2024.04.01NTTリーグワン2023-24 D3 第11節レポート(江東BS 71-17 SA広島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第11節
2024年3月31日(日)13:00 小田原市城山陸上競技場 (神奈川県)
清水建設江東ブルーシャークス 71-17 マツダスカイアクティブズ広島

自動昇格残り1枠を争う戦いは大差での決着に。
江東BS勝利の裏にあったスクラムへのこだわり

プレーヤー・オブ・ザ・マッチの活躍、清水建設江東ブルーシャークスのコンラッド・バンワイク選手

神奈川県小田原市でのNTTジャパンラグビー リーグワン初開催となったディビジョン3第11節の初戦は、ホストチームの清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)がマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)に71対17で勝利した。

前節に日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)がD2昇格を確定させていた中で行われた、今季の対戦成績が1勝1敗の両チームが残る自動昇格枠1を争う強風下での一戦は、意外にも大差で決着が付いた。

その最大の要因は、スクラムにあった。前半13分、SA広島ボールのスクラムを江東BSが押し込んでターンオーバー。これをこの日2つ目のトライにつなげる。

清水建設江東ブルーシャークスはスクラムから主導権を握っていった

このカードの初戦、江東BSはスクラムで劣勢に立たされ、後半に3トライを奪われて逆転負けを喫している。そこからの形勢逆転について、両チームのキャプテンは試合後、このように振り返っている。

「(勝利した2戦目に続いて)今回も絶対フォワードから、特にスクラムはしっかりこだわってやっていこうと話していました」(江東BS 白子雄太郎キャプテン)

「スクラムは自分たちの強みなので、そこでプレッシャーを掛けてゲームの主導権を握ろうと思っていました。ただメンバーが代わったことで、少しコミュニケーションが合わず、その修正に40分掛かってしまいました」(SA広島 芦田朋輝ゲームキャプテン)

スクラムから主導権を握った江東BSは、フォワードがゲインラインを取り、クイックリサイクル(ラックなどから素早くボールを出すこと)でスペースを突く。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたコンラッド・バンワイク、野田涼太、金澤徹らバックス陣が縦横無尽に走り、トライを量産。イエローカードが出て14人となった時間帯も主導権を渡さなかった。

SA広島は後半にスクラムを立て直し、ジェイコブ・アベルが2トライ。残る3試合に向けて足跡を残した。一方の江東BSは日野RD戦の“完膚なきまでの完敗”からチームを立て直し、ボーナスポイントも獲得。“今季の集大成”と位置付けるクリタウォーターガッシュ昭島との次戦へ、大きな弾みを付けた。

(宮本隆介)

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、白子雄太郎キャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督

「開催にあたって多くの関係者の方々にご尽力いただきましてありがとうございました。いろいろと思うところはあります。前節は日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)に完膚なきまでの完敗をしてしまいましたが、今回はそのフラストレーションが少しは晴れたのかなというゲームだったと思います」

──小田原市でのリーグワン初開催となる試合はいかがでしたか。

「ホストスタジアムの江東区夢の島競技場が改修工事で使えない中で、運営側スタッフが尽力し、縁があって使わせていただくことになりました。本当に素晴らしい、芝生のいい環境でラグビーをさせていただき感謝しています。われわれの練習場が神奈川県横浜市荏田にあるので、距離的には夢の島と小田原は、大して変わらない距離だと思っていました。神奈川に関しては思い入れもありました。ここは桜の名所でもあるので、春を感じさせていただける場所で試合ができるということは本当に良かったと思います」

──今季の対戦成績が1勝1敗だったマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)に大勝できた主な要因はどこにあると考えますか?

「前回の日野RD戦で多くの課題をいただき、選手がその課題に真摯に向き合って、この試合で遂行してくれた結果だと思います。前半はおおむね思っているようなゲーム運びができましたが、後半はSA広島さんのひたむきなディフェンスや、われわれの弱点であるモールの部分で課題が残ったと思っています。残り3戦でこの課題をなんとか克服することで、見えてくる先にディビジョン2があると思っています」

──前後半の2回、相手にトライを取られた直後に野田涼太選手がトライを取り返しました。彼の評価を教えてください。

「顔に出さないところはありますが、内に秘める闘志はおそらくチームの中でナンバーワンです。やらなければいけないことを自分の中で一番理解して、ラグビーに向き合ってくれる選手だと思っています。今日の試合でも見えない部分の走りやワークレートの部分でも活躍してくれたのはわれわれとしても非常にうれしいところです」

──2ケタトライ(この試合では11トライを記録)など今までにないような勝ち方でしたが、攻撃面のバリエーションや精度について、試合を見ていてどう感じていますか?

「日野RDさんとの試合後も正直、変えるところはまったくないと思っていました。これまでにやってきたことを地道に、かつ精度を上げて遂行することがカギでしたので、ここは本当に選手がしっかりやってくれた部分だと思っています」

──優勝を懸けた日野RDとの直接対決で敗れ、今週が始まる前にどのようなことを選手に伝えましたか?

