2023.12.26NTTリーグワン2023-24 D2 第3節レポート(釜石SW 22-52 浦安DR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第3節
2023年12月24日(日)12:00 ハワイアンズスタジアムいわき (福島県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 22-52 浦安D-Rocks

92が52に。昨季の大敗からの成長を実感した釜石SW、次は手ごたえを勝利に変える

地元でなじみのあるグラウンドで躍動した日本製鉄釜石シーウェイブスの小野航大キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)は、NTTジャパンラグビー リーグワン初開催となった福島県の『ハワイアンズスタジアムいわき』で浦安D-Rocks(以下、浦安DR)と対戦。今季、唯一の県外開催のホストゲームで勝利とはならなかったものの、強豪相手に大きな手ごたえをつかんで年内の試合を締めくくった。

試合前、キャプテンの小野航大の名前がコールされると、ひときわ大きい声援と拍手が響いた。福島県いわき市出身の小野の凱旋試合とあって、家族や知人が多く駆け付けた。「懐かしい」と話す慣れ親しんだグラウンドは、小野が磐城高校3年生のときに、全国高校大会出場を決めた場所だった。「高校時代にいい思い出で終わることができた場所。釜石SWに加入してからトップイーストリーグ時代もこの場所で負けていなかったので、今日も勝てるかなと思っていましたが、ちょっと甘かった」と小野は口にしたが、今後への期待感が膨らむ試合内容には違いなかった。

昨季、ホストゲームでの浦安DRとの対戦は19対92のスコア。試合後には小野も涙を流すほどの悔しい大敗だった。それが今回は、特に力を入れてきたセットピースや接点の部分でしっかり戦い、後半は15分までに3連続トライを決めるなど、相手に得点させない時間帯が長く続いた。「昨季は手も足も出ないという感覚でしたが、体を当てた感覚として、『いけている』という感覚が昨季とは違うところ。自信を持って次も臨みたい」。地元の声援を受けた小野は、次の対戦へ向けて前を向いた。

フォワードでも、バックスでも。日本製鉄釜石シーウェイブスの石垣航平選手

一方、いわきでの試合が初めての沖縄県出身の石垣航平は、後半12分にインターセプトからそのままトライにつなげ、チームを勢いづけた。前節は、今季から挑戦しているフランカーで、そして今節はセンターでの2戦連続トライと、まさにフォワードとバックス『二刀流』で成長を続けている。今回の試合に向けて、フォワードで調整を重ねてきた石垣だが、けが人の影響で試合2日前に急きょ、センター起用を言い渡された。そういった中でのこの日のパフォーマンスに、須田康夫ヘッドコーチも「素晴らしい二刀流の活躍」と太鼓判を押した。

「チームの状況によってうまく使ってもらえればいいと思っています。『二刀流』だなんて、まだしょぼいし、畏れ多いですがどちらも頑張ります」と、自身のことについては口数が少なく謙虚な石垣だが、今後に向けては言葉に力を込めた。

「ここからリーグ戦中盤。上位3つに入るためにチームとしてまとまりをもってやっていきたいですし、個人としても全試合に出場し、チームを勢いづけたいと思います」

選手たちがここまで感じている確かな手ごたえを、来年はぜひ勝利という「結果」で表明してくれることを心待ちにしたい。

(佐々木成美)

日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブスの須田康夫ヘッドコーチ(左)、小野航大キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

「まず、東北、いわきでゲームができたことは非常に光栄に思います。いつもは岩手県のみですが、こういった東北を代表するチームとして東北のいわき市でゲームができ非常に楽しかったです。ゲーム内容に関しては、正直、分析の段階では勝てると思っていたので結果としては少し残念です。ゲームの入りの部分に、ポジティブなミスですが、自らのミスでうまくゲームをコントロールできなかったところが敗因だと思います。途中、22点までスコアを重ねられたことは良かったです。あの流れが80分間できれば確実に勝てたゲームだと思います。ポジティブに捉えていて、次のビジターで浦安D-Rocks(以下、浦安DR)と戦うときにはいい結果を得られるのではと思っています」

──昨季、大差で負けた相手に詰め寄ることができたことに関して、どう受け止めていますか?

