2024.05.27NTTリーグワン2023-24 D1/D2入替戦 第2戦レポート(三重H 15-24 S愛知)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1/D2入替戦 D1 11位vsD2 2位 第2戦
2024年5月25日(土)12:00 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート 15-24 豊田自動織機シャトルズ愛知

勝っても、残留でも。
まるで、勝者なき一戦

三重ホンダヒートは入替戦第2戦を落としたものの、ディビジョン1残留という結果は残すことができた

今季2番目に多い4,230人が集まった三重交通G スポーツの杜 鈴鹿。運命のD1/D2入替戦第2戦は、15対24で豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)が勝利した。しかし、2戦合計の勝ち点では三重ホンダヒート(以下、三重H)が上回り、三重Hがディビジョン1残留を決め、S愛知は、悲願のD1昇格とはならなかった。

「長い、長い午後だった」と語ったのは三重Hのキアラン・クローリー ヘッドコーチ。第1戦で得た18点のアドバンテージがあったものの、この試合で目指していたのはあくまで勝利。今季はホストゲームで1勝も挙げておらず、最後の試合で有終の美を飾りたかった。

一方、「今までで一番良い前半だった」と中野豪が話すように、エンジン全開で試合をスタートさせたのはS愛知。前半19分の時点で3トライを奪って0対17とリードし、スタジアムには徐々に“逆転昇格”の雰囲気が漂い始めた。

強い覚悟で乗り込んできたS愛知のプレッシャーを受けてしまった形の三重Hだったが、後半は「もっと相手に向かっていくプレーをしないといけない」とキアラン・クローリー ヘッドコーチが修正を施すと、粘り強いディフェンスを見せる。最後は18フェーズ(連続攻撃)に及ぶS愛知の猛攻を凌ぎ、第1戦のリードを生かしてD1残留というミッションは達成した。

D1/D2入替戦第2戦、勝利したのは豊田自動織機シャトルズ愛知だったが、第1戦との合計勝点で「1」及ばず、ディビジョン1への昇格はならなかった

試合後、複雑な心境を吐露したS愛知の選手たち。深村亮太は「シーズン最後の試合で勝てたことは良かったし、次につながるとは思いますけど……。勝ったけど勝った気がしないです」と悔しさをにじませる。松岡大和も「勝った喜びより、昇格できなかった悔しさのほうが大きいです」と話す。

三重Hの面々もどこか浮かない表情を浮かべる。古田凌キャプテンは「シーズン中に負けが続いても(ファンのみなさんが)たくさん来てくださって、本当に僕たちの力になりましたし、それに勝利で応えたかった」とコメント。素直に喜ぶことができないことを口惜しがった。

まるで、勝者なき一戦。それでも、三重Hは今季D1で得た経験をもとに、来季も同じ舞台に立つことができる。S愛知としても、D1のチーム相手に実力を示せたことは大きな自信となる。来季はより力をつけて、リベンジを果たしにくるだろう。

目標はもっと高いところにある。この一戦は、きっと両者の未来にとって、価値ある素晴らしい試合となったはずだ。

(齋藤弦)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、古田 凌キャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「まず、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)のみなさんに対して、お祝いを申し上げたいと思います。前半からフィジカルを前面に出してきて、われわれがプレッシャー下に置かれたと感じています。コーチとしては本当に唇を噛み締めて、悔しい状況ではあります。でも、試合には敗れてしまいましたが、ディビジョン1に残ることができたことに関しては本当にハッピーです。ただ、本当に長い長い午後だったなと思っています」

──苦しんだ前半を受けて、後半に向けて修正した点はどのようなところですか?

「先ほど冒頭でお伝えしたように、S愛知さんのほうがコンタクトのエリアで圧倒してきたというところで、もっと相手に向かっていくプレーをしないといけないという話をしました。すなわちマインドセットの部分を変える必要があるという話をして、ボールを持った状態でプレーする回数を増やしていこうという話をしました。現実として前半はボールを持っている場面が少なく、後半に関してもその場面というのはあまり増えなかったのですが、いい形で選手たちは反応してくれました。しかし、結果的に負けてしまったというところに関しては、非常に残念であったと思っています。これからオフシーズンに入って、またチームが集合するのにまた何カ月かあるので、その期間、しっかりといい準備をして次のシーズンにつなげていきたいと思っています」

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン

「本当に難しい戦いだったなというのが正直な気持ちで、最後のホストゲームでは圧倒して(ホストゲームでの)今季初勝利をしたかったですし、正直悔しいという気持ちがあります。でも、結果的に来シーズンもD1で戦うことができるので、しっかり来シーズンにつなげたいと思います。すごく長いシーズンでしたが、チームとしても成長できたシーズンだったと思いますし、またこのシーズンを来シーズンに生かせればと思います」

──今季最終戦ということもあり、多くのファンが駆け付けました。その点についてはいかがでしょうか?