「試合後、『敗戦をしっかり受け止め、火曜からしっかりと試合に臨める準備をするため、試合会場を出たところから気持ちを作ってくれ』と伝えました。火曜に選手はしっかり前を向いて(練習場に)来ていましたし、キャプテンからも『一戦一戦しっかり試合をやろう』というふうに声を掛けてもらっていたので、心配はしていませんでした」

──次節に勝てばD2昇格決定の可能性があります。どのように準備してどのような戦い方をしたいですか?

「クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)戦で、WG昭島用の戦い方をするつもりはありません。基本的には(昨年の)夏過ぎからやってきたことの集大成をWG昭島戦にぶつけます。そうすれば勝てるという自信を持っています。しっかり準備して試合に臨めるように、われわれスタッフも一丸となって選手のサポートをできたらと思います」

清水建設江東ブルーシャークス
白子雄太郎キャプテン

「前節はボールロストが多かったので、ボールキャリアーの責任として、『しっかりとトライラックして(トライに飛び込むように前に出て、相手のディフェンスラインを後ろに下げるスキル)、その中でボールリサイクルのスピードを上げていこう』という話が出ていました。試合をとおして自分たちのリズムの中でできた部分も多かったのですが、単発でのパスミスやキャッチミスといったところで精彩を欠いた部分もまだまだありました。タイトなゲームや格上のチームと戦っていくときに、そういうことをなくさないと、勝てるゲームも勝てなくなってしまう。次回は精度の部分をもう一度詰めていきたいと思います」

──小田原市でのリーグワン初開催の試合はいかがでしたか?

「歓声や応援の声が選手に届き、(客席とグラウンドの間に陸上トラックがある)陸上競技場にしては観客との距離を近く感じました。初めての試合会場でしたが、ホーム感の中で試合ができてすごく良かったです」

──SA広島と3試合を戦って得られた収穫はなんでしょうか?

「初戦はスクラムからのモールドライブで後半に3トライを取られて逆転負けを喫し、2回目の戦いでは、フォワードがプライドを持っていいバトルをして勝てました。今回も『絶対フォワードから、特にスクラムをしっかりこだわってやっていこう』と話していました。後半に少しメンバーが代わったところで何回かペナルティを取られた部分もありましたが、試合をとおして優位にスクラムを組めたというのはシーズンをとおして成長できた部分です」

──優勝を懸けた日野RDとの直接対決で敗れ、どのような気持ちを選手で共有しましたか?

「日野RD戦では試合前に硬い雰囲気があり、試合中は空回りする部分もありました。今日も緊張感はありましたが、その中でも『大好きなラグビーを楽しもう』と声を掛けました。また今年のスローガンである『“アグレッシブ”にいこう』と選手たちと話し合いました」

──次節に勝てばD2昇格決定の可能性があります。どのように準備してどのような戦い方をしたいですか?

「WG昭島はフォワードが大きく、バックスに速いランナーがいてアグレッシブにどんどんアタックしてくるチーム。それを受けるわけではなく、自分たちが先制パンチを打つ。そういった準備をして試合に臨みたいと思います」

マツダスカイアクティブズ広島

マツダスカイアクティブズ広島の中居智昭ヘッドコーチ(左)、芦田朋輝ゲームキャプテン

マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ

「大差のゲームとなってしまいました。1対1のところでの清水建設江東ブルーシャークスさん(以下、江東BS)の激しいボールキャリーによる前進をなかなか止めることができませんでした。ディフェンスでしっかりラインを整えて前に出ようという話をしていたのですが、そこが整う前にどんどんクイックリサイクル(ラックなどから素早くボールを出すこと)されてなかなか自分たちのディフェンスができませんでした。またアタックの時間もそれほど持つことができず、本当に江東BSさんの素晴らしいゲーム内容で完敗だったのかなと思います」

マツダスカイアクティブズ広島
芦田朋輝ゲームキャプテン

「スクラムでプレッシャーを受けて自分たちのペースにできませんでした。前半に修正することができず、後半もなかなか立て直せずに大差のゲームになってしまったと思います。特にスクラムでこちらからもプレッシャーを掛けようしたのですが、後手になってしまいました」

──非常に風が強い中でのゲームプランはいかがでしたか?

「コイントスに負けて前半は風上になりましたが、始まった時点では風下のような感じもあり、風が読みにくい試合でした。基本的には自陣でプレーをしないように意識していたのですが、セットピースが安定しなかったので、そこからの脱出がうまくいかず、終始プレシャーを受けて相手のトライにつながってしまいました」

──スクラムでプレッシャーを受けた要因はなんですか?

「スクラムは自分たちの強みなので、そこでプレッシャーを掛けてゲームの主導権を握ろうと思っていました。ただメンバーが代わったことで、少しコミュニケーションが合わず、その修正に40分掛かってしまったことが今回の結果につながったと思っています」

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