NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第6節(交流戦)
2025年2月2日(日)12:10 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート 12-35 東芝ブレイブルーパス東京
圧力から解き放たれた元キャプテン。復帰戦で感じた“昨季王者との小さくて大きな差”

前半6分。中尾隼太がキックを蹴り、ジョニー・ファアウリが抜け出す。タックルを受けて倒れたところを土永雷がサポート。左に送られたパスをトム・バンクスが受け、さらにサイドライン際へとつなぐ。そしてレメキ ロマノ ラヴァがトライゾーン(インゴールエリア)に飛び込み──。
トライを期待して歓声が上がる中、レフリーの宣告は「スローフォワード」でトライキャンセル。スタジアムはため息に包まれた。
レメキは「最初に(トライが)取れていればこちらのペースに持ち込めた試合」と振り返る。今季の三重ホンダヒート(以下、三重H)は、ペナルティゴールで先制点を決めたことはあるものの、先取点がトライだったことはまだない。もし先に5点を奪っていたら大きな勢いをもたらすことができたはずだ。しかも、後半開始直後にも同様の『幻のトライ』があった。
「後半の10分まではとてもいい勝負をしていました。ただ、大チャンスで攻撃がうまくつながらなかったのが悔しい。そこで点を取り切っていれば、相手を焦らせることができたはずなんです」
レメキが悔やむのも無理はない。好機を生かせなかった三重Hは後半10分過ぎから守備が崩れ、わずか10分の間に3つのトライを許す。結果は12対35の敗北となり、昨季王者の東芝ブレイブルーパス東京に地力の差を見せつけられた形となった。
しかし、終了間際には23歳のスター候補FC・デュプレッシーが圧巻の加速でトライを決めて一矢を報いるとともに、苦しかった昨季をキャプテンとして支えた古田凌が後半10分からの途中出場で今季初出場。今後につながるポイントもあった。
「昨季はまったく歯が立たない試合ばかりでしたが、今季は競り合う内容が多くなっているので、そこはポジティブです。チームとして強くなっていることは実感しています」と古田は語る。けがやコンディション不良が続いて出遅れていたが、誰よりも昨季の責任を感じた彼がもたらすものは大きい。
「フィジカルや細かい技術の点で、昨季感じたことはとても多いです。それをチームとしてどんどん突き詰めて、自分自身の経験も落とし込みたいです。大事なのは全員で前向きにやること。攻撃も守備も小さなことが大きなものにつながりますし、細かいミスやペナルティを減らせば絶対に勝てます」
チームの実力は間違いなく向上した。足りないのは「細部の徹底」。キャプテンを藤井拓海に託した古田は、昨季よりも穏やかになった表情でこう話した。
「こんなことを言っては良くないかもしれませんが、プレッシャーからは解き放たれました(笑)。だからこそ、今季は自分の役割をきっちりと果たしたいんです。頑張ります」
昨季の悔しい思いを胸に、復活した元キャプテンとともに前を向く三重H。連敗を4で止め、今年初の白星を手にするために勝負の神が宿るとされる細部を徹底し次の戦いに臨みたい。
(籠信明)
三重ホンダヒート
三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ
「負けたことはとても残念です。勝つための準備はしてきたつもりでしたが、フィジカルの部分で相手に負けてしまいましたし、特にブレイクダウンの点で課題がありました。また、相手のほうがチャンスをより得点に変える力がありました。われわれにも同程度のチャンスがあったと思いますが、相手のほうがそれを決められる力があり、逆にこちらはそれを得点にできなかったというのが正直な感想です」
―─後半に入ってから点差が開く展開になりましたが、その感想と今後に向けた改善点について聞かせてください。
「ハーフタイムの時点では5対7というスコアでしたが、自分たちは相手にプレッシャーを掛けることができていましたし、正直に言えばもっと点を取ることができたはずです。後半14分までは拮抗していましたが、その後流れが変わったと思う瞬間がありました。それはキックをチャージダウンされて、そのままトライを決められてしまった場面です。その数分後にもボールを失ったところから相手にトライを与え、失点が続きました。もしあの場面でボールを保持できていれば、試合はより拮抗した展開になっていたでしょう。レベル的に大差はなかったと思いますが、細部への対応が不足していたと感じています。われわれは大差をつけて勝てるチームではないので、そのような細かい部分を突き詰めて改善する必要があると学びました」
──レメキ ロマノ ラヴァ選手とFC・デュプレッシー選手を両ウイングで起用したのは初めてでしたが、多くのチャンスに絡みました。その評価について教えてください。
「FCは良かったと思います。細かいところではミスもありましたし、前半にはディフェンスで内側に入り過ぎた場面も見られましたが、全体的には好評価です。彼は優れた選手なのですが、カテゴリBなのでメンバー選びの点で難しさがあります。チームにはカテゴリCのパブロ(・マテーラ)や(トム・)バンクス、フランコ(・モスタート)がいます。さらに(ヤンコ・)スワナポールもいます。彼は後半から出場して、とても良い仕事をしてくれました。ただし、彼もカテゴリBなので出場のタイミングが難しいのです。FCは10番でも15番でもプレーできるユーティリティー性が高い選手だと考えています。今日も自分の役割を果たしてくれました。まだ23歳と若いので、経験を積めばもっといい選手になるでしょう」
三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ ゲームキャプテン
「(ヘッドコーチと)大きく違う意見はありません。スクラムやラインアウトの回数や力量については互角だと感じました。ただ、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)のほうが得点に結び付ける能力が高かったと思います。こちらもチャンスはあったものの、トライライン(ゴールライン)まであと1mのところでノックフォワード(ノックオン)をしてしまったり、トライゾーン(インゴール)に入った場面でホールドされたりして得点に結び付けられませんでした。BL東京のような強いチームは簡単に得点を許さないので、そこが大きな差になりました」
──前半は拮抗した試合ができた一方で、後半に差が大きく開いてしまったことについてはどう考えていますか?