「ホスト、ビジターにかかわらず、多くのファンのみなさんがスタンドに駆け付けてくださいました。本当にファンのみなさんには感謝したいと思います。もちろん、最後のホストゲームでたくさんの方々が来てくださって、スタンドを真っ赤に染めてくださったこと、厳しい戦いで負けが続いた中でもたくさん来てくださって、本当に僕たちの力になりましたし、それに勝利で応えたかった気持ちはあります。なかなか勝ち切れず悔しい思いがありますが、来シーズンはさらに成長した姿を見せられたらなと思っています」

──追いかけられる中で焦りは感じましたか?

「僕自身に焦りはなかったです。ただ、規律であったりチーム全員のマインドセットであったり、相手の気持ちも本当に死に物狂いでやってきたのはありましたし、なかなか難しいマインドセット作りではありましたけど、焦りはなかったです」

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(左)、ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日は入替戦2戦目ということで、多くの観客のみなさんの前で、素晴らしい運営サイドのサポートがある中で試合ができたことを、まずはチームを代表して御礼申し上げます。そして三重ホンダヒート(以下、三重H)のチーム関係者のみなさま、D1残留おめでとうございます。

結果はわれわれが勝利することができたということで、本当に選手を誇りに思っています。ただ、勝ち点というところで少し届かなくて、昇格ができなかったことは非常に残念ではあります。しかし私自身、今季チームを率いてきた中で、ベストゲームができたのではないかと思っています。そして、この2試合という期間で、三重Hさんは本当に素晴らしいチームで、素晴らしいサポーターもいて、そういった格上のチームにチャレンジできたことが、とてもワクワクしましたし、本当に素晴らしい2週間でした。胸を張って愛知に帰りたいと思っています。本日はありがとうございました」

──素晴らしい前半戦でした。

「そうですね。簡単にインターセプトされて失点したシーンはありましたが、前半は入りのところからわれわれが描いていたプランどおりの40分間だったと思います。セットピースもすごく安定してプレッシャーを掛けていましたし、接点の部分でもわれわれが圧倒できたのかなということで、非常に前半は満足いく内容でした」

──後半はスクラムで後手に回るシーンやミスもあり、テンポアップできませんでした。

「われわれとしては前半のリードをセーフティーに守っていくというマインドではなくて、後半さらにギアを上げていきたかったのですが、(相手ボールの)スクラムを与えてしまいましたし、ペナルティをもらってしまいました。しかし、それはわれわれのパフォーマンスがどうこうという以前に、三重Hさんが素晴らしいチームでしたので、80分の中でわれわれに有利に傾くときもあれば、そうでないときもあるという部分で、三重Hさんのパフォーマンスが素晴らしかったと思います」

──今季最終戦を勝って終えることができました。今季はどのような1年でしたか?

「今シーズン、キャプテンを中心に選手が主体となって、素晴らしい歩みを進めることができたかなと思っています。われわれはキャリアのあるようなビッグプレーヤーがたくさんいるチームではなくて、日本人選手が中心となって成長していくというプロセスを掲げています。今季だけの短い期間や今日のこの結果だけでは分からないですけど、もう少し長い中期、長期で見たときには、このシーズンが将来的にS愛知にとって必要なシーズンだったと言えるような、素晴らしいシーズンになったのではないかなと思っています」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

「このスタジアムで試合をするときに、三重Hの方々のサポートというものが、自分にとってとても特別なものだと感じています。サポーターの方々の大きな声援というのが、その特別な感情を抱かせてくれたと思っています。そして、われわれのサポーターだったり、家族の方々だったりにもお越しいただき、誠にありがとうございました。

試合に関しては、これ以上選手たちを誇りに思えることはないくらいの素晴らしい試合でした。この1年、自分たちはとても素晴らしい形でここまでくることができたと思うので、また来季このような形でやっていければと思っています」

──明日の朝はどのような気持ちで迎えられそうですか?

「明日の朝は恐らく、選手たちを誇りに思う気持ちが中心になるのかなと思っています。今季、徳野ヘッドコーチからキャプテンに指名されて、選手たちを引っ張るというところは、自分にとってとてもスペシャルな仕事だったと感じていますし、もちろんいいときもあれば悪いときもあった中で、自分たちがそこで得た自信をしっかりと来シーズンにつなげていかなければいけないと思います。またプレシーズンが始まるときに、ワクワクした気持ちを持って日本に帰ってくることができればと考えています」


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