2024.05.19NTTリーグワン2023-24 D1/D2入替戦 第1戦レポート(浦安DR 21-12 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1/D2入替戦 D1 12位 vs D2 1位 第1節
2024年5月18日(土)12:00 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
浦安D-Rocks 21-12 花園近鉄ライナーズ

いまの環境から抜け出すために。
田村煕が伝える「本当に上がりたいのか」

浦安D-Rocksの田村煕選手。第2戦に向けて「ホストとかビジターとか関係なく、勝ちたい気持ちが強いかどうかが大事になる」

5,004人が集まり、浦安D-Rocks(以下、浦安DR)のクラブカラーであるネイビー一色に染まったスピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)。D1/D2入替戦第1戦は浦安DRが花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)に21対12で先勝。悲願のディビジョン1昇格に“王手”をかけた。

昨季はD1の実力を見せつけられた花園Lに対して逆転勝ちを飾り、試合後のスタジアムにも歓喜の余韻が残っていた。そんな中、ミックスゾーンにやってきた百戦錬磨のスタンドオフは白い歯を見せることはなかった。「今日は暑い中でみんなよくやっていたけど、まだまだミスが多いので修正しないといけない。このスコッドでやるのは次で最後。あと1週間、試合に出たメンバーがしっかりとプライドを見せられればいい」。その言葉と振る舞いは、すでに第2戦に気持ちと視線を切り替えていることを示していた。

今季から浦安DRに加入した田村煕は、その確かな経験と実力のすべてをこのチームに注ぎ込んだ。D1を知る者として、東京サントリーサンゴリアスからともに移籍してきたサム・ケレビと高い水準を仲間たちに求め続けてきた。

「D1でプレーしていた選手はいるけど、昨季はああいう結果(入替戦で敗れてD2残留)になった。もともと、そのレベルでやれる選手たちが、環境が変わるとそこから抜け出すのが一番難しいと思う。だから、この1週間だけでなく、プレシーズンからずっと日々のトレーニングで何が大事かを伝え続けてきた。『本当に上がりたいのか、キツくなってきたらそうではないチョイスをして、まだ同じ思いをしたいのか』。そこはサム(・ケレビ)と一緒に徹底して言おうと決めていた」

“9点のリード”なんて、田村に言わせればあってないようなもの。それよりも「二つ勝つだけなので。浦安DRが花園Lに勝ちたいという思いが大事」と力強く言い切った田村は、すべてが決まる第2戦に向けて最後にもう一度繰り返した。

「まだ何も始まっていないし、終わってもいない。クラブとして本当に勝ちたいかどうか。本当にそこだけだと思う。ホストとかビジターとか関係なく、勝ちたい気持ちが強いかどうかが大事になる」

来週の第2戦が終わったとき、田村が笑っていれば、それは浦安DRが悲願のD1昇格をつかみ獲ったときである。

(須賀大輔)

浦安D-Rocks

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(左)、飯沼蓮キャプテン

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「まずは勝てたことに感謝しています。選手たちが見せてくれた誇りや闘志に対して自分は誇りに思っています。今日の試合では、自分たちが勢いを失う場面でもそこでのプレッシャーを乗り越えて、ディフェンスで我慢強く守り抜いたり、ファイトし続けてくれた姿勢に感謝したいと思います。ただ、まだ1試合残っています。花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)さんもクオリティーの高い、いいチームなので、自分たちには同じことを来週に再現しないといけないチャレンジが待ち構えています」

──昨季のD1/D2入替戦と同じカードになりました。相手が決まってから今日まで意識して過ごしてきたことはありますか?