「ヘッドコーチとまったく同じ意見を持っています。キックチャージやその後の失点についてもそうです。およそ10分という短い時間で14点を奪われてしまったために、こちらが追いかける立場になり、相手はプレッシャーから解放されました。細部のプレーを徹底して、相手をプレッシャーから逃さないようにすることの重要性を学びました」
──ウイング起用で最後にトライを決めたFC・デュプレッシー選手の印象について教えてください。
「彼が優れた選手だということは分かっていますし、特に印象が変わったわけではありません。火曜日のチーム内メンバー発表で、バンクス選手、レメキ選手、そしてFCがバック3を務めると聞いたとき、このチームには良いプレーヤーがそろっていると感じました。その3人はリーグワン内でも屈指の速さがあります。スペースさえあれば、必ず彼らは何かを生み出してくれるだろうと考えていました」
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「三重ホンダヒート(以下、三重H)さんは素晴らしいチームで、入念な準備をして臨んだ一戦でした。ただ、序盤はかなりペースを握られる展開になり、強いプレッシャーを受けてミスも多くなり、ペナルティを与えてしまう場面もありました。ただ、ハーフタイムでそれを修正し、ボールをキープしてチャンスを作り出すことができるようになりました。苦しい状況でも殻に閉じこもることなく、自分たちの力を信じて最後まで戦い抜いた選手たちのことを誇りに思います。勝ち点を東京に持ち帰ることができてうれしいです」
──前節の静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦での敗北を受けて、どのようなことを強調して今週に臨みましたか?
「キャプテンのリーチ マイケルも述べたように、静岡BR戦で課題になったブレイクダウンの修正に取り組みました。最も集中しなければならないポイントはそこでした。ほかにも細部の修正点は多々ありましたが、最も強調したのはブレイクダウンです」
──今日は松永拓朗選手が精度の高いコンバージョンゴールを何度も決めていました。彼の評価はいかがでしょうか。
「松永選手のパフォーマンスは素晴らしかったです。最も評価すべきは、試合開始から終了まで一貫性をもってプレーしてくれたところです。全体的にとても自信を持ってプレーしていたと思いますし、基本技術も非常に正確でした。相手キックからのカウンターでも普段以上に自信を持って走っていたように感じました。それが彼の調子の良さを表しています。後半に相手がコンテストキックを蹴った際にも、松永が恐れずに空中戦でボールを取りに行ってくれました。これは試合の流れを変えるワンプレーだったと思います」
東芝ブレイブルーパス東京
リーチ・マイケル キャプテン
「たくさんの三重Hファン、そしてBL東京ファンの前で良いラグビーができたことがうれしいです。いつも三重Hは強い相手に対しても常に接戦を繰り広げていましたし、これまでの試合を興味深く見ていました。今日は相手の素晴らしいプレーや強いプレッシャーによって、前半は自分たちのリズムが作れませんでしたが、予想どおりの展開でした。最終的には自分たちの修正すべきところを修正して、トライを取って、得点を奪って、ようやく自分たちのリズムを取り戻すことができました。前節の静岡BR戦ではブレイクダウン回りで多くのペナルティを与え、われわれにとって大きな敗北を喫しました。今日の勝利で得られた自信をもとに、次の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦に向けて良い準備をしていきたいと思います」
──前節の敗北を受けてチーム内ではどの部分の修正を行いましたか?
「あの試合は特にフォワード陣のプレーがうまく機能しませんでした。スクラムも、ラインアウト、モールディフェンスも、そしてブレイクダウンも問題がありました。月曜や火曜のミーティングでフォワードコーチからかなり活を入れられた結果、この1週間をとおして良い準備ができましたし、その練習の成果が出ました。メンタル面でも良いところが多かったです。静岡BR戦でやられたことは二度と繰り返したくないですし、シーズンの早い段階で貴重な勉強になりました」