「昨季もディフェンスの部分でかなり乗られた部分がありましたが、改善できた部分はセットピースだと思っています。セットピースである程度安定して球を出すことができ、ゲームを崩されないディフェンススクラムを組むことができるようになったことが、失点を少し減らすことができた要因だと思います。まだまだコリジョン(体のぶつけ合い)の部分で浦安DRさんのプレッシャーを受けた部分があり今回の点差になってしまいましたが、われわれとしてもコリジョンの部分でやれるという自信もあり、差が縮まっていると少し感じました」

──ハーフタイムではどのような指示を送りましたか?

「トランジション(攻守の切り替え)のところでリアクションの遅かった部分がありました。頑張ってディフェンスしてターンオーバーしたにもかかわらず、すぐにボールを返してしまうような展開が3回くらいあり、そういった部分で相手に流れを渡してしまったと思ったので、ターンオーバー、トランジションのリアクションを速くしましょうと話はしました」

──開幕から3試合の総括をお願いします。

「昨季とはまた違った部分でいいチャレンジができていると感じています。選手たちの自信にもなっていると思いますし、われわれがやってきたことも、勝利という結果として出てはいませんが、いい方向に進んでいると手ごたえは感じる3試合だったと思います」

──前節はフォワードで、今節はバックスで起用されトライを奪った石垣航平選手の評価はいかがですか?

「素晴らしい二刀流の活躍だと思います。長いシーズンけが人も出ますし、両方バックアップできる選手はチームとしてとてもいいと思います」

──今節、石垣選手のバックス起用は直前に決まりましたか?

「そうですね。12番のところでコンディション不良が出たので、急きょ入ってもらいました」

日本製鉄釜石シーウェイブス
小野航大キャプテン

「本日はありがとうございました。地元いわきでの試合ということで、素晴らしい環境の中でたくさんの観客に来ていただき、関係者のみなさま、チームスタッフには感謝したいと思います。ゲームの内容はアタックでもディフェンスでも、自分たちの形を作ることができれば勝てるという手ごたえはありましたが、やはりトランジションのところ、ボールを失ったときのリアクションが相手のほうが速かったというところが、前半に点差がついた要因だったと思います。ただ、本当に自信を持って、手の届く相手だと感じましたし、今季、ひっくり返してトップ3に入れるように、3試合負けが続いていますが、ネガティブなことばかりではないと思うので、ポジティブな部分をしっかりつなぎ合わせて次のゲームからしっかり勝ち点を取れるようにチームとして頑張っていきたいと思います」

──地元の応援団の姿はいかがでしたか?

「家族もそうですけど、ラグビースクールの子や高校生など、たくさんの人が応援に来てくれて、勝つ姿を見せられたら一番良かったのですが、戦う姿はしっかり見せられたと思うので、リーグワンという舞台を目指して小さい子にも頑張ってほしいと思います」

──開幕からここまでの総括と次戦への意気込みをお願いします。

「今季、コリジョンのところにこだわってチームを作ってきて、体を当てた感覚としてこの3試合はいい感覚がチーム全員にあったと思うので、その部分では昨季とは違うと感じています。相手のモメンタム(勢い)を止め切れないというシチュエーションはなくなってきたと思うので、セットピースの部分とコリジョンのところは自信を持って次のゲームに臨んでいきたいと思います。ただ勝てていないので、自分たちが勝つ姿をみなさんにお見せできるように、年明け一発目、いいスタートを切れるように頑張ります」

日本製鉄釜石シーウェイブス
村田オスカロイド選手

──この試合で日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)での50キャップ達成です。どう感じていますか?

「特別というか、今までやってきた試合が50試合ということで、『ああ、ここまでやってきたな』という気持ちです。100キャップを目指して1試合1試合頑張りたいと思います」

浦安D-Rocks

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(左)、飯沼蓮キャプテン

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「この試合は、1週間準備の部分でかなりのチームの変更や急な対応を強いられるケース、例えばけがや、メンバーの入れ替え、体調不良などありましたが、その中でも自分たちが試合の最初からいいスタートが切れたというのはポジティブなことだと思います。あとはセットピースの部分もうまくいっていたと思います。ですが、後半にタックルの精度を欠くところやアタックの精度を欠くところで相手に流れを与えてしまったことについては非常に残念だと思いますし、そこは釜石SWさんもうまくアタックしてきた部分だと思います。最後の最後で何本かトライを決めてスコア的には大きく開きましたが、スコアほどの大きな差があった試合ではないと思います。その中でも選手たちがしっかり戦ってくれたことは誇りに思っています」

──釜石SW相手にどんな準備をして臨んだのでしょうか?

「アタックで準備をした部分はありましたし、ディフェンスの部分でも釜石SWさんはトライを取れるチームということである程度相手のプレーを予測して準備してきたことはありました。そういう意味では通常どおり、自分たちのチームの中で意思統一を図るというプロセスで準備をしてきました。準備してきたことの一つとして、1対1のタックル力というところがあったのですが、そこは後半見せられなかった部分です。全体的に見てアタックでもディフェンスでも遂行力の部分、自分たちのやることが明確化されていないのが今日の試合で表れたと思います。それでも、最終的に勝ち切れたというのは良かったと思います」

──開幕から試合を重ねてきて、ここまでの総括をお願いします。

「初戦はもちろん敗戦してしまい残念でした。敵陣で22mラインの中に入ったときチャンスを決め切れないケースが多く課題が残りました。2戦目、3戦目は勝利することができましたが、その中でも自分たちが点を取るべきところで取り切れないところは課題として残っていて、まだ完全に流れのいいアタックができていないと感じています。それがチャンスで決め切れないことにつながっていると思います。特にターンオーバーからのアタックと、敵陣のアタックゾーンに入ったときのアタックがまだ課題として残っているので、来年も引き続き改善していきたい部分です。そうは言っても、最後に勝利を収めているのでそこはポジティブに捉えていいと思います」

──直前の選手の変更は3名ですか?

「はい」

──急きょ出ることになった選手たちの出来はいかがでしたでしょうか?

「いい経験だったと思いますし、こういった状況ですが、選手たちはチャンスとして捉えて、今まで準備してきたことを出そうとしていました。チャンスはいつ巡ってくるか分からないので生かしてほしいと伝えました。

その中で、(武内)慎がベンチだったのがスタートで出ることになり、80分間いいプレーをしてくれました。大椙(慎也)も今シーズン初試合で本当は後半から出す予定だったのですが、中島(進護)のけががあり、予想よりも早く出ることになりました。今まで練習をよく頑張ってきてくれた選手で、いい結果を残してくれたと思います。(トゥクフカ)トネもシェーン・ゲイツが最後の練習でけがをしてしまって出ることになりました。彼も比較的いいプレーをしてくれましたし、(サム・)ケレビもいいパフォーマンスを残してくれました。そういった選手たちがうまくアジャストしてくれたことによって今日の結果があると思います。

自分たちはラグビーチームとして躍動感ある強度の高いプレーをしようとしているのですが、その中でもダイナミックということではアジャストする、常にそういった状況に対応する意味も込められています。それをチームとして見せることができたので良かったと思います」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「今日はありがとうございました。ヨハン(・アッカーマン)ヘッドコーチも言ったように、特にディフェンスのところでラインブレイクされるシーンが多くて課題が多く残ったと思います。前半、完璧ではないですが、いい前半を終えて、後半、選手の気持ちが切れたというか甘い部分が出たのではと思うので、あまりいい試合ではなかったと思います」

──後半の我慢の時間帯ではどんな声掛けをしていましたか?

「今回、ジャージ授与式の時に栗原(徹コーチングコーディネーター)さんが“ピンチはチャンス”という言葉をくださって、ピンチの時こそ人のせいにするのではなくてコネクトしてチャンスに変えようと。ピンチは終わっているので、それにとらわれずに次のことを見てコネクトして、やるべきことをやろうとハドルの中では言いました」

──次戦への意気込みを教えてください。

「この3戦、満足いくような試合運びにはなっていないので、ここから期間が少し空くのでしっかりレビューして、(ディビジョン1との)入替戦で勝って行くために自分たちはやっていかないといけないので、キャプテンとしてもチームとしてもやるべきことを明確にして成長できるようにやっていきたいと思います」


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