「選手たちにいつも言っているのは『コントロールできる部分をコントロールする。過去を変えることはできない。自分たちがコントロールできるのは、次のステップのみだ』ということ。そこだけにフォーカスして、自分たちがやるべきことに焦点を置いて準備を進めてきました。もちろん、昨季の入替戦で残念な結果に終わってしまい、そこから自分たちを見つめ直して今季、準備してきたところはあります。新たなチャンスを自分たちに与えられているという意識をもって、自分たちのプロセスどおりに自分たちに焦点を当てて準備をしてきました。なので、相手が誰であろうと準備は変わらないです」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「みなさん、今日はありがとうございました。ヨハン(アッカーマン ヘッドコーチ)が言ったとおり、試合中にはいろいろな流れがありましたけど、昨季とは違って、それに影響されず、一貫性をもって目の前のプレーに集中することを今季は意識してやってきました。今日も苦しいシーンはあったと思いますけど、誰一人焦らず、弱気にならず、怖がらずにチームの全員がコネクトして、自分たちを信じてやったことで、この結果を得られました。まだ完全に自分たちの目標を達成したわけではないので、今日からもう1回成長して次に向けていい準備をしていきたいと思います」

──昨季のD1/D2入替戦と同じカードになりました。相手が決まってから今日まで意識して過ごしてきたことはありますか?

「もちろん、相手は昨季と同じですけど、相手よりも自分たちにフォーカスを置いてきました。自分たちにコントロールできるのは自分たちだけなので、いつもどおりいい準備をすることだけを意識していました」

──苦しい時間でも焦らずにいつもどおりできたのは、今季をどのように過ごしてきたからだと感じていますか?

「チームの文化やチーム力が、昨季はまだなく、個人技任せだったと最後に分かりました。今季はうまくいくシーズンではなかったですけど、逆にそれがよくて、昨季なら1個のミスを引きずって、自信を失くして下を向いて修正できないところでも、今季は練習から過去を引き離して、次に自分たちがやるプロセスだけを見ることを意識してやってきた結果、最初にトライを許しても誰も焦らず、スコアボードは見ずに、自分たちのやるべきことだけをやれば、結果は付いてくると信じてやっていました。今日はそういう場面でもみんな笑顔でしたし、何も心配することはなかったですね」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、片岡涼亮バイスキャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「16試合戦ってきた中で私たちが積み重ねてきたことがどれだけ出るかということでゲームに向かいましたが、一つ抜かれてはいけないところで抜かれたのは、浦安D-Rocksさんが準備してきた、いい部分が出たのかなと思います。後半はアタックのチャンスがありませんでしたけど、それはなぜかというと、自分たちでペナルティを犯してしまっているからで、悪い癖が少し出てしまいました。もう1戦、試合がありますから、次のゲームはマイナス9点(のビハインドでのスタート)ということを考えずに、それよりも多く点を取って、しっかりディビジョン1に残りたいと思います」

──「抜かれてはいけないところを抜かれてしまった」ということを、具体的に教えてください。

「カウンターをしかけられて石井(魁)に抜かれてしまいました。ただ、そこは一番いい形で一番いいランナーに渡した相手の良かったところだと思います。それをしっかりと止めてこそD1(のチーム)だと思いますね。一つ悔しいところです」

──ハーフタイムにどんな指示を与えましたか?

「これでは終わらないと。自分たちのディフェンスがしっかりしていたので、もう一度しっかりと敵陣に入ってエリアマネジメントをして戦っていこうと。ペナルティを狙えるところはしっかりとペナルティを狙って、得点を取っていこうと言いました」

花園近鉄ライナーズ
片岡涼亮バイスキャプテン

「後半は僕たちのミスというかペナルティが続いて、我慢できなかったところが今日の敗因だと思っています。ただ、また来週に次のゲームがあるので切り替えて。来週、勝てばいいだけの話なのでもう切り替えています」

──後半にペナルティを重ねてしまった理由をどう感じていますか?

「僕自身に気持ちの焦りはなかったんですが、ペナルティが続く中でディフェンスのところで普段なら下がるところでも前に出て行ってしまったり、手を掛けてはいけないところで不用意に個人の判断で掛けてしまったり、そういう気持ちの焦りが出てしまったのかもしれません」

──その悪い流れをどうして止め切れなかったのでしょうか?

「(みんなを)集めて話したあと、相手もペナルティをして、(こちらとしては)『ここから敵陣でラグビーをしていこう』という流れの中でも、断ち切ることができなかったのですが、そこは運もあると思います」

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