼の能力がもっと生きてくると思います。ボーデン・バレットのオーガナイズ力はもちろん(重要)ですけど、まずは自分たちが自分たちの仕事を100%理解してグラウンドの中でやり切ることができていたからこそ、ボーデン・バレットが生きてきたと今日は感じています」

──逆転されたあと、ハドルではどんなことを話しましたか?

「勢いをもう一度取り戻すために、自分たちの強みに立ち返ろうと話しました。奥に蹴ってエリアを取って、ラインアウトで自分たちの強みであるモールでどんどん前に出る。そしてペナルティを取って、コーナーに蹴ってモールでトライを取ろうとハドルで話しました。それがうまくいきました。すごく良かったと思います」

──長崎の印象はいかがでしたか?

「ニュージーランド出身の選手と『ニュージーランドに似ているね』と話しました。きれいな町並みで歴史があります。子どもたちがラグビーを楽しんでいる姿も良かったです。九州出身の選手はリーグワンで活躍していますし、ラグビー熱も高いと感じました」